YUkasI合同会社 代表社員 林 礼一 氏
音楽活動を経て飲食業界で独立を果たした林氏。レストラン運営とケータリング事業を展開しつつ、現在は社員と共に「あなたがあなたらしく生きていける継続可能な集団」を目指しています。今回は林氏に、これまでのキャリアにおける転機、独自の組織運営、そして次に描く未来について伺いました。
デザインを強みに「食」をプロデュース
――御社の事業内容について教えてください。
当社は主にレストランの運営と、ケータリング事業の二つの柱で事業を展開しています。レストラン事業では、本格的なフランス料理と約500種類のお酒を楽しむことができる店舗を運営しています。
――事業の強みはどのようなところにありますか。
デザイン性です。レストラン事業では世界的なデザイン賞を受賞したことがあります。ケータリング事業では単に食事を提供するだけでなく、ブランドのシーズンコレクションなどイベントのテーマに合わせた空間演出、さらには食事の盛り付けや形状そのものまでアレンジし、「食の体験」をトータルでプロデュースしています。
音楽活動と「箱」への思いが導いた独立
――経営者になられたご経緯や動機について教えてください。
私はもともと音楽活動をしていました。それでツアーを回ったりと全国で活動していたのですが、その過程で各地にいろんな知り合いができていったんですね。
彼らともう一度会いたいと思うけれど、全国各地に散らばっているのでなかなか難しい。であればこちらに「箱」があれば、みんなが会いに来てくれるのではないか。そういうことをだんだんと考えるようになっていったんです。
加えて当時はシステムエンジニアとして働いていたのですが、「サラリーマンとして文句を言いながらお金をもらうのではなく、経営者として感謝しながらお金を払う側になりたい」という思いがだんだんと強くなっていき、最終的には飲食店で独立をすることにしました。
――キャリアの中で印象的だった出来事はありますか。
一緒に始めたパートナーが結婚と妊娠を機に辞め、会社が自分だけになってしまったことがありました。料理もできない、何もできない自分が一人残され、店を辞めるか、自分がやるかの二択に直面しました。
この時に、辞めることを選ばず課題をクリアしていくという思いで、未経験ながらも料理を学んだり、色々トライしてケータリング事業を立ち上げたりしました。当時の経験が今の自分を作っているように思います。
「ノー」と言わない独自ルールと組織運営
――仕事をする上で大切にされている価値観は何でしょうか。
他社と大きく違うのは「ノー」と言わないことです。無理難題に思えることをお願いされた時にも、断るのではなく、「どうすればできるか」を考えることから始めます。スタッフに対しても「どうすればできるか」ということだけを考えようということをずっと言ってきました。
――社員の方々の主体性を引き出すために、どのような取り組みをされていますか。
人生の目標を8つの分類(仕事、趣味、家族など)に分けて共有し合う取り組みを行っています。この目標を毎週共有し、目標達成のために何が必要か、ということを議論します。目標に対して何をしなければいけないのか、行動ベースに落とし込んでいく。やりたいけどやれてないことに対しては、確実にやれるスキームを作ったり、もうやらないと決める、などを話し合って実行に移しています。
コーチングや教育へ広がる今後の展望
――会社が目指す長期的なビジョンと、今後の事業展開について教えてください。
会社として掲げているビジョンは、「あなたがあなたらしく生きていける継続可能な集団を形成する」ことです。そのための直近のステップとして、私自身は現場の仕事を手放し、コーチングや人材教育の事業へシフトしていく計画です。
――なぜコーチングや人材教育の領域なのですか。
例えばバーテンダーは美味しい飲み物を出すだけでなく、お店に来られた方の1日の課題感を解決したり、悩んでいることをヒアリングして寄り添ったりということをします。こうした「人との関わり」の部分をもう少し深めていきたいと思うようになったんですね。
今は飲食店をやっていますが、飲食店をたくさん増やしていくというよりも、飲食店を通じて培ってきたものを「人が自分らしく生きていく」ためのサポートに変えていければいいなと思っています。

