株式会社t.t.w 代表取締役 黒川 卓真氏
建築の世界に“未経験”で飛び込んだ黒川氏。パン職人から一転、積算の道を志し、資格取得から起業までを自らの力で切り拓いてきました。株式会社t.t.wは、正確で誠実な積算業務を軸に、少数精鋭ながら着実に信頼を積み重ねています。
AI時代の変化を見据えながら、人材育成と新たな挑戦に取り組む黒川氏の姿勢について伺いました。
建築積算を通じて、誠実な仕事を届ける
――まず、現在の事業内容について教えてください。
当社は建築業界向けに建築積算業務を中心としたサポートを行っています。建築資材の数量拾いや金入れなど、設計事務所様やゼネコン様の要望に応える形で事業を展開しています。
また、間取り図の作成代行も手がけており、現在は大和リビング様からの受注をメインに対応しています。
――競合の多い中で、御社の強みはどんな点でしょうか。
大手企業のような規模ではありませんので、少数精鋭でスピーディーに動ける点が強みです。建築積算はコストを扱うため、信頼が重要な仕事なので、遠方でもできる限り直接お会いして、打ち合わせを行うようにしています。
オンラインだけで完結させず、誠実な対応を重ねることが結果的に信頼につながっていると感じます。
パン職人から積算士へ。ゼロからの転身
――建築業とは異なる業界からスタートされたそうですね。
以前は食パン専門店で働いていました。地域でも人気の店でしたが、ブームの落ち着きとコロナがきっかけで経営が厳しくなり、この先どうしようか悩んでいました。その頃に父から「積算という仕事がある」と教えてもらったのがきっかけです。
そこから日本建築積算協会のオンラインスクールで学び、建築積算士の資格を取得しました。
――未経験からの起業は勇気のいる決断だったと思います。
前途多難でした。勢いで会社を設立して、アルバイトをしながら勉強と実務を並行していました。最初は取引先から厳しく叱られることも多く、悔しい思いをしたこともあります。それでも諦めずに取り組み、地道に実績を重ねていくことで、少しずつ信頼を得られるようになりました。
今では厳しく叱られた取引先から最も信頼していただいているように感じています。素人出身だからこそ、常に学ぶ姿勢を忘れずに仕事と向き合っています。
経験よりも「素直さ」を大切にした組織づくり
――現在のチーム体制や人材育成について教えてください。
現在は社員2名とパート1名、業務委託スタッフ6名を含め、計10名ほどの小さな組織です。未経験から始めたスタッフも多く、私自身がゼロから学んだ経験をもとに教育しています。ちなみに社員1名はパン屋のときに一緒に働いていた方です。
子育て中の主婦の方やセカンドキャリアの方など、柔軟な働き方を選べる仕組みを意識しています。
――採用において重視していることは何ですか。
積算は地味で根気がいる上に、コミュニケーション能力も必要な仕事ですので、「経験」よりも「素直さ」や「根気強さ」を大事にしています。知識がなくても誠実に取り組める方なら必ず成長できると考えています。
積算の実務を7年間積めば2級建築士資格の受験資格も得られるため、スタッフが自分のキャリアを広げていける環境を整えていきたいと思っています。
AI時代を見据えた新たな挑戦
――今後の事業展開や目標について教えてください。
AIの発展により、積算業務の一部が自動化される可能性もあります。だからこそ、AIに代替されにくい分野や、AIを活用した付加価値のある仕事を模索しています。
例えばAIツールを監修する立場として技術を支えるなど、変化を恐れず新しい仕組みを取り入れていきたいと考えています。
――3年後のビジョンをお聞かせください。
売上1億円を目標にしつつ、教育体制をより強化していきたいです。業界未経験者でも安心して挑戦できる会社づくりを進め、建築業界の人手不足解消にも貢献していきたいと思います。
経験者に頼るのではなく、自分たちの手で人材を育てることが、建築業界の未来をつくると信じています。
ボクシングとスパでリフレッシュする時間
――仕事以外のリフレッシュ方法を教えてください。
週に1回はスパに行き、体を休める時間を取っています。また、週2回ほどボクシングジムにも通っています。体を動かすことで頭がすっきりし、仕事のパフォーマンスも上がりますね。
――最後に、これから挑戦を考える方へメッセージをお願いします。
挑戦は恐れず、軽い一歩から始めていいと思います。私も知識ゼロから積算を学び、アルバイトをしながら会社を立ち上げました。
失敗してもまたやり直せる。そう信じて前に進めば、必ず道は開けます。これからも“挑戦する力”を信じて、建築業界に新しい価値を生み出していきたいです。

