ヘレンベルガー・ホーフ株式会社 代表取締役 山野 高弘 氏
ヘレンベルガー・ホーフ株式会社は、43年にわたりドイツワインを専門に扱う商社として、全国の酒販店や飲食店にワインを届けてきました。生産者と直接結びつき、その背景ごと伝える姿勢を大切にしながら、社員の教育や情報発信にも積極的に取り組んでいます。2015年に代表に就任した山野高弘氏に、会社の歩みや経営への思い、そして未来への展望について伺いました。
ドイツワイン専門商社としての歩み
――現在の事業内容について教えてください。
当社はドイツワインの専門商社です。ドイツ現地でトップ生産者と信頼関係を築きながらワインを仕入れ、日本全国の酒販店へ卸しています。直販ではなく卸売を主軸に、北海道から沖縄まで幅広く流通させています。
創業は岩手の農家出身の方がドイツ留学をきっかけに始めたのが起点で、私は4代目にあたります。父の縁で会社に関わり、2015年に代表へ就任しました。代表となってから約10年、ドイツワインを単なる商品ではなく「文化と感動を届けるもの」として広めていくことを意識してきました。
代表としての経験と転機
――この10年で最も印象に残っている出来事は何ですか。
やはりコロナ禍です。私は3年間ドイツに駐在し、生産者と共に畑を訪れたり、現地でお客様を迎え入れたりする中で、強い絆を築いてきました。ところが突然すべてが分断され、リアルの交流が途絶えてしまいました。
そこで始めたのがYouTubeやInstagramでの発信です。2020年から毎月一度のInstagramでのライブを実施しています。今では毎朝6時半にライブをするまでになり、ワインや生産者の思いをオンラインで届けるようになりました。リアルなイベントができない中でも「うちらしい方法で生産者の思いを伝える」ことを大切にし、今では日本で最も発信力のあるワイン商社になったと感じています。
社員と共に学び続ける組織づくり
――社員との関わりで意識していることを教えてください。
社員全員がドイツでの経験を持てるようにしています。営業だけでなく内勤や倉庫スタッフも研修で現地に行き、生産者と畑を歩き、共に食事をし、ワインの背景に触れて帰ってきます。その感動を持ち帰ることで、お客様に語る言葉にも厚みが生まれます。
また、語学や資格取得への投資も積極的に行っています。英語部を立ち上げ、社員同士で翻訳や勉強会を行うようになりました。ワインスクールや資格試験の費用も会社で補助し、学びを後押ししています。こうした文化は、以前の「勉強は必要ない」という雰囲気から大きく変化しました。
さらに、バックオフィスの整備にも力を注ぎました。有給の取得奨励や社員旅行やイベントなどのコミュニケーションが取れる機会を生み出して、社員が働きやすい環境を実現しています。
未来への展望
――今後、どのような挑戦を考えていますか。
大きな目標は、日本におけるドイツワインの地位を高めることです。まずは一流ホテルやレストランで当たり前にオンリストされる存在になる。そしてSNSやメディアを通じて一般消費者にも広く魅力を伝える。トップからボトムまで、ドイツワインを認知してもらえる流れをつくりたいと思っています。
売上規模を急拡大させるつもりはなく、3年後に6億円規模を目指す堅実な成長を描いています。短期的な成果よりも、ワインの歴史と同じく「継続性」を大切にしたい。数百年の歴史を持つ生産者の姿勢を見ていると、次世代へとつながる経営のあり方を学ばされます。
プライベートでのリフレッシュ
――プライベートではどのようにリフレッシュされていますか。
体を動かすことが好きで、月に数回フットサルを楽しんでいます。毎朝のInstagramライブの前には腕立てや腹筋を仲間と一緒に行い、犬の散歩も欠かしません。52歳を迎えましたが、20年ぶりに体型も整い、今が一番元気だと感じています。健康は50代にとって最大の資本ですから、日々大切にしています。
仕事とプライベートの境界はあまりなく、出会いや活動がそのまま新しいビジネスのきっかけにつながることも多いです。行動することで人との縁が広がり、挑戦の扉が開けていく。これからもその姿勢を大切にしたいと思います。
未来に向けて、ドイツワインを日本に広める挑戦はこれからも続きます。歴史と文化を背負うワインと同じように、ヘレンベルガー・ホーフもまた、次世代に受け継がれる存在として歩みを進めていきます。

