株式会社nieuw begin 代表取締役 杝 春奈氏
子どもたちが自らの人生を選び、決め、乗り越えていく――。
その力を育む教育環境を日本に根づかせたいという思いから、杝春奈氏は「アクセシブル・インターナショナルスクール」を立ち上げました。少子化が進む地方においても、世界に通じる学びの機会を平等に届けたい。その信念のもと、保育・学童・国際交流を一体化したスクール運営に取り組む杝氏に、教育への想いとこれからの展望について伺いました。
自己選択・自己決定・自己解決を育てる教育を
――現在の事業内容と理念について教えてください。
主な事業は3つあります。まず、認可外保育施設の運営。次に、民間の学童保育。そして、海外からの留学生受け入れです。いずれの事業も「国際交流」と「多言語環境」を軸にしており、地域の子どもたちが自然に世界とつながることを目的としています。
理念は「世界という選択肢をすべての人に届ける」ことです。都市部には教育の選択肢が多い一方で、地方ではまだまだ限られています。だからこそ、誰でも通える“地域のためのインターナショナルスクール”をつくりたいと考えました。英語だけでなく、食育や体験、文化などを総合的に取り入れ、「目的最適化」の教育を目指しています。
――御社ならではの特徴や強みはどのような点でしょうか。
西尾市にはインターナショナルスクールがほとんどなく、英語が苦手な親御さんやお子さんでも通いやすい環境を整えています。言語力よりも「コミュニケーション力」を重視し、英語を“技術”として自然に身につける教育方針です。
また、海外の子どもたちと日常的に交流できるのも特徴です。パスポートを持たずとも国際感覚を養える環境をつくり、グローバル社会に生きるための視野を広げています。
「こういう場所が必要だ」その思いから生まれた起業
――経営者になられた経緯を教えてください。
もともと経営を志していたわけではありません。日本では子どもの自殺率が上昇し、幼少期からの環境づくりの重要性を痛感していました。「こういう教育の場が必要だ」と感じたのが原点です。
設立当初はスポンサー企業の出資を受けてスタートしましたが、福祉や教育の分野では収益性との両立が難しい部分もあり、理想の実現には自ら舵を取る必要がありました。そこで2年前に独立し、株式会社nieuw beginとして再スタートしました。
――お仕事をされる上で大切にしていることは何ですか。
「自己選択・自己決定・自己解決」という考え方を軸にしています。これは子どもに限らず、大人にも通じる大切な力です。自分で考え、自分で決め、行動する。その繰り返しが生きる力を育てます。
また、地方に住む保護者の方々にも、国際的な視点を持ってほしいと思っています。子どもの世界を広げるためには、大人自身が世界を知ることが大切です。
主体性を育てる“フラット組織”と人づくり
――組織運営やスタッフとの関係で意識していることを教えてください。
スクールは階層型ではなく、各部門が主体となるフラットな体制です。保育、グローバル、キッチンなど、それぞれが自分の専門性を生かして判断・行動しています。言われたことをこなすのではなく、「子どもたちに貢献できることは何か」を自ら考える組織文化を重視しています。
コミュニケーション面では、できるだけスタッフに声をかけ、困りごとを共有するようにしています。資格や担当領域の違いで壁ができやすい業界だからこそ、ミーティングや食事会などを通じて互いを理解する機会を増やしています。
――スタッフに求める資質はどのようなものですか。
一番は「オーナーシップマインド」です。指示待ちではなく、自分の行動が子どもや保護者にどう影響するかを考えられる人。そして、自分の人生にもつながる形で努力を重ねられる人ですね。
最近は、海外の保護者と英語でやり取りをしたり、自主的にマーケティングを学んだりと、行動力のあるスタッフが増えてきました。その変化が何より嬉しいです。
日本の子どもたちが“世界一幸せな国”で育つ未来へ
――今後の展望について教えてください。
10年後を目標に、海外のシスタースクールと提携したボーディングスクール(全寮制)の開設を構想しています。観光ビザでの短期受け入れから、正式な留学制度へと発展させ、海外と日本の子どもたちが互いに学び合える仕組みをつくりたいと考えています。
保育業界は少子化の影響で厳しい局面を迎えていますが、地域の子どもと海外の子どもが共に学ぶモデルを確立できれば、持続可能な教育運営が可能です。民間学童保育の需要も今後高まると見込んでおり、子どもの体験格差をなくす活動をさらに広げていきたいと思います。
――最後に、リフレッシュ方法を教えてください。
家で映画を観ることや、日帰り温泉に行くことです。西尾市周辺には車で30分ほどの距離に温泉が多く、自然の中で心を整える時間が何よりの癒やしになっています。リフレッシュした分、また子どもたちの未来づくりに向けて全力で取り組みたいと思います。

