株式会社永産システム開発は、医療分野を中心に高精度なシステム開発を行う企業です。十数名という小規模ながら、全国の医療機関を支える大規模案件を数多く手がけてきました。
「確実に動く仕組みをつくる」ことを理念に掲げ、社会の信頼を支える技術開発に挑み続ける同社。本記事では、代表の生方守氏に、会社の概要や理念、そして大切にしている想いについて伺いました。
目次
社会の信頼を支える“確実な技術”を追求する
まず、御社の事業内容について教えてください。
当社は、医療分野を中心としたシステム開発を行っています。十数名という小規模な体制ながら、全国規模の大規模案件を手がけてきました。たとえば、日本赤十字社の「造血幹細胞移植支援システム」はその代表例です。全国の病院や複数のバンクを連携させ、重篤な患者さんとドナーを正確にマッチングする仕組みであり、命に関わる極めてセンシティブな情報を扱います。わずかなエラーが大きな影響を及ぼすため、システムには“止まらないこと”“誤作動を起こさないこと”が求められます。私たちはそうした現場の信頼を技術で支え、見えないところで社会を動かしているという責任を常に意識しています。
企業として大切にしている理念を教えてください。
創業当初から「人材派遣型の会社にはしない」と決めていました。技術者を単に派遣するのではなく、自社の技術力で課題を解決し、社会に貢献する――それが永産システム開発の原点です。人を売るのではなく、技術で勝負する。そこには“技術者として誇りを持てる働き方を守りたい”という想いがあります。自分たちの力で仕組みをつくり、確実に動かし続ける。その積み重ねが信頼を生み、次の仕事へとつながっています。
御社ならではの強みはどのような点にありますか。
独自に開発した「BRMS(ビジネスルールマネジメントシステム)」が大きな特徴です。これはプログラムを書き換えずにシステムのルールを外部から管理できる技術で、業務変更や法改正といった環境の変化にも柔軟に対応できます。一般的なシステムでは処理の内容を変更するたびにコード修正が必要ですが、BRMSを導入すれば、ルールの登録・更新だけで制御可能です。医療や金融など、“止められない領域”では特に高い評価をいただいています。
永産システム開発として、どのようなビジョンを描いていますか。
「技術は人のためにある」という考えが根底にあります。便利さや効率性だけでなく、人の命や暮らしを支える“正確に動く仕組み”を提供することが私たちの使命です。どれほどAIが進化しても、最終的に信頼されるのは“確実に動くシステム”。社会に安心を届けるために、一つひとつのプロジェクトに誠実に向き合い、技術の力で人と社会を支えていきます。
技術者から経営者へ――「やらざるを得なかった」挑戦の始まり
経営者になられたきっかけを教えてください。
実は、最初から経営者になるつもりはまったくありませんでした。私はもともと技術者で、38年前に会社を立ち上げた当初も経営は別の方に任せていたんです。当時の共同設立者は大手企業のIT部門の元部長で、「この人なら間違いない」と信頼していました。私は自分の得意分野であるシステム開発に専念し、ものづくりに集中するつもりでした。
ところが、いざ始めてみると現実はまったく違いました。大企業の管理職と中小企業の経営者では、求められるものが根本的に異なります。大企業では下から上がってくる企画を決裁すればよかったかもしれませんが、小さな会社では自分が先頭に立ってすべてを動かさなければならない。資金繰りから営業、人材の確保まで、すべてに責任が伴います。その重みを実感し、「やる気がなかった」経営を“やらざるを得なくなった”のです。
経営を始めた当初は、どのように知識を身につけられたのですか。
経験も知識もなかったため、同業の勉強会や経営者の集まりに参加し、現場の声を聞きました。最初は戸惑いもありましたが、経営者とはどんな視点で物事を見ているのかを学ぶうちに、「経営も一つの技術」だと気づいたんです。ただ、集まりの中には人材派遣型のIT企業が多く、自分の理想とは違う部分もありました。私は「人を派遣して利益を上げる」よりも、「技術で社会を支える」ことに価値を見いだしていたので、技術者としての誇りを守る会社でありたいと思いました。
経営の中で大切にしてこられたことを教えてください。
一番大切にしているのは「人とのつながり」です。経営は結局“人の力”に尽きます。これまで多くの方々に支えられてきましたし、今でもそのご縁が次の仕事につながっています。たとえば、日本赤十字社の造血幹細胞移植支援システムを任されたとき、若いころに一緒に働いた技術者が上場企業の社長になっており、依頼を快く引き受けてくれました。あの信頼関係がなければ実現していなかったと思います。
