「医療的ケア児の“居場所”をつくる」――放課後等デイサービス「泉」が描く、地域と歩む福祉のかたち

合同会社 満元 代表 堀江 雅也氏

放課後等デイサービス「泉」は、重症心身障害児をはじめ「医療的ケア」を必要とする子どもたちに特化した専門性の高い支援を行う事業所です。2014年12月の設立以来、約12年「処置とケアの“誤差”をなくす」ことを掲げ、現場の要求に正面から向き合いながら運営を続けてきました。本記事では、看護師として20年以上の臨床経験を持つ堀江雅也氏に、立ち上げの経緯、組織づくり、地域連携、そして今後の展望について伺いました。

“足りない”から始まった支援

――事業を立ち上げたきっかけを教えてください。

看護師として在宅や訪問の現場に携わる中で、医療的ケア児が安心して通える場所がほとんどないと感じていました。「必要でも、採算が合わなければ実現できない」そんな現実を前に、ならば自分でつくろうと2014年に独立しました。医療と福祉のあいだをつなぐ仕組みを、自分の手で形にしたいという思いからです。

処置とケアの“誤差”をなくす

――現在の事業内容を教えてください。

重症心身障害児や医療的ケア児に特化した児童発達支援・放課後等デイサービスを運営しています。対象は1歳前後から高校3年生までです。現在は約29世帯が利用し、定員5名のためキャンセル待ちも出ています。

――満元の強みは何でしょうか?

「処置とケアの誤差をなくす」ことを理念にしています。医療的ケアは“できる”だけではなく、知識と正確さが求められます。様々な医療機器も取り入れながら看護師としての経験を活かして、感覚ではなくエビデンスに基づいた支援を行い、判断の精度を高めています。必要な医療的ケアすべてに対応しています。

教育と医療をつなぐ地域ぐるみの支援へ

――学校との連携も進めているそうですね。

子どもたちが「通いたい学校に通える」よう、行政職員や教員、支援員の方々が医療的ケアを正しく理解できるような研修を行い、喀痰吸引・栄養注入などの技術資格取得を勧めています。医療・教育・家庭がそれぞれ別の視点で動いている現状を少しでも近づけ、共通言語を持てるようにしていきたいと考えています。

――地域との連携について教えてください。

静岡県東部で「医療的ケア部会」というネットワークを立ち上げました。自治体の自立支援協議会をはじめ、教育関係者、薬局、医療機器メーカー、病院、保護者などが参加しています。課題を共有し、研修や見学を通して地域全体の支援力を高めることが目的です。「良い支援を一つの事業所で完結させず、地域で共有していく」ことを目指しています。

現場に任せることで育つ力

――組織運営で意識していることはありますか?

できるだけ現場に任せ、口を出し過ぎないようにしています。ご利用者様に影響がない範囲であれば、スタッフが自分で判断し、責任を持って動くことを大切にしています。職員の中には、障害のあるお子さんを育てながら働いている方もいます。そうした方々が無理なく働けるよう、休みや通院への理解を深めています。

――印象的な出来事はありますか。

社会に巣立っていった子たちが、今でも泉を慕ってくれていることを知って、スタッフとの信頼関係が築けていたと感じます。とても感慨深いですし、嬉しく思います。先日、卒業した子の親御さんからご連絡をいただき、「他の事業所ではうちの子は看れない」と言っていただいたことが印象的で、事業所の教育方針に自信を持つことができました。スタッフの「看る力」が養われていることを感じます。

乱立する事業の中で“質”を守る

――業界全体の課題をどう見ていますか。

放課後等デイサービスが急増し、専門知識がないまま参入する事業者も増えています。利用者からは内容が見えにくく、質の判断が難しい。だからこそ、職員研修の標準化やデータに基づく支援を進めることで、「信頼できる事業所」を残していくことが重要だと感じています。

――経営で大切にしている考え方を教えてください。

日々の中でふと“あれ?”と感じたときに、それを放置せず立ち止まって考えるようにしています。喋れないお子さんの変化に気づくためにも、感性を磨くことが欠かせません。最終的に信じられるのは自分の感覚ですから、それを大切にしています。

“生まれてから老いまで”を支える仕組みづくり――変化を恐れず、次の10年へ

――経営への向き合い方を教えてください。

経営者になってからは常に不安がありますが、それと向き合う精神力が何より大切だと思います。経営は常に不安との隣り合わせですが、10年を経て感じるのは「現状維持こそ難しい」ということ。常に小さな変化を積み重ね、次の10年も地域とともに歩んでいきたいです。

――今後の展望を教えてください。

18歳以上の生活介護へ領域を広げ、65歳まで切れ目のない支援をつくりたいと考えています。行政から空き園舎の活用提案もあり、5〜10年以内の実現を目指しています。
「医療と福祉」の垣根をなくし、「生まれてから老いるまで医療的ケア児・者が安心して過ごせる場所」を地域に残すことが目標です。

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