心合同会社の代表・小山直樹氏は、ドローン事業、スマート農業事業、そしてエステ事業という一見かけ離れた三本柱を展開しています。背景には、幼少期からの「操ること」への情熱や、妻の経験を活かした美容への想いがありました。資金調達の壁を乗り越え、人との縁を大切に育てながら歩んできた小山さんの経営の原点と、地域に還元する未来へのビジョンについて伺いました。
目次
異業種をつなぐ三本柱の事業展開
現在の事業内容とその特徴について教えてください。
はい、現在は大きく分けて3つの事業を展開しています。まずはドローン事業です。国家資格でもあるドローン免許の終了審査員(講師)や農薬散布に特化したカリキュラムの講習講師をはじめ、農薬散布や映像関係の空撮や上空からの動画、3D航空測量などを手がけ、農業支援からクリエイティブ分野まで幅広く対応しています。次にスマート農業事業で、CHCNAVという自動操舵キットの代理店を務め、効率的な農業をサポートしています。そして3つ目がエステ事業です。身体の土台づくりを基本とし、最新機器を使用したバストケアや瘦身、脱毛や脂肪冷却などのメニューを揃えたサロンを運営し、お客様の「健康と美」に寄り添ったサービスを提供しています。
農業やドローンと美容のサロン経営は、ジャンルがまったく違いますよね。なぜそのように幅広い事業に取り組まれたのでしょうか。
きっかけは、もともと私がラジコン好きだったことです。ヘリコプターやドローンに長年興味を持っており、その延長で事業化しました。一方、エステは妻の存在が大きいです。妻は約20年間ホステス業界に携わり、美を追求する姿勢を持ち続けていました。その経験を活かし、女性の美を支える場をつくろうと考え、妻を店長に据えてスタートしました。私は経営に専念し、妻が現場をリードする形で運営しています。
ご夫婦それぞれの強みを活かしているのですね。
そうですね。私は経営に集中し、妻は現場でお客様と向き合う。まったく畑違いに見えるかもしれませんが、それぞれの想いや経験を事業に反映させることで、新しい価値をつくれていると感じています。
異なるジャンルを組み合わせることは一見リスクに見えますが、実際には事業の多角化につながり、会社としての安定性を高める要因にもなっています。ドローンや農業分野のシーズンオフにも、エステ事業が収益を下支えする形になっており、事業間のバランスが自然に取れている点は大きな強みだと考えています。
操る楽しさから経営の道へ―小山さんのキャリアと挑戦
これまでのキャリアについて教えてください。
もともとはクレーン業界に身を置き、建設会社でクレーンのオペレーターとして13年ほど勤めていました。大きな橋桁を吊り上げるような現場も経験し、ラジコンや重機など「大きなものを操る」ことが好きだった私にとって、とてもやりがいのある仕事でした。
ただ、体を壊して入院したことをきっかけに、このまま勤め人として続けていくことに不安を感じました。収入も安定せず、「このままでは将来が見えない」と考えるようになったんです。そんなとき、仲間が農薬散布用のラジコンヘリを扱っていて、その話を聞いたのが転機でした。ヘリは高額でしたが、「それならドローンでやってみたら面白いんじゃないか」という流れで、ドローンでの農薬散布事業を始めることになったんです。
もともと「経営者になろう」と考えていたのですか?
