合同会社ソラビジョン 代表社員 渡辺 一生氏
合同会社ソラビジョンは、クライアントの課題や構想に応じて、最適なドローンソリューションを提案・開発するコンサルティング企業です。機体開発から事業立ち上げ支援、そして業務請負まで、研究開発と実践を行き来しながら“空からできる課題解決の可能性”を拡張し続ける渡辺一生代表に、これまでの歩みと今後の展望について伺いました。
目次
課題に応える“道具”をつくる──ソラビジョンの事業内容
――現在の事業内容と、主な取り組みについて教えてください。
大きくは2つの柱があります。ひとつは「ドローンを活用して課題を解決したい」と考える企業や行政、研究機関の方々に対するコンサルティング支援です。お客様の中には「こういう現場で困っている」「こんな用途で使えないか」といったアイデア段階の方も多く、私たちはその構想を具体的な実行プランへと落とし込みます。
もうひとつの柱が、ドローンの機体やセンサーの開発です。既製品では対応できない特殊環境、たとえばトンネルや下水道など、狭く暗い空間での飛行が求められるケースでは、お客様の要望に合わせてカスタマイズや新規設計を行います。その他にも、大学や国の研究開発機関の関連プロジェクトの案件も担っており、弊社の業務の中で大きな割合を占めています。
いわば私たちは、「お客様の課題を解決するための道具を一緒に創る会社」です。市販の包丁ではなく、料理人の手に合わせた包丁を仕立てるように、現場や目的に合う“オーダーメイドのドローンソリューション”を提供しています。
研究者から起業家へ──ドローンの可能性を信じた10年
――起業に至るまでの経緯や、ドローンへの思いを教えてください。
私はもともと大学や国の研究機関で環境分野の研究に携わっており、その中で2014年頃からドローンを研究ツールとして使い始めました。当時はまだ「ドローンって何に使えるの?」という時代でしたが、空からデータを取る技術の可能性に強い魅力を感じていました。
試行錯誤を重ねていくうちに、さまざまな企業や研究機関から「うちでも使ってみたい」と声をいただくようになり、2020年には京都のドローン企業とともに実証やトレーニング事業を展開。その延長線上で「自分の手で、お客様と一緒に新しいソリューションを生み出したい」と思い立ち、2023年にソラビジョンを設立しました。
印象に残っている仕事の一つが、東京大学との共同プロジェクトです。ドローンにCO₂濃度を計測するセンサーを搭載し、高度ごとの濃度変化を観測したものでした。この成果が複数メディアで取り上げられ、「京都にこんな技術を持つ会社があるのか」と注目を集めたのは大きな転機になりました。
アカデミックな知見を民間の現場で活かす――その両方をつなぐ橋渡しをしていきたいという思いが、今の原動力です。
現場と知見をつなぐ小さなチーム
――現在の組織体制や、チームづくりで意識していることはありますか。
正社員1名、パートスタッフ2名を含む少数精鋭のチームで活動しています。創業間もない会社ですが、私たちは「プロフェッショナル同士をつなぐハブ」になることを目指しています。
国内のドローン業界には、優れた技術者や専門家が各地にいます。そうした方々とプロジェクトごとに協業し、課題解決に取り組む仕組みを整えることで、柔軟で高品質な対応が可能になります。今後も、社内外の人材が連携しながら学び合う、知のネットワークを広げていきたいと考えています。
成果報酬型コンサルへ──ドローン産業の新しい形を
――今後のビジョンについて教えてください。
3年後には、売上を現在の1.7倍ほどに伸ばしたいと考えています。そのためには、短期的な大型プロジェクトのような一過性の案件だけでなく、継続的に支援できるサービスの仕組みづくりが重要です。
具体的には、成果報酬型のコンサルティングモデルを確立したいと思っています。たとえば「ドローン配送会社を立ち上げたい」という企業とともに事業を構築し、事業成長や売却時に得られる利益の一部をロイヤリティとして受け取る形です。いわば“ドローン版ベンチャーキャピタル”のような立ち位置も面白いなと思っています。
また、プッシュ営業ではなく、困ったときに真っ先に相談される存在になることも大切です。現在はSNSやYouTubeを活用した情報発信を準備中で、ドローンの可能性や最新トピックを共有することで、自然と引き合いが生まれるようなブランドを築いていきます。
アウトドアで整える心と体
――お仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
もともと自然の中で体を動かすことが好きで、スキューバダイビングのライセンスも持っています。長野に住んでいた頃はスキーや登山にもよく行きました。京都に拠点を移してからはジムに通い、体を動かす時間を大切にしています。
ドローンの仕事は意外と体力が必要なんです。撮影や点検の現場は山間部や暑さ・寒さの厳しい場所など過酷な環境も多い。机上の理論だけでなく、自分の体で現場を感じることが信頼につながると思っています。これからも“現場に立つコンサルタント”として、空の技術と人の想いをつなぐ挑戦を続けていきたいです。

