Amazonという巨大なプラットフォームで、メーカーの価値を守りながら商品を届けることに挑む個人事業主・小藥俊太氏。単なる価格競争に巻き込まれるのではなく、メーカーの強みを正しく伝え、ブランドを育てるパートナーとして事業を展開しています。これまでのキャリアの試行錯誤や祖父から受けた影響を糧に、現在は販路の拡大と将来の新事業を見据えて前進を続けています。本記事では、小藥氏の理念や取り組み、そして未来に向けた思いを伺いました。
目次
メーカーの価値を守るAmazon事業の取り組み
まずは、現在の事業内容について教えてください。
現在はAmazonを中心に、メーカーから仕入れた商品を販売する事業を展開しています。メーカー様に直接営業を行い、正規ルートで商品を仕入れて販売するのが基本です。ただ単に仕入れて出品するだけではなく、商品のページを一から作成し、より魅力的に見えるように工夫しているのが大きな特徴です。Amazonには商品ごとにページが存在しますが、私はそこにメーカーのこだわりや強みを盛り込み、お客様に商品の魅力が正しく伝わるようなページづくりを大切にしています。
単なる販売にとどまらず、メーカーへの貢献を意識されているのですね。
そうですね。Amazonでは同じ商品を複数の販売者が扱うことが多く、その結果、価格競争に陥りやすい面があります。片方が値段を下げれば、もう片方も下げざるを得ない。その繰り返しで、最終的にはメーカーの商品価値が損なわれてしまいます。私はその状況を避けるため、メーカーと直接契約を結び、基本的には自分一人で販売するようにしています。そうすることで価格が守られ、メーカー様の商品が「安売りされるもの」ではなく「価値のあるもの」としてお客様に届くようになります。
価格を守る姿勢は、メーカー様との信頼にも影響すると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
はい。メーカー様にとっても「商品のブランド価値を維持したい」という思いは非常に強いです。私はその思いに応えるため、価格を守りながら、商品の強みや魅力を最大限に伝える商品ページを作り込んでいます。単に販売数を追うのではなく、「メーカーと顧客双方にとって価値のある販売」を目指しているのです。
試行錯誤のキャリアと経営者への原点
これまでのキャリアや、経営者になられたきっかけについて教えてください。
私は学生時代から、どちらかといえば「組織に染まるよりも、自分らしく働きたい」と思うタイプでした。幼少期からの経験もあり、大学時代には就職活動よりも「どうすれば一人で自立して生きていけるか」という視点で模索していました。投資やアフィリエイト、プログラミングなど、さまざまな挑戦をしてきましたが、いずれも大きな成果にはつながりませんでした。その中で出会ったのが、現在の事業につながる「メーカー仕入れ販売」の世界です。
なぜこの事業なら続けられると感じたのでしょうか。
他の分野はクリエイティブな要素が強く、デザインや表現力が求められることが多かったのですが、私は必ずしもそこに強みがあるタイプではありませんでした。一方でメーカー仕入れのビジネスは、自分がゼロから商品を生み出すのではなく、メーカー様が作った素晴らしい商品をお客様に届ける仕組みづくりが中心です。つまり、既に価値のある商品をどう正しく伝えるかに力を注ぐ形になります。これなら自分の特性に合っていると感じ、この道に進む決心をしました。
経営者になること自体は、もともと考えていたのでしょうか。
漠然と「経営」というものに憧れはありました。実は私の祖父が建設会社を経営しており、幼少期に従業員や家族を大切にする姿を見て「経営者ってかっこいいな」と思った記憶があります。祖父が早くに他界したため直接学んだことは少ないですが、その姿は強く印象に残っています。さらに、現代ではYouTubeなどで多くの経営者の話を聞くことができるので、そうした発信からも刺激を受け、自分も挑戦してみたいという思いが少しずつ形になっていきました。
ご自身では「一般的なキャリアには合わないのでは」と感じていた時期もあったそうですね。
はい。ただそれをマイナスに捉えることはありませんでした。むしろ「自分のやり方で進んでいく方が合っている」と早い段階で気づけたことが、経営の道に踏み出すきっかけになりました。結果として、その気づきが今の事業を選ぶ大きな原動力になったと思います。
