D2Cブランド「シャントリボディ」を筆頭に、“YouTube以上、テレビ未満”の映像制作事業を展開する株式会社TELESA。注目を集める若手経営者・車谷セナ氏は、その独自のビジネス観と行動力で次々と成果を積み上げてきました。
本インタビューでは、事業にかける想いや立ち上げの背景、社員との向き合い方から経営者としての価値観、そして彼自身の原点や日々の思考法まで、余すことなくお届けします。
目次
D2Cと映像制作、2本柱で挑むブランド戦略
現在の事業内容について改めて教えてください。
はい、今は主に2つの事業を展開しています。
ひとつは化粧品、具体的にはヘアケア&ボディケア領域でのD2Cです。
商品としては「シャントリボディ」という、シャンプー・トリートメント・ボディソープ・フェイスウォッシュを一体化したオールインワンプロダクトを開発・販売しています。
もうひとつが映像制作の事業です。
元々は自社プロダクトを売るために広告費をかけず、自分たちの得意なYouTube制作を活かして自社マーケティングをしていたのですが、そのクオリティや反響が評価されて、外部からの依頼がくるようになり、事業としても独立するようになりました。
シャントリボディの特徴や強みについて教えてください。
元々ヘアケア市場はレッドオーシャンだと思っていたので、最初からかなり厳しい戦いになると想定していました。
ただ、「シャントリボディ」という商品名やコンセプトを世の中に広めるには、Nontitleのような番組で自分自身のストーリーと紐づけて広告以上の影響力を出せることが大きかったですね。
ターゲットはタイパ(タイムパフォーマンス)意識の高いビジネスパーソンを想定していましたが、実際に発売してみると、ワンオペ主婦の方にもかなり刺さっていて。
今ではユーザーの約40〜50%が女性です。想定外ではあったけれど、うれしい誤算でしたね。
商品開発の背景には、どのような課題意識がありましたか?
現代って本当にみんな忙しいじゃないですか。YouTubeとかNetflix、SNSもあってコンテンツの消費すらままならないくらい。そんな中で、日々の入浴や身支度を少しでも効率化できたらという思いがありました。
シャントリボディという言葉をいずれは一般名詞にしたい。それくらい当たり前に使われる存在にして、他社から類似品が出てもシャントリボディはTELESAでしょって認識されるようにしていきたいんです。
「経営者としての原点と、今も変わらぬ信念」
セナさんが経営者を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
実は、小学4年生の頃から「将来は経営者になる」と決めていました。
理由として一番大きかったのは、両親が経営者だったこと。家庭環境として、自分で会社をやるという選択肢が当たり前にあったんです。
ただ、そこからずっと「会社をやりたい」と思い続けていたわけではなく、もう少し大きな目的──つまり経済的な余裕を得て、心にゆとりを持ちたいという感覚のほうが先にあって。
そのための手段として、経営者になるのが一番早いんじゃないか、と自然に考えるようになりました。
経営者として大切にしている価値観やルールがあれば教えてください。
自分の中では目的思考が一番大事ですね。
会社として「年商100億を目指す」と決めたら、その目標にとってプラスかどうかで判断する。誰かに気を遣って言うべきことを言わなかったせいで目標が達成できないなら、それは意味がない。迷ったときは常に「これは目的に近づくか?」で意思決定しています。
それともうひとつ、「現場に出る」ことも意識しています。
経営者になると、どこかで現場を離れることがステータスみたいな風潮もありますが、僕は真逆。
どれだけ忙しくても、自分の足で現場に立つこと、社員と同じ空気を吸うことを大事にしています。楽はしない。むしろ経営者こそ一番泥臭くあるべきだと思っています。
自分自身の分析や成長に向けて、特に取り組んでいることはありますか?
かなり自己分析に時間を使ってます。
紙とペンを使って、自分の感情や思考をひたすら書き出すんです。
例えば、ちょっとイライラしたこととか、反省したこととか、ネガティブな感情も包み隠さず全部書く。そうすることで、「これは必要な悩みか?」「本当に目的に必要な感情か?」と客観視できるようになるんです。
やってみるとわかるんですけど、「あ、これ毎回引っかかってるな」って共通点が見えてくる。その瞬間に、「じゃあどう対処すればいいか」も整理できるんですよね。
感情にフタをしないで、ちゃんと見える化してあげる。それだけでメンタルもパフォーマンスも全然変わります。
フラットだけどストレートに─組織と人に向き合う姿勢
現在の組織体制について教えてください。
今、社内のメンバーは17名ほどです。Nontitleで共に挑んだメンバーたちは、今でもそのまま幹部として在籍してくれています。役職が変わったり、立場が変わったりしても、彼らとの関係性や信頼は全く変わっていないですね。
ただ、組織としてはまだまだ発展途上。
全員が同じ時間に集まることは月に数回、しかも数時間程度しかなくて、常に誰かが現場に出ている状態。だからこそ信頼して任せられるチームづくりをとても意識しています。
社員とのコミュニケーションで大切にしていることはありますか?
