クラウドファンディングを軸にした独自の物販ビジネスで成果を上げ、次なる挑戦として廃校を活用したホテル事業や地域貢献型の複合施設構想に挑む河野快晴さん。
大学2年生で起業し、試行錯誤を繰り返しながら事業を拡大してきた背景には、「自分が納得できる商品だけを届けたい」という強い信念と、仲間との信頼関係を大切にする経営スタイルがあります。
今回は、クラウドファンディングを活用した事業の特徴や経営者としての転機、そして未来に描くビジョンについてお話を伺いました。
目次
クラウドファンディングを軸にした独自の物販ビジネス
現在の事業内容や他社との差別化ポイントについて教えてください。
今は2つの会社を経営しています。1つはインテリア関連の会社、もう1つは商社のような事業形態です。どちらも新しい商品をクラウドファンディングで販売することを軸にしています。
クラウドファンディングを使った物販に特化している点は、他社にはあまり見られない特徴です。一般的な物販だと在庫を抱える必要がありますが、このモデルは先に注文を受けてから生産できるため、リスクを抑えながら商品を展開できるのが強みです。
クラウドファンディングをビジネスモデルに選んだ理由は何でしょうか?
大学2年生のときに起業したのですが、その頃は資金がなく、在庫を持つのが怖かったんです。クラウドファンディングは注文が入ってからその分だけ生産できるので、在庫リスクを取らずに事業を回せる点が非常に魅力的でした。
実際に、このモデルで成功体験を積みながら事業を広げてきました。クラウドファンディングは「商品を市場に出す前に反応を確認できる」点も大きなメリットです。結果が数字で見えるので、次の施策にも活かしやすいと感じています。
具体的な商品展開や、印象に残っているエピソードを教えてください。
インテリアの会社では、自社でデザイン・開発した「室内用の焚火台」が代表的なヒット商品です。これをきっかけに、他分野の商品を扱う商社事業も展開するようになりました。
たとえば、ウイスキーの熟成ボトルや、高校時代の友人デザイナーと共同で開発した「デザイナーズ印鑑」などがあります。また、中国のアリババ社と連携して販売している猫用スマートトイレもあります。
一方で、すべてが順調というわけではありません。最近は猫用スマートトイレで大きな広告投資をしたものの、結果が想定の10分の1程度に終わり、悔しい思いもしました。昨日はその反省でやけ酒をしてしまったほどです(笑)。今からアリババの社長と面談があるので、正直緊張していますが、こうした経験も次の成長の糧にしたいと考えています。
検察官志望から学生起業家へ─心のストレスと生活のために踏み出した一歩
これまでのキャリアと、経営者になったきっかけを教えてください。
もともとは検察官を目指して早稲田大学法学部に進学しましたが、入学して5日ほどで「法律は自分には合わない」と感じ、大学に通わなくなってしまいました。その後、自分でせどりを始めましたが、世間の目が厳しくストレスも大きかったため、「きちんと自分のビジネスをやろう」と思ったのが転機でした。
さらに、大学時代にコロナ禍で家族からの仕送りが途絶え、生活のためにも事業を立ち上げる必要に迫られました。結果として大学2年生で起業し、そこから経営者としてのキャリアがスタートしました。
もともと経営者を目指していたわけではなかったのですか?
全く考えていませんでした。もともとは安定した職業を志望していて、検察官や大企業などの道を想定していました。ただ、法律の勉強は自分にとって枠に縛られる感覚が強く、「この枠を飛び出してみたい」と思うようになったのがきっかけで、経営者という道に憧れを持つようになりました。
実際に経営をしてみて、感じたギャップや学びはありますか?
大きく2つあります。1つ目は『想像するような派手な遊びはできない』ことです。経営を続けるうちに資金に余裕が出てきても、それを遊びや贅沢に使うのではなく、自然と事業への投資に回すようになりました。遊ぶよりも事業そのものにお金をかける方が楽しくなり、仕事に没頭してしまいます。
2つ目は、『経営者とビジネスマンは違う』ということです。経営は単純なビジネスモデルの展開だけでなく、資金繰りや社員との関係づくりといった周辺業務まで幅広く目を配る必要があるということを最近実感するようになりました。「ビジネスマンから経営者になった」ともっともっと実感できるように、さらなる成長をしていきたいですね。
社員は現在、秘書のお姉さんが1人と広告担当さんが1人、パートのおばあちゃんたちが3人ほど。秘書のお姉さんはお茶会で知り合った女性で、逆境を乗り越えた強さを持っている人です。最近は結婚間近らしくとても幸せそうなので嬉しいです。広告担当さんは、大学1年生のときにスタバで一緒にアルバイトをしていた同期。初日に一緒に遅刻して店長に怒られた仲だったので、6年後にこうして一緒に仕事ができているのは本当に感慨深いです。パートのおばあちゃんたちはかわいいです。
信頼関係を重視した組織運営とコミュニケーション
お仕事をする上で大切にしている信念はありますか?
