Digi&Dev合同会社 代表 柳井康伸氏
高知県を拠点に、医療機関や地域企業の業務効率化をITで支援するDigi&Dev合同会社。
代表の柳康伸郎氏は、「田舎にこそテクノロジーが必要だ」という信念のもと、ITの力で地方の課題解決に挑んでいます。
今回は、柳井氏の経営観と起業の経緯、組織づくりや今後の展望についてお話を伺いました。
目次
高知の現場から、地域の持続可能性をITで支える
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、医療機関や中小企業を対象に、ITを活用した業務効率化やデジタル化の支援を行っています。高知のような地方では人手不足が深刻です。
そこで、AIやOCR、クラウドツールを活用し、紙ベースの業務や手作業をできる限り自動化することで、時間やコストを削減し、現場の働きやすさを高めることを目指しています。
――企業理念やビジョンについて教えてください。
「テクノロジーで地域の持続可能性を支える」というのが当社の根本的な考え方です。過疎化が進む地域にこそ、デジタルの力が必要です。手作業からの脱却は単なる効率化ではなく、その企業が生き残るための手段でもあります。
地域が安心して存続していけるよう、地に足のついたIT支援を届けていきたいと考えています。
「田舎にこそテクノロジーを」──危機感が背中を押した独立
――起業のきっかけについて教えてください。
私は高知出身で、キャリアはIBMに始まり、外資系のIT企業で長くエンジニアを務めてきました。2013年に高知へ戻り、病院経営を支援する法人の社長を7年間務める中で、地域の現場の非効率さに強い危機感を覚えたんです。
紙やFAXが今も業務の中心にある。人手が減る一方で、このままでは現場が持たないと感じました。そして、「田舎にこそテクノロジーが必要だ」という想いがどんどん強くなっていったんです。
自分の技術と経験を地元のために使いたいと考え、2020年にDigi&Devを立ち上げました。システム開発と業務改善、両方の視点から支援できるのが私の強みです。
――印象に残っている出来事はありますか?
製造業の企業で、紙の注文書をスキャンし、AIで読み取って在庫・請求処理を自動化する仕組みを導入したことがあります。それまでは毎日残業が続いていたのが、定時で帰れるようになったと感謝されました。
製造業のお客様に、紙の注文書をスキャンして、OCRとAIの組み合わせで請求処理を自動化し、請求書の発送までを自動化するというシステムを導入させていただきました。導入後少したってお客様の担当者の方と偶然お会いし、「ずいぶん楽になりました」と感謝されました。ITが“人を楽にする”ことを実感した瞬間でしたね。
小回りと誠実さを武器に、次のステージへ
――組織づくりについてはどうお考えですか?
現在は私一人で運営していますが、今後は仲間を増やしていきたいと考えています。
ただし、急拡大は目指していません。大事なのは、価値観を共有できる人と一緒に仕事をすること。
裁量を持ち、自分の頭で考えて動ける人とともに、柔軟で誠実なチームをつくりたいです。
――社内のコミュニケーションや文化について、どのような考えをお持ちですか?
将来的に社員が増えた際には、オープンで正直なコミュニケーションを重視したいと思っています。
私は失敗談も含めて開示するスタイルを取っており、良い話ばかりではなく、課題もきちんと共有する姿勢を大切にしています。
誰もが意見を言いやすく、挑戦と学びが自然に生まれる環境を整えていきたいです。
小さなITが、地方の未来を変えていく
――今後の事業展開や挑戦について教えてください。
今力を入れているのは、医療や製造の現場で横展開できるパッケージ型ソリューションの開発です。
例えば、薬の在庫を画像解析で管理する仕組みや、請求処理の自動化ツールなどを、低コストで提供できるようにしたいと考えています。
――目指すのは、どのような会社像ですか?
ITが苦手な企業にも、「それならお願いしてみよう」と思ってもらえる存在です。特別な知識がなくても、現場で自然に使えるITサービスを提供し、地方の企業が継続できる仕組みをつくっていきたいですね。
「安くて、ちゃんと使えるIT」を全国の地域に広げていくことが目標です。
健康も仕事も“無理をしない”が長く続けるコツ
――日々のリフレッシュや健康管理について教えてください。
中学生の頃から続けているテニスが一番のリフレッシュですね。運動することで気分が切り替わりますし、体調管理の意味でも大事にしています。
また、仕事時間も朝8時半から夕方5時までと決め、無理のない働き方を心がけています。体が資本ですから、継続するにはバランスが大切です。
――経営以外で注力されていることはありますか?
今後は、若い世代へのIT教育や、地域での啓発活動にも力を入れていきたいです。高知のような地域でIT人材を育てることも、大きな意味を持つと感じています。
自分が積んできた経験を、次の世代や地域の未来に還元していけたらと思っています。