株式会社武蔵野は、環境衛生事業を中心に、経営コンサルティングやHR支援の分野にも幅広く展開している企業です。今回は、同社でHR支援事業を担当する小嶺淳 取締役に、企業が抱える課題や今後のビジョンについてお話を伺いました。
目次
変革を続ける武蔵野─環境衛生からHR支援まで広がる事業展開
まず、株式会社武蔵野さんの事業内容について教えてください。
株式会社武蔵野は、大きく分けて3つの事業柱を持っています。
1つ目の主力となる環境衛生事業では、ダスキンのフランチャイズ東京第一号加盟店として、東京都西部を中心にサービスを展開し、狭いエリアで高いシェアを取る「スモールテリトリー・ビッグシェア」の戦略を実行しています。この戦略により、地域内でナンバーワンのシェアを誇ります。
2つ目の経営サポート事業では、実証済みのノウハウを提供し、他社にはない「経営の動くショールーム」をコンセプトに、最短距離で成果に繋がるコンサルティングを行っています。特に、現役社長による生々しい経営相談や、労務問題、銀行交渉に関するアドバイスが評価されています。
そして3つ目が、いま私が担当しているHR支援事業です。採用や人事に関する支援を行い、適性検査ツールを活用して企業と人材のマッチング精度を高めています。
小嶺さんが「kimete」というブランドを立ち上げた経緯について教えてください。
「kimete」は、採用や人事支援を一体で提供するサービスです。私がこの事業を始めたのは、大きく2つの理由があります。まず1つ目は、世の中にはミスマッチを起こしている会社が多く存在しているのに気づき、それを解消したいと思ったからです。2つ目は、小山が一線を退いたあとも存続していける会社にするためです。カリスマ的な存在である現代表の小山に現事業は強く影響を受けますが、将来的には小山に頼らずとも存続できる新しい事業基盤が作りたかったんです。それと我々でも社会に貢献できる事業を展開することが必要だと強く感じたからです。
人材選定に関してはどのようなアプローチを取っているのでしょうか?
ただ単に人を集めるのではなく、企業に合う人材を見極めることを重視しています。採用時に適性検査ツールを活用し、見えない部分を可視化することで、ミスマッチを減らすことができます。また、採用後の定着を促進するため、企業文化とのフィットを重要視し、長期的に活躍できる人材を選ぶよう心掛けています。
悩み、もがき、乗り越えた20年のキャリアストーリー
小嶺さんは新卒から株式会社武蔵野でご活躍されているとのことですが、入社のきっかけは何だったのでしょうか?
私は、2003年に新卒で株式会社武蔵野に入社しました。実は、当時武蔵野を選んだ理由は、代表が非常に面白い人だったからです。会社説明会に参加した際に代表と出会い、この人と働けば面白いだろうなと思ったんです。それが入社の決め手でした。
入社してからはどのような部署を経験されましたか?
入社後、まずはダスキンのセールスから始まりました。その後、営業部門で色々と経験を積み、特に大きな転機となったのは、部長としての役職でした。しかし、そこでの経験は決して順風満帆ではありませんでした。部長としての立場から、人員管理や業務の進行において大きな壁にぶつかりました。
小嶺さんが直面した転機や反省はどのようなものでしたか?
私のキャリアの中で大きな転機となったのは、評価面談で更迭評価を受けたことです。
自分では非常に頑張って成果も出していたのに、評価は思いの外厳しくて、当時は非常に落ち込みました。その経験から、自分がどれだけ業績を上げても、人をどう扱っているかが重要だと痛感しました。人をモノのように扱っていた自分に対する戒めのような評価だったと、今では理解しています。
その後、採用業務を任された時、私は人材を採用することの重みを身をもって感じました。採用はただ人を入れることではなく、その人の人生を左右する重要な仕事だということに気づいたのです。採用担当者として、その後の人生にどれだけ影響を与えるかという責任感を持つようになり、その経験を通じて、ミスマッチをなくすことが重要だと強く感じました。
社内文化の進化、自由から信頼へ
社内雰囲気にはどのような特徴がありますか?