一番大切にしているのは「自分が納得できない商品は売らない」ということです。
物販では中国系の工場から輸入すれば安く仕入れられ、利益率の高いモデルを作ることもできますが、それでは自分の良心に反してしまうと感じます。だからこそ、自信を持っておすすめできる商品だけを扱うことを徹底しています。
社員やパートナーとのコミュニケーションで心がけていることは?
「絶対に否定しない」ことを意識しています。特に今一緒に働いてくれているメンバーは女性が多く、メンタル面が強くない方もいます。だからこそ、丁寧な言葉遣いや、悩んでいそうなときには食事に誘うなど、できるだけ寄り添う姿勢を大事にしています。友人のようであり、良きパートナーでもある関係性を目指しています。
具体的にどのようなコミュニケーションを心がけていますか?
感謝やねぎらいの言葉を積極的に伝えています。「ありがとう」「助かった」という言葉はよく使いますし、失礼があったときには「ごめんなさい」をしっかり伝えます。メッセージのやりとりでは、圧迫感を与えないよう絵文字を多めに使うことも意識しています。
業務のほとんどはオンラインで進めていますが、撮影などのときには事務所に集まることもあります。リモート中心だからこそ、普段のメッセージで気持ちが伝わるように工夫しています。

廃校を活用したホテル事業への挑戦と未来構想
今後の事業展開や新たに挑戦したいことについて教えてください。
3年後を目処にホテル事業に挑戦したいと考えています。ちょうど地元・山梨で廃校が売りに出ており、立地も良く、面白い可能性を感じました。購入価格は約2億円で、そこを活用してホテルや福祉施設、ウイスキー蒸留所など、多様な施設を併設した複合施設にできないかと構想しています。
もちろん、購入後の改修費や維持費も相当かかるため、現行のキャッシュを生むビジネスは継続しつつ、並行して準備を進めていきたいと思っています。
ホテル事業に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
実は大学時代、検察官を目指していた一方で、空間デザイナーにも憧れがありました。しかし才能がないと感じ、諦めた過去があります。そんな中、昨年「星野リゾート 界 松本」に宿泊した際、和モダンな空間とおもてなしの精神に感動し、「自分もこんな空間を作りたい」と強く思いました。
その体験が、ホテル事業に挑戦したいという原点になっています。
どんなホテルを目指しているのか、具体的に教えてください。
廃校となった中学校の教室をリノベーションし、和モダンな空間へと生まれ変わらせたいと考えています。お客さまと直接触れ合える場にしつつ、ウイスキーの蒸留所や地域に開かれた福祉施設なども併設することで、単なる宿泊施設ではなく「人が集まり、交流が生まれる場所」にしたいです。
ビジネスとしてだけでなく、自分のデザインへの憧れや、地域への貢献も形にできるような拠点をつくることが、今の大きな目標です。
経営を支えるリフレッシュ法と日々の工夫
経営の中でリフレッシュや気分転換にしていることはありますか?
1つ目はお風呂に入ること。自宅で1日3回、朝・昼・夜と湯船に浸かります。疲れたら追い焚きをしてリセットするのが習慣です。入浴剤も10種類以上揃えていて、社員さんや友人たちがお土産で買ってきてくれることが多いです。最近メルカリでアロマオイルを買ったので、自分でバスソルトを作ってみようと思っています(笑)
2つ目はウイスキー。事務所に4-50本あり、大学時代からの友人でもある広告担当さんと夜中まで語り合いながら飲むのが至福の時間です。家族や将来について深く語れる仲間と過ごす時間は、仕事の緊張感を解きほぐしてくれます。
3つ目は食生活です。眠くならないように糖質を控え、野菜や肉・魚を中心にした食事を心がけています。普段はストイックに管理していますが、旅行や外食のときには全力で食べます!(笑)ご飯や甘いものが格別に美味しく感じられるので、その瞬間が本当に楽しみです。
経営のために取り入れているユニークな習慣はありますか?
お風呂でリラックスした後は、「鍼マット」という針のような突起がついたマットの上に上裸で寝て刺激を与え、気持ちを切り替えます。初めての人は痛くて乗れないレベルですが、鍼治療のように背中が真っ赤になるほど刺激されて、頭が冴えて集中力が高まります。
経営に向き合うモチベーションや、これからの挑戦に向けて意識していることは?
今年、自分の中で「 1億円の利益を出す」という目標を立てました。それを実現するため、食生活や生活習慣を見直し、体調管理を徹底しています。経営に全力を注げる環境を整えることが、結果的に挑戦を続ける力につながると考えています。
日々の小さな積み重ねが未来につながると信じて、これからも挑戦を続けていきたいと思います。