合同会社アクシス 代表 田中かづみ氏
障がいのある方の就労支援を軸に、「誰もが社会とつながり、輝ける場所をつくる」ことを目指す合同会社アクシス。代表の田中かづみ氏は、公認心理師・精神保健福祉士・社会福祉士という3つの国家資格を持ち、福祉の現場で15年以上にわたり支援に携わってきました。現在は心理カウンセリングと、障がい者支援の一環としての「集客マンガ制作」を展開し、社会と個人を結ぶ新たなモデルを築いています。今回は、その歩みと想いについて伺いました。
障がい者支援と「集客マンガ」で社会をつなぐ
――現在の事業内容について教えてください。
現在は1人会社として活動しており、主に2つの事業を行っています。ひとつは、公認心理師・精神保健福祉士・社会福祉士としての心理カウンセリング。医療機関や地域の支援団体と連携しながら、障がいのある方や心に悩みを抱える方の相談を受けています。
もうひとつが、「集客マンガ制作」です。これは、障がいのある方の在宅就労支援を兼ねた取り組みで、AI画像生成などの技術を活用し、クライアント企業の販促に役立つマンガを制作しています。今後は、在宅で過ごす障がいのある方々をつなぐコミュニティを形成し、外注先として仕事を提供できる仕組みを整えていきたいと考えています。
――業界の中での強みはどんな点にありますか。
障がいのある方の特性と業務内容を的確にマッチングできる点です。これまでに430名以上の方を就職に導いた経験があり、そのノウハウをもとに個々に合った支援を行っています。単に働く場所を提供するだけでなく、「自分の力を発揮できる環境を見つける」ことを大切にしています。
“誰もが輝ける場所を”――支援の原点にある想い
――福祉の道に進まれたきっかけを教えてください。
20代の頃、同じ年の身内が難病で寝たきりになったことが転機でした。車椅子で出かける姿を見て「自分は何もできない」と感じたことから、まずヘルパーの資格を取得しました。その後、リーマンショックで勤務先を失い、残った資格を活かして福祉業界に入りました。以来15年、障がい者の就労支援を続けています。
後に勤めたのは上場企業の福祉事業所でしたが、現場のコンプライアンスや人への向き合い方に疑問を持ち、独立を決意しました。どんな状況の人でも社会とつながり、希望を持てる仕組みを自分の手でつくりたいという思いがアクシスの原点です。
――これまでで印象に残っている支援はありますか。
「触法障がい者」と呼ばれる、罪を犯した障がいのある方への支援です。検察庁と連携し、生活基盤を整えることで再犯を防ぐ取り組みを行いました。仕事と住まいが安定すれば、人はやり直せる。その経験が大きな学びになり、今は保護司の受任も申請中です。
共感と尊重でつながる仲間づくり
――組織運営やパートナーとの関係で大切にしていることはありますか。
現在は一人で事業を運営していますが、福祉施設や引きこもり支援の団体などと提携しながら活動しています。今後は同じ方向を向いてくれる仲間を増やしていきたいです。
大切にしているのは「決めつけない」「押しつけない」姿勢。その人の考え方を尊重し、やりたいことを支える――そんな関係を築ける方と一緒に働きたいと思っています。
「集客マンガ」を通じて広がる新しい支援のかたち
――今後の展望をお聞かせください。
今後は集客マンガの受注をさらに拡大していきたいです。AIを活用することで、障がいのある方が在宅のままでも社会と関われる仕事を増やせると思っています。ただ、受注が増えた際に業務をさばききれない可能性もあるため、ビジネスパートナーや業務委託先とのネットワーク構築が課題ですね。
また、「集客マンガ」という仕組み自体の認知を高めるために、各地のビジネス交流会にも積極的に参加しています。少しずつでも理解者と協力者を増やし、社会的インパクトを広げていけたらと考えています。
人と語り、ひとりに戻る時間
――お仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
普段は人と話すことが多いので、休日はあえて一人で過ごす時間を大切にしています。読書やジグソーパズルをして頭を空っぽにしたり、気分転換に飲みに行ったりすることもあります。
また、現在は専門職の仲間たちとともに「自殺防止活動」にも取り組んでいます。看護師や公認心理師など、志を同じくするメンバーと協働しながら、「命と心に寄り添う社会づくり」を進めているところです。
これからは、福祉や心理の垣根を越えて、もっと多くの人が安心して生きられる仕組みを広げていきたいと思います。小さな活動でも誰かの希望につながるよう、支援の輪を少しずつ広げていきたいですね。

