一般社団法人ハンドボールファミリー 代表理事 小坂哲英氏
男子チーム「アルバモス大阪」を立ち上げ、ハンドボール界に大きな変革をもたらした小坂氏。次なる挑戦は、東京での女子チーム設立です。株式会社ではなく一般社団法人を選んだ背景には、「ハンドボールは公共財であり、未来からの預かりもの」という強い理念がありました。女子ハンドボールを首都圏で花開かせるべく奔走する小坂氏に、立ち上げの経緯や理念、そして未来への展望を伺いました。
首都圏に女子チームをつくる理由
――現在の事業内容と設立の経緯について教えてください。
男子チームを大阪で立ち上げた経験から、次は女子のトップチームを東京で作ることに挑戦しています。現在、国内トップリーグであるリーグH加盟の女子チームは11ですが、全てがほぼ西日本に集中しており、東京はもちろん首都圏〜関東圏〜東日本に存在しない状況なんです。
大阪では株式会社を選択し、資金調達を経てトップリーグ参入を実現しましたが、今回は一般社団法人を選びました。特定の企業や個人に依存するのではなく、市民球団型の仕組みを採用することで、永続的で開かれたクラブを目指しています。
経営者としての歩みと大切にしてきた価値観
――経営者になられた経緯や大切にされている考え方は何でしょうか。
私は大企業に長く勤めた経験はなく、若い頃から経営者や創業者の近くで働く中で影響を受け、自然と経営に携わるようになりました。40歳前に独立しましたが、一度大きな失敗も経験しました。その後、再挑戦して現在の会社を経営する傍ら、ハンドボール界の課題に向き合うようになったのが2018年です。
理念として大切にしているのは「ハンドボールは公共財であり、未来からの預かりもの」という考えです。今の運営は未来の子どもたちに引き継ぐものだという視点を常に持ち、意思決定をしています。
公共財としてのチーム運営
――組織運営において意識されていることはありますか。
現在、法人としては理事・監事の6名で運営し、選手は来春から本格稼働します。特徴は「公共財」という考えを基盤にしている点です。特定の企業の所有物ではなく、多くの人が関わり合いながら支える仕組みにしています。
選手やスタッフには「このクラブを自分の自己実現に使ってほしい」と伝えています。チームは私物ではなく、多様な人が参加し価値を持ち寄る場にしたい。だからこそ、選手や関係者が主体的に関わり、発言し合える環境を作ることを大切にしています。
練習拠点と今後の構想について
――今後の課題や展望について教えてください。
一番の課題は資金です。市民球団型化する為に”ソシオ制度(正会員によるフラットな組織運営)”と言う仕組みを導入していますが、それだけでは十分ではありません。企業スポンサーとの協力や地域との連携を広げることが不可欠です。
直近の目標は、リーグH加盟承認をなるべく早く得る事ですが、専用練習場を確保する事にも注力して行きます。ここに来れば選手に会える、練習が見られる。そしてハンドボール、多様なボール運動が出来るという拠点があれば、地域との交流も自然に生まれ、地域へのお役立ちと出来る筈です。さらに将来的には「◯⚪︎◯◯◯」(構想中のネーミングはありますが、提携先企業が想起される為、◯表示させて頂きます)構想も持っていて、教育とスポーツを幅広く融合させたボール運動空間で、ボールを通じて多様な人が交わる場にしたい。そして10年以内には”ハンドボールの聖地”となれる様な専用アリーナの確保をしっかり目標として動いて行きます。
こうした構想の背景には、「トップリーグで勝つ」こと以上に「社会と接続するクラブ」「ハンドボールマーケットを開放するクラブ」でありたいという思いがあります。練習拠点やアリーナは単なる施設ではなく、人が集まり新しい文化を生むコミュニティの中心になることを目指しています。
経営者の素顔とリフレッシュの時間
――プライベートでの趣味やリフレッシュ方法はありますか。
仕事と趣味の境目はあまりなく、今はハンドボールの活動そのものがライフワークです。ただ、以前はゴルフを頻繁に楽しんでおり、今でも年に数回は仲間とプレーしています。スポーツを通じて人と関わる時間は、今でも大きなリフレッシュになっています。
また、クラブの活動を通じて、高齢者や障がいを持つ方など、多様な人が一緒にボールを楽しむ機会をつくりたいと思っています。競技の強化だけではなく、誰もが健やかに暮らせる社会を実現するために、スポーツを広げていくことが目標です。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
ハンドボールは日本ではまだマイナーな競技ですが、可能性に満ちています。首都圏に女子チームを立ち上げることは、新しい選択肢や感動を生み出す第一歩です。ぜひ私たちの挑戦に注目し、一緒に伴走して「自分事」にしていただければ嬉しいです。