まず、幹部に対してはより厳しくストレートに伝えます。でもそれ以外は、基本的にすごくフラット。というか、誰に対してもリスペクトを持って接することを一番大切にしています。
相手の優れているところ、自分より勝っている部分をしっかり言語化して、意識的に尊重するようにしています。それって社員に限らず、外部の人でも同じで、例えば「この人、食べるの早いな」みたいな些細なことでも、ちゃんと見つけて敬意を持つ。
そうやって人を見る目を養うのは、自分にとってすごく大事な軸ですね。
組織全体の雰囲気はどんな感じでしょうか?
かなり自主性重視だと思います。現場での行動量も多いので、いちいち指示を出すより、それぞれの判断に委ねる部分が多いですね。もちろん、方針やビジョンは伝えますが、それをどう実行するかは一人ひとりに委ねています。
ただそのぶん、会社としての方向性を全社で共有する場はまだ足りていないと感じていて、そこは今後の課題です。頭の中ではちゃんと整理してるつもりでも、「みんな動画見てるし伝わってるでしょ」と思ってしまうこともあって(笑)。
もっと意識的に、共有の時間を持つようにしたいですね。
シャントリボディを日常語に─社会に必要とされるブランドへ
今後の事業展開について、どのようなビジョンを描いていますか?
まずシャントリボディについては、「一般名称化」を本気で目指しています。
例えば「バンドエイド」って、実は商品名だけど、もう絆創膏の代名詞として使われてますよね。それと同じように、「シャントリボディ=オールインワンボディケア」という言葉が日常的に使われるような、そんな文化を作りたいと思ってるんです。
そのためには、ただ流通を増やすだけじゃ足りない。意味のある普及が必要で、コンセプトがちゃんと伝わる形で全国展開して、20%以上の市場シェアを取るのが大きな目標です。
映像事業については、今後どのように展開していきたいですか?
今掲げているのが「YouTube以上、テレビ未満」のクオリティ。
つまり、スマホで見るにはもったいない、でも地上波で放送するにはコストが合わない──その間を狙った映像制作です。特に、ドキュメンタリーに特化してるのが強みで、「心が動くものを、低コストでつくる」という部分にこだわっています。
今後も、誰かの生き様や本気のチャレンジを映像として残しながら、「感動を作る」ことを事業の柱にしていきたいですね。
プロダクトやブランドと違って、映像って記憶に残る熱量みたいなものを持てる。そこにこそ価値があると思ってます。
経営者として、目指したい会社のかたちはありますか?
僕の中では「社会的意義のあるブランドをつくる」っていうのが、経営者としての使命だと思ってます。
いわゆるコンサル的な仕事も否定はしませんが、「それって本当に誰かの役に立ってるのか?」って、見えにくいじゃないですか。
でもユニクロみたいに、誰でも知ってて、日常の中で必要とされてて、なくなったら困る──そんな存在にこそ感謝されるブランドの本質があると思うんです。
シャントリボディを、そんなふうになくてはならない存在にしていきたいですね。

「努力は裏切らない」─自分を変えた原体験と、挑戦者へのエール
過去に印象的だった「自己成長の原体験」があれば教えてください。
中学2年生のときに、「ルックス・知能・人間力」の3つを徹底的に磨こうと決めたんです。
それまではほんとに何も頑張ってこなかったし、勉強もできない、見た目も気にしない、他人との関わりも浅い──みたいな人生だったんですけど、「このままじゃマズい」と思って、とにかく寝ないで努力しました。
勉強も、初めて机に向かって必死にやったし、髪型や服装も変えて、周りへの接し方も全部見直した。
結果として、すぐに成果が出たんですよね。それで、「努力って裏切らないんだ」「人って変われるんだ」って、人生で初めて実感できた。それが、今の価値観のベースになってます。
最後に、これから挑戦したいと思っている若手経営者や起業家へのメッセージをお願いします。
僕が思うに、結局寝ないでやるかどうかなんですよ。
本当に優秀な人って世の中にいくらでもいて、正直、自分より頭のいい人なんて腐るほどいる。でも、その中で勝とうと思ったら、どれだけ時間をかけられるか根性を出せるかに尽きると思ってます。
もちろん本を読んだり、効率を求めるのも大事だけど、それはあくまでも補助的なもの。まずは、死ぬ気でやること。その上で結果が出るからこそ、初めて意味がある。
経営者としてこれから何かに挑戦したいと思っているなら、とにかく根性と行動量を大事にしてほしい。それだけは、誰にも負けたくない自分の信念です。