プログラミング教室(小・中学生)、英会話教室(中学生~大人)、中高生向けキャリア教育教室を展開しながら、「人の可能性を形にする」という理念を掲げる濱口氏。
人並みの「平均点」を目指すのではなく、その子の得意分野を伸ばす教育を重視し、子どもから大人まで「幸せを感じられる人生」を切り拓けるよう支援を続けています。
本記事では、事業に込めた思い、キャリアの原点、組織運営の工夫、そして未来への展望について伺いました。
目次
プログラミング・英会話・キャリア教育──三本柱で挑む教育事業
現在の事業内容や特徴について教えてください。
現在は3つの事業を柱にしています。ひとつはフランチャイズ展開のプログラミング教室、もうひとつは妻が中心となって運営するオリジナルの英会話教室、そして中高生を対象としたキャリア教育教室です。
各分野で大切にしているのは、学校の教科書だけでは補えない「実践的な学び」です。学びを通じて「自分の得意・不得意に気づき、得意を伸ばすきっかけを得られること」を重視しています。
教室では単なるスキル習得にとどまらず、主体的に考え行動できる力を育むことを意識しています。
英会話教室を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
10年以上前、ユニクロや楽天が社内公用語を英語にするというニュースがありました。当時、中小企業経営者の団体に所属していたこともあり、「いずれ中小企業にも英語力が求められる時代が来る」と感じました。
そこで経営者層を対象とした英会話教室をスタートしました。妻が英会話講師をしていた経験も大きな後押しになりました。授業ではコミュニケーションを意識した実践的な会話に重点を置き、受講者がすぐに活用できる工夫をしています。
ご自身は英語に関わりがあったのですか。
私は英語が得意ではありません(笑)。最初は授業に参加してみましたが、熱中はできませんでした。ただ、その体験が「誰でも気軽に学べる場の必要性」を感じるきっかけになりました。英語を敬遠しがちな人ほど、気負いなく学びを始められる環境づくりが重要だと実感しました。
器用貧乏の経験から学んだ「得意を伸ばす教育」の重要性
教育事業に力を注ぐようになった背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
最近、石破首相が「アフリカで3万人のAI人材を育成する」というニュースを見ました。日本国内では今でもAI人材が不足しているのに、なぜ国外なの?と感じた方もいたのではないでしょうか。まさに一事が万事で、政府任せの公教育だけで「社会で必要とされ、幸せを感じながら生きていける人材」を育てるのは難しいと実感しています。
だからこそ、学校で扱わない実社会の分野や、子どもたちそれぞれの得意を伸ばす学びが必要だと思うのです。こうした想いが教育事業を広げる大きな原動力になっています。
ご自身の経験も影響しているのでしょうか。
私は小さい頃から何でも平均的にできる、いわゆる「器用貧乏」タイプで、突出したものがなく自己肯定感を持てずに悩んできました。ネットが普及する以前は人並みのスキルにも居場所がありましたが、今はAIや機械に置き換えられています。
だからこそ、子どものうちから「苦手ではなく、伸びしろのある分野」に気づき、とことん伸ばすことが大切だと考えます。
例えばクラスで「この分野なら一番」と言える経験(勉強以外も含む)が、その子の自信と自己肯定感につながります。私自身が強みを見つけられず遠回りをしたからこそ、次世代にはもっと早く「自分の強み」に気づいてほしいという願いがあります。
プログラミング体験授業でもその点を伝えているのですか。
はい。説明会では親御さんに「今日楽しそうに取り組んでいたら、伸ばすべき分野かもしれません」と伝えます。逆に「楽しそうでなければ無理に続けず、他の分野を探した方が良い」とも。
「好きこそ物の上手なれ」。同じ時間とコストをかけて努力するなら、苦手を平均点にするより、得意をさらに伸ばす方が本人も周りも幸せになります。
こうした考え方に共感いただく保護者の方も多く、単なる習い事ではなく将来を見据えた学びの場として位置づけてもらえることが増えています。 実際、プログラミング体験会が終わる時間になっても子どもが教材に夢中で、親御さんに声をかけられるまで手を止めないこともあります。その瞬間に得意や関心が芽生えるのを見られるのは、教育者として大きな喜びのひとつです。
社員の強みを活かす組織づくりと教育現場での気づき