メーカーとの信頼関係と未来を見据えた販路拡大
仕事をされる上で、大切にしていることはありますか。
私が何よりも意識しているのは、メーカー様との信頼関係です。この事業は仕入れ先であるメーカー様の存在なしには成り立ちません。だからこそ「とにかく仲良くなる」という姿勢を大事にしています。形式的な取引ではなく、少しでもメーカー様のお役に立ちたいという気持ちで接することで、信頼関係は自然と深まっていきます。結果として、その思いが商品の魅力をお客様に届ける力にもつながっているのだと思います。
信頼を築くために、どのような工夫をされているのでしょうか。
まずはメーカー様の強みやこだわりを理解し、それをきちんと販売ページや販売戦略に反映するよう心がけています。メーカー様から見ても「自分たちの商品を大切に扱ってくれている」と感じていただけるようにすることが、最も重要です。数字を追うだけではなく、メーカー様と「一緒にブランドを育てる」という意識を共有することが大切だと思っています。
Amazonから世界へ─販路拡大と新事業への展望
今後、どのように事業を展開していきたいとお考えですか。
現在は日本のAmazonアカウントを通じて販売していますが、今後は海外アカウントを開設し、日本メーカーの商品を世界に届けたいと考えています。Amazonは海外にも強い販売網を持っており、日本の品質やこだわりを持つ商品は海外の方からも評価されやすい。そうした市場に挑戦することで、メーカー様にとって新しいチャンスを広げられるのではないかと期待しています。
また、国内においても楽天市場やYahoo!ショッピングなど、別の販路へ展開していきたいと考えています。複数のチャネルを活用することで、より多くのお客様にメーカー様の商品を知っていただける機会を増やし、売上面だけでなくブランド価値の向上にもつなげたいと思っています。
将来的に、EC以外の分野にも挑戦したいというお気持ちはありますか。
はい。まだ構想段階ではありますが、不動産関連の事業にも将来的に挑戦してみたいと考えています。もちろん不動産は大きな資本が必要な分野なので、すぐに取り組めるものではありません。だからこそ、まずはメーカー仕入れ事業を安定させ、資金や経験をしっかり蓄積していくことが重要だと考えています。今のビジネスを基盤にしながら、その先の挑戦を見据えて準備を進めたいと思っています。
新たな挑戦を描くことは、現在の事業にもプラスに働きそうですね。
そうですね。未来を意識していると、今取り組んでいる事業に対しても「どう積み上げていくか」という視点が強まります。メーカー仕入れという事業をさらに進化させつつ、その経験を次の挑戦につなげたい。自分自身の成長とともに、より大きな社会的価値を提供できる事業へと広げていきたいと考えています。
サイクリングで得るリフレッシュと祖父からの学び
経営以外で、今没頭されていることやリフレッシュ方法はありますか。
たまにサイクリングやランニングをして体を動かしています。普段はどちらかというとインドア派なのですが、外に出て風を感じると気分が切り替わりますし、心身ともに良い刺激になります。新しい景色や環境に触れることで、思いがけない発想が浮かぶこともあり、結果的に仕事にもプラスになると感じています。
体を動かすことが新しい刺激にもなっているのですね。
はい。長時間デスクワークを続けているとどうしても視野が狭くなりがちですが、外に出て走ったり自転車に乗ったりすると、自然と気持ちが整理されます。体を動かすのはもちろん健康にもいいですが、私にとっては「頭をリセットして新しい視点を得る時間」でもあります。
これまでの人生で、特に影響を受けた人物はいらっしゃいますか。
一番大きな存在は、幼い頃に他界してしまった祖父です。祖父は建設会社を経営しており、社員や家族をとても大切にしていました。その姿を小さいながらに見ていて「経営者とは、人を大事にできる存在なんだ」と感じていました。祖父が示してくれた背中は、私が経営を志す上での大きな原点ですし、将来は祖父のように周囲を大切にできる人間になりたいと強く思っています。
その思いを胸に、これからも事業を成長させながら、自分自身も人として磨き続けていきたいです。リフレッシュの時間から得た気づきや学びを糧に、未来へと挑戦を重ねていくつもりです。