高校生の頃から「いつかは独立したい」という漠然とした思いを持っていました。ただ、具体的に何をするかが見えずに30歳を迎えてしまった感じでしたね。そんな中でドローンに出会い、「これなら自分の好きなことを事業にできる」と確信しました。そこから自然と経営の道に踏み出した形です。
実際に経営を始めてみて、大変だったことはありますか。
一番大きな壁は資金調達でした。ドローンや農薬散布に必要な設備を整えるために融資を受けようとしましたが、最初はどこも難色を示しました。銀行や政策金融公庫に相談しても「農業分野は対象外」と言われ、JAバンクに行っても「農地を持っていないから農業従事者ではないので」と判断される。スタートの時点で何度も断られたんです。
ただ、粘り強く相談を続ける中で、ある担当者が「ドローン事業は新しいサービス業としての可能性がある」と理解してくれました。そのおかげでようやく融資が実現し、事業をスタートできました。今思えば、この経験が「諦めずに可能性を伝え続ける大切さ」を教えてくれたと思います。この時の苦労があったからこそ、現在はどのような事業であっても「必ず理解してくれる人がいる」という信念を持って進めるようになりました。
人とのつながりを大切に―心を軸にした組織運営
社員や取引先、お客様など、多くの方と関わる中で、コミュニケーションで意識していることはありますか。
会社の名前にも「心」という言葉を入れているように、人と人とのつながりを大切にすることを一番のモットーにしています。人は一人では生きていけないものですから、助け合いや信頼関係をベースに仕事を進めています。社名自体も、その思いをそのまま表したものなんです。
「人とのつながりを大切にする」という姿勢は、どのような経験から生まれたのでしょうか。
もともと私は人付き合いが好きな性格で、若い頃から「巡り合わせがあるね」と親にもよく言われていました。人との関わりを通じて助けられることも多く、自分が元気であればそのエネルギーを周囲に分け与えたいという気持ちを自然と持ってきました。
地元にはお笑いコンビ「パックンマックン」の日本人メンバー『まっくん』がいて、近所の先輩でもあるんです。その姿を見ながら「人を笑わせる」「人を元気にする」という生き方に強く影響を受けました。そうした経験が、人とのつながりを大事にする自分の価値観につながっていると思います。
実際に「巡り合わせ」を感じる機会も多いですか。
多いですね。私はバイクが趣味で、Facebook上で約2000人規模のツーリングクラブを運営していたこともあります。そこでは経営者や会社を率いる方々とも自然に知り合うことができました。趣味を通じて広がった人とのネットワークが、今の仕事や経営にも活きています。やはり「こ縁」は財産だと実感しています。
人とのつながりを意識した組織運営は、社員のモチベーションにも直結しています。お互いが支え合い、成果を分かち合える雰囲気をつくることで、現場の一体感が増し、顧客満足度の向上にもつながっているのです。
地域と共に未来を描く―持続可能な成長への挑戦
今後の事業展開について、どのようにお考えですか。
まずは現在の三本柱の事業を着実に進めながら、会社としての基盤をより安定させていきたいと考えています。返済などの課題をクリアし、資金に余裕ができれば、将来的には施設への寄付や社会への還元に取り組みたいと思っています。売上の一部を継続的に寄付できるような仕組みをつくり、地域に恩返しをしていきたいですね。
社員体制や組織づくりについては、どのようにお考えでしょうか。
今はまだ私自身も現場で動くことが多いのですが、今後は社員を増やし、現場を任せられる体制を整えていきたいと思っています。スタッフが主体的に活躍できるようになれば、私は新しい取り組みに挑戦したり、会社全体を俯瞰して動けるようになります。効率的に進めることで、事業の幅もさらに広がるはずです。
すでに営業の一部を外部に依頼されたり、新しい体制づくりも進められているんですね。
そうですね。私一人で抱えるのではなく、信頼できる人に任せていくことが成長の鍵だと思っています。事業が安定すれば、社員や地域社会にももっと還元できる。これからも「人とのつながり」を軸にしながら、未来へ向けて歩んでいきたいです。
「会社を大きくする」ことだけでなく、「地域に何を残せるか」を常に考えながら経営にあたっています。将来的には教育や地域イベントの支援など、若い世代に夢を与える活動にも挑戦していきたいと思っています。
趣味と仲間がくれるエネルギー―プライベートの過ごし方
経営以外に没頭されている趣味や、リフレッシュの方法について教えてください。
趣味は大きく二つあります。ひとつはラジコンヘリを飛ばすこと。そしてもうひとつがハーレーでのツーリングです。もともと乗り物が大好きで、その延長線上で今も楽しんでいます。
ハーレーに乗る魅力はどんなところでしょうか。
やっぱり自己満足だと思いますね。バイクは自由にカスタマイズできますし、乗っているだけで自分だけの世界に浸れる特別な時間です。今は特に、幼馴染と同じ車種のハーレーに乗ってツーリングに出かけるのが一番楽しいですね。
幼馴染の方とのエピソード、とても素敵ですね。
そうなんです。その幼馴染とは保育園からの付き合いで、もう40年近くの関係になります。実は彼、10年ほど前に不慮の事故で右足を失ってしまいました。それでも工夫を重ねて、ブレーキ操作を工夫しながらハーレーに乗り続けています。その姿を見ると「自分も頑張らなきゃ」と強い刺激をもらえるんです。
小さい頃から家も近所で、歩いて行ける距離に住んでいました。そんな長い付き合いの中で、今も同じ趣味を共有できるのは本当に幸せなことだと思っています。趣味を通じてリフレッシュできるだけでなく、大切な人との時間が自分にとっての大きなエネルギー源になっています。
経営と趣味、一見相反するように見える両立ですが、実際には趣味の時間が仕事に新しい発想をもたらすことも多いです。ツーリング中に出会う人や景色が新しい事業のアイデアにつながることもあり、生活すべてが相互に影響し合っていると感じています。
これからも「好きなこと」と「人とのご縁」を大切にしながら、地域社会と共に成長し続ける企業づくりに挑んでいきたいです。