組織運営において意識していることは何でしょうか。
私は体系的にカリキュラムを作るのが得意ではないため、フランチャイズの仕組みを活用しています。ただし「人の可能性を形にする」という理念は一貫して大切にしています。
社員やスタッフにも「苦手を克服するより、得意を伸ばすこと」を意識してほしいと伝えています。適材適所を意識し、安心して挑戦できる雰囲気づくりを大切にしています。
結果として、強みを活かして生き生きと働く社員の姿が、子どもたちや保護者の信頼にもつながっていると感じています。
教育の現場で印象的だった出来事はありますか。
4年間、大阪の府立高校で1年生を受け持ったときのことです。生徒たちに「何のために高校に来ているの」と尋ねると「就職するため」と返ってきました。「じゃあ、働くってどんなイメージ?」と尋ねると、多くの子どもたちが「きつい・しんどい・面倒くさそう」と答えました。
通勤電車で疲れ切った大人の姿や、自分の親の働き方を見てそう感じているとのこと。働くことに夢を持てない子どもがこんなにもいる現実に危機感を覚えました。
だからこそ「自分の得意を活かせる仕事で人生はもっと楽しくなる」と希望を伝えるようにしています。ただし「楽しい仕事はあるが、楽な仕事はない」とも伝えています。 授業後に「自分も何か得意を見つけたい」と目を輝かせて話しかけてきた生徒がいて、その瞬間に教育の持つ力を改めて実感しました。

AI時代に必要な教育と、人材育成の新しい連携モデル
今後、どのような展望を描いていますか。
教育の在り方は大きく変わるべきだと思います。知識は検索すればすぐに手に入る時代です。単なる暗記の価値は薄れ、「考える力」「考えや意見を言語化する力」、そして情報を「整理・活用する力」など、暗記以外の力を養う教育が必要です。
私はすべての仕組みを自分で作れるわけではありません。同じ志を持つ人と連携しながら、子どもや大人の可能性を引き出せる環境を広げていきたいと考えています。
特に連携に期待されているのですね。
そうですね。私はゼロから体系を立てるのが得意ではないので、仕組みづくりに強い方と協力できれば心強いです。教育事業を通じて未来を変えていける仲間が増えることを願っています。
さらに、地域や世代を超えて「適材適所で人の可能性を形にする」活動が広がれば、日本全体の未来に大きな力を与えられると思うのです。
例えば、AIやプログラミングを学ぶだけでなく、それをどう社会に活かすか、自分の強みと結びつけるかを考えられる人材を育てたい。海外では小学生のうちからこうした教育を提供している国も増えており、日本も遅れを取ってはいけません。
社会人への人材教育も重要ですが、社会に出る前の学校教育の中で「実社会で個性を活かせる人材」を育てることが最も大切だと考えます。そのために、官民が柔軟に連携し、多様な学びの場を提供できればと思います。 教育の未来は、多くの仲間との協働によってこそ築いていけるものだと強く感じています。
人や社会との関わりから得るエネルギーと「可能性を形にする」人生観
日々のリフレッシュ方法や大切にしている価値観を教えてください。
苦手なことを仕事にしていないので、特別な趣味でリフレッシュする必要はありません。その代わり、人と会話することが大好きです。子どもや保護者、同業・異業の方との対話から新しい気づきを得る時間が、大きなエネルギーになっています。
また「人の可能性を形にする」という理念は、仕事だけでなく人生観そのものにも通じています。適材適所、誰もが自分の強みを活かして働ける社会の実現が、私の原動力です。
休日には映画やショッピングをしながら、世の中の関心や地域の方々の考えを観察するのも楽しみのひとつです。保護者や生徒との会話が新しい事業のヒントにつながることもあり、人や社会との関わりそのものが学びの場になっています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
子どもも大人も、自分の可能性をもっと感じてほしいと思います。適材適所、得意を活かすことができれば人生は必ず楽しくなります。教育や人材育成に携わる方で共感してくださる方がいれば、ぜひ一緒に新しい仕組みを作りましょう。
自分ひとりでは見えない景色も、仲間とともに歩めば必ず広がります。これからの社会には、まだ誰も見たことのない新しいチャンスが無限に広がっています。
未来をつくるのは、まさに今この瞬間から始まります。ともに次の世代へ、より豊かな世界を手渡していきましょう。