非常にわきあいあいとしたものになっています。ここ10年間で、真面目で素直な社員が増えたことが大きな特徴です。特に、新卒社員が仕事に対して真摯に向き合っており、その姿勢が社内全体に良い影響を与えていると思います。
聞いた話によると、20年前、つまり1990年代の社内の雰囲気は、今とはまるで別物だったそうです。かなりカジュアルで自由な空気が流れていたとか。中にはビーチサンダルにハーフパンツという格好で仕事をしていたスタッフもいたそうで、今では想像もつかないほどラフだったと、当時のユニークなカルチャーが今も語り継がれています。
その後、社内はコンプライアンスや経営の見本となるべき姿勢を重視するようになり、昔のようなゴリゴリ感は薄れました。今は、より時代に合わせた柔軟な対応が求められるようになり、お客様にも社内にも良い印象を与えるような環境に変わっています。とはいえ、昔の勢いがなくなったことで、少し物足りなさを感じる部分もあります。
信頼と共感で築くコミュニケーションの新常識
小嶺さんが普段、社内でのコミュニケーションにおいて気をつけていることは何ですか?
時代が変わり、私が若い頃は「勝ち抜く」ことが大切でしたが、今の若い社員は共感、共存、共鳴を重視する傾向が強いです。つまり、みんなで前に進むというスタイルが主流となっています。
そのため、私が気をつけているのは、まず関係性を作ることです。指示やアドバイスをする前に、社員と信頼関係を築くことが非常に重要だと感じています。特に、労害やハラスメントを避けるためには、まずはお互いが気持ちよくコミュニケーションを取れる関係を作らないといけません。
本で読んだことですが、「関係性を作れていない状態で指導すると、見知らぬ人から石を投げられるようなものだ」という言葉がありました。まさにその通りだと実感しています。関係性を作ってからでないと、コミュニケーションが上手くいかないということです。
毎日Facebookに投稿されていますが、アウトプットはお好きですか?
正直言うと、好きでもないし、嫌いでもないですね(笑)。でも、代表みたいにカリスマ性があるわけじゃないから、影響力を持つためにはやらないといけないなと思って続けています。今はXのフォロワーを増やすためにも頑張っていて、ちょっと無理してやっている部分もありますね。
あ、たまに息子の話を挟まないと息苦しさに繋がるかもしれないので、それも気をつけてます(笑)。
お仕事以外で、これにはまってますとか、情熱を持ってやっていることってありますか?
意外と特別な趣味ってないんですよね(笑)。ただ、娘が18歳で専門学校に通い始め、息子が4歳なんです。最近は息子と一緒に過ごす時間を大事にしていて、彼がやりたいことにはなるべく付き合うようにしています。例えば、息子が電車が好きなので、一緒に乗りに行ったり、そういうのをやってます。親として、ちょっとした実験みたいな感じですね。
プライベートでは特に何かに夢中ってわけじゃないですが、仕事が楽しいので、仕事に集中してるって感じです。仕事といっても、家族との時間も大事にしながらやっている感じですね。
社会に役立つサービスを追求していきたい
今後、どのように事業を伸ばしていきたいとお考えですか?また、社員の成長についてもお話しいただけますか?
うちの会社は今年で62年目を迎えますが、100年続く企業を目指しています。私がやりたいのは、採用や人事、そして最近力を入れているSaaS型の人材アセスメントツールを広めることです。このツールを通じて、社会に役立つサービスを提供したいと思っています。
また、面接をなくすという夢もあります。日本や韓国の就職活動は競争社会で、無理して背伸びして入ることが多いですが、それでは長続きしません。私たちは面接不要で採用できるツールを作っているので、それを広めて、自分に合った職場で活躍できる社会を作りたいんです。
さらに、エミアブル(協調派)な社員たちが増えてきているので、その子たちが活躍できる環境を整えたいですね。将来的には教育分野にも挑戦して、より良い社会を作っていきたいと思っています。
最後に、この記事を見ている方々へのメッセージをお願いできますか?
やっぱり、夢を描くことが大切だと思います。夢が叶うかどうかは別として、まずは自分のゴールを決めることがすごく重要です。ゴールを決めると、必ずその目標に向かって動き出すものです。世の中で変革を起こすような人や歴史を作る人って、みんな自分なりのゴール設計をしていますから。誰でも自分のゴールをきちんと決めて、それに向かって進んでいくことが大事だと思いますよ。