人は「この人なら紹介できる」と思う相手にしか人をつなぎません。だからこそ、誠実であることを何よりも重視しています。私にとって経営とは、数字を追うことではなく、“信頼を積み重ねていく仕事”。そのつながりの先に、会社の成長も社会への貢献もあるのだと
チームの信頼が“品質”を生む――社員と築くオープンな関係
社内では、どのように社員と関わっていらっしゃいますか。
当社は十数名規模の小さな会社ですが、そのぶん一人ひとりの存在感が大きく、全員が主役です。私は経営者という立場にありますが、できるだけ距離を近く保ち、日々の会話を欠かさないようにしています。システム開発の現場では、ほんの小さな見落としが全体に影響を及ぼすことがあります。だからこそ、社員同士が気づきを共有できる環境を整えることが何より重要です。誰かが一人で抱え込むことなく、「ちょっと相談したい」と気軽に声をかけられる関係を意識しています。
組織づくりで意識していることはありますか。
「報告・相談がしやすい雰囲気」を常に意識しています。経営者と社員という立場の違いはあっても、同じ目標に向かう“チーム”であることに変わりはありません。小さな違和感や不安を放置せず、早い段階で話し合うこと。それが結果的にトラブルを防ぎ、品質を高める最善の方法だと考えています。ミスを責めるのではなく、原因を一緒に見つけて次に活かす――そうした文化が永産システム開発の現場には根づいています。
社員との信頼関係を築くうえで心がけていることは。
社員を“管理する対象”ではなく、“同じ船に乗る仲間”として見ています。特に当社は医療分野の案件が多いため、どのプロジェクトも緊張感があります。厳しいスケジュールの中でも現場が前向きに進めるのは、互いに信頼しているからです。意見が違うときも、まずは相手の視点に立って話を聞く。立場を超えて尊重し合うことが、最終的に良い成果につながると感じています。
また、技術者としての誇りを持ち続けてもらうために、社員の努力や成果をきちんと評価することにも気を配っています。数字だけでは測れない価値――たとえば、お客様の信頼を得るための地道な改善や、トラブルを未然に防いだ判断力なども見逃しません。努力が報われる環境を整えることで、社員一人ひとりが自信を持って働けるようになります。永産システム開発にとって最大の強みは、この“人と人との信頼関係”。技術力だけでなく、信頼と責任を共有するチームワークこそが高い品質を生み出す。私はそれを「うちの最大の資産」だと考えていま
AI時代の新しい“安全”をつくる――BRMSが導く未来
今後、どのようなことに挑戦していきたいと考えていますか
これからは、AI技術と当社独自の「BRMS(ビジネスルールマネジメントシステム)」を組み合わせた新しいサービスを展開していきたいと考えています。AIはここ数年で急速に進化しましたが、現場で実際に活用するにはまだ多くの課題があります。特に、医療や金融といった“ミスが許されない領域”では、AIの判断をそのまま業務に使うことはできません。安全に活用するには、AIの動きを制御する明確な“ルール”が必要なのです。
私たちが長年培ってきたBRMSは、まさにその「ルール」をシステムの外で管理できる仕組みです。AIの判断や提案に対し、どこまでを許容し、どこからは人が介入すべきか――その境界線を柔軟に設定できることが強みです。AIの精度とスピードを活かしながら、人間の経験や倫理を反映させる。その橋渡しを担うのが、BRMSだと考えています。
どのような未来を描いていますか。
目指しているのは、AIを単なる便利なツールではなく、“信頼できるパートナー”として使いこなせる社会です。データに基づく判断が人の仕事を補完し、むしろ人がより創造的な領域に力を注げるような環境をつくりたいと思っています。そのために必要なのは、技術そのものよりも“安心して使える仕組み”です。AIが暴走することなく、透明性のある判断を行えるようにする。私たちはその土台を技術で支えたい。
創業以来、「技術は人のためにある」という理念を掲げてきました。時代が変わっても、その根本は変わりません。どれほどAIが進化しても、最終的に人が信頼できるのは“確実に動くシステム”です。私たちはこれからも、技術と人が共存する未来を見据え、社会に安心と信頼を届ける仕組みを創り続けていきます。

