株式会社Challenge Road 代表取締役 大田 征孝 氏
25歳という若さで「就労継続支援B型事業所」を立ち上げた大田氏。自身が障がいを抱えながらも経営者としての道を選び「できることは自分でやる」という自立支援の理念を掲げています。大阪を拠点にスタートしたその挑戦は、支援の形を再定義しながら、未来の福祉の在り方を切り拓こうとしています。
誰もが自立して輝ける社会へ
──まず、現在取り組まれている事業について教えてください。
今年の5月から「就労継続支援B型」という障がい福祉サービスを運営しています。私自身が障がいを抱えた当事者でありながら経営者として事業を行っているのが大きな特徴です。年齢もまだ25歳ということもあり、福祉業界の中では若い世代の視点を取り入れた運営を意識しています。
利用者の方々が社会と関わりながら、自分のペースで働ける環境をつくることが私の使命だと考えています。単に「支援する」ではなく、共に働き、共に成長していく関係性を築くことを大切にしています。
B型事業所のほかに、清掃会社やカフェのような飲食事業など、利用者が実際に働ける場を自社で立ち上げたいと考えています。黙々と作業をするのが得意な方や、対人業務に向いている方など、それぞれの強みを生かせる場を広げたいと思っています。最終的には、一般就労や地域の企業での雇用につなげられるような仕組みを整えていくことが目標です。福祉の仕事は「守る」イメージが強いですが、私たちは「自立を後押しする」ことを目的にしています。
自身の経験から起業を決意
──若くして福祉事業を始められた背景をお聞かせください。
高校を卒業してから障がい者雇用で4年間働きました。その中で、健常者と障がい者の間にどうしても見えない壁のようなものを感じたのです。「この状況を変えたい」と思っても、サラリーマンの立場では限界がありました。そこで思い切って経営者として動く道を選び、昨年11月に準備を始めて、2月に会社を設立。4月に社員を迎え、5月に事業をスタートさせました。
障がいを持つ当事者だからこそ、見える課題や感じる違和感があります。それらを放置せずに、現実を少しでも良くする方法を模索したい。小さな一歩でも、自分が動くことで変えられることがあると信じています。
「手を出さない勇気」を大切に
──社員の皆さんとはどのような体制で運営されていますか?
現在はアルバイトを含めて5名の体制です。私は「過剰な支援をしない」ことを大切にしています。できることは自分でやる。そのほうが自立につながると思うからです。支援しすぎることで、逆に可能性を奪ってしまうこともある。だからこそ「手を出さない勇気」を持つようにしています。
またスタッフには、「利己的にならず、今やっていることが誰のためかを常に意識しよう」と伝えています。支援の現場では“思いやりの押しつけ”が起きやすい。だからこそ、相手の立場に立って考える力を育てるようにしています。
店舗展開をこれからも目指して
──今後のビジョンについて教えてください。
まずは5年以内に3〜5店舗のB型施設を展開することが目標です。大阪を中心に、将来的には地方にも拡大し、施設外就労の場も増やしていきたいと考えています。福祉事業は人材不足が大きな課題ですが、採用を強化しつつ、サービスの質を高めるために日々改善を重ねています。
経営では「焦らず、リスクを恐れず、勝てると確信したことだけをやる」という信条をもっています。絶対に成功させるという自信がなければ、前には進めません。小さくても確実に成果を積み上げ、社会に必要とされる事業所をつくっていきたいです。
できることを尊重し合える社会に
──最後に、読者へのメッセージをお願いします。
障がいの有無に関係なく、「できること」を尊重し合える社会をつくりたいと思っています。誰かに支えられるだけでなく、自分が誰かを支えられる存在になれるように。その連鎖が広がれば、社会全体がもっと優しく、強くなれるはずです。私たちの取り組みを通じて、誰もが自分の力で人生を切り開ける未来を示していけたら嬉しいです。

