Community Contents Japan
(2025年12月法人予定 新会社名「株式会社SKP企画」)代表 万年芳昭氏
Community Contents Japanを率いる万年芳昭氏は、「社会問題をビジネスの力で解決する」という理念を胸に事業を展開しています。きっかけは一冊の本との出会いでした。ソーシャルビジネスの発想に感銘を受け、単なる商品やサービスの提供にとどまらず、市場そのものを創り出す取り組みへと歩みを進めています。阪急電鉄を築いた小林一三が宝塚歌劇団を創設したように、文化や需要を生み出すことで社会の仕組みを変えていく――そのビジョンについて伺いました。
目次
ソーシャルビジネスから生まれた理念とビジョン
現在の事業の特徴や理念について教えてください。
私はもともと「ソーシャルビジネス」という考え方に強い関心を持っていました。きっかけは一冊の本との出会いです。そこには「社会問題はビジネスで解決できる」と書かれており、タバコ農家の健康被害を解消するためにハーブ栽培を推進し、さらにハーブティー市場を創り出した事例が紹介されていました。単なる生産の転換にとどまらず、市場そのものを生み出して課題を解決する。その発想が私の原点となりました。
現代のビジネスで重視される「カスタマーサクセス」も、顧客の課題を解決するために需要を作り出す点で本質的には同じです。私はそこにこそ、これからのビジネスの可能性があると考えています。
具体的には、どのように事業に取り入れているのですか。
神戸で活動する中で、阪急電鉄を築いた小林一三氏の事例を学びました。鉄道利用を促すために宝塚歌劇団や遊園地を創設し、人々が楽しむ場を通じて需要を拡大したのです。社会課題の解決のために新しい文化や市場を生み出す。この発想をCommunity Contents Japanのビジョンとして掲げています。
事業を始めた当初から順調だったわけではなかったと思います。
経営は自転車に乗るようなもので、最初は不安定ですが、続けるうちにバランスが取れるようになります。私も知識だけではなく、実際に挑戦することで多くを学びました。客単価やビジネスモデルの構築など課題はありましたが、その過程で経営者としての自信や人間的成長を得られました。
今も発展途上ですが、先輩経営者や多くの方々の支えを受けながら一歩ずつ進んでいます。理念に共感してくださる方々も増え、事業を大きく育てていける手ごたえを感じています。
多様なキャリアと経験から築かれた経営者としての原点
これまでのキャリアについて教えてください。
大学卒業後、相場関連の会社に就職しましたが体調を崩し、社会人としての歩みを一度止めざるを得ませんでした。その後、アルバイトや正社員を経て模索する中、障害者雇用の枠で有馬温泉の旅館に勤務したことが転機になりました。地域活性化に取り組む金井社長のもとで町おこし事業に関わり、「地域のために事業を行う」という姿勢に強く惹かれました。利益だけでなく地域社会を考える経営に触れた経験は、今も私の基盤になっています。(現在は回復、通院・服薬なし、障がい者手帳返納)
経営者を志すようになったきっかけは何だったのでしょうか。
姉が教員から神戸の大手ホテルへ転職し、人事やサービス品質の向上に携わるようになったことが、一つの転機でした。私自身もその取り組みを裏方として支える中で、経営やカイゼンの考え方を実践的に学んでいきました。
他社の成功事例を研究して重要成功要因を分析し、上手くいっている会社がいかにお客様目線で考えているかを痛感しました。また、現場100回などの言葉を知り、改善プロセスを構築する上でも現場の実情をしっかり把握する必要性を学びました。そうした積み重ねの結果、ホテルは経営品質アワードを受賞するなど、一定の成果を上げることができました。
この経験を通じて、「組織をより良くするには何が必要か」「人が主体的に動くための仕組みとは何か」を深く考えるようになり、次第に“経営そのもの”に興味を持つようになったのです。
これまでの経験の中で特に印象に残っていることは何でしょうか。
強く心に残っているのは、組織がうまく機能していない現場を経験したことです。意欲はあっても改革が進まず皆が苦しんでいた姿を前に、若い自分には改善する力がなく無力さを痛感しました。しかしその経験から「組織は熱意だけでは動かない」「現実を冷静に捉え、正しい判断を下す勇気が必要だ」と学びました。
成功も失敗も含めてすべての経験が、今の経営観につながっています。組織の理想と現実のギャップをどう埋めるか。それが私の原点であり、常に意識しているテーマです。

「誠実」と「自律」を重んじる組織づくり
お仕事をする上で、大切にされている価値観や譲れないポイントはありますか。
最も大切にしているのは「誠実であること」です。どんなに難しい状況に置かれても、不誠実なやり方で相手に返すのではなく、自分の軸を崩さない。それが結果的に信頼を生み、長期的に見れば必ずプラスにつながると信じています。
過去に体調を崩して仕事から離れていた時期もありました。その経験があるからこそ、同じように困難な状況にいる人をどう支えられるか、上に立つ人間として常に考えるようになりました。
組織運営においては、どのようなリーダー像を目指しているのでしょうか。
自分の理想は「シグマ型リーダー」です。いわゆるアルファ型リーダーはカリスマ性で人を引きつけますが、シグマ型リーダーのもとでは多くの人が自ら輝き、ヒーローやヒロインとして活躍することができます。
私は、組織の中心に自分だけが立つのではなく、一人ひとりが自主性を発揮できる場をつくりたいと思っています。個々が活躍することで全体の力が引き上げられる、そんな組織を目指しています。
日々の業務で意識している具体的な取り組みはありますか。
基本的なことですが「報・連・相(報告・連絡・相談)」を徹底し、特に「遅滞なく伝える」という姿勢を重視しています。できないことがあっても、早く共有できれば対策を立てられる。逆に遅れることで問題が大きくなることもあるので、「タイムリーな共有」は非常に大切です。
部下やビジネスパートナーに対しても、誠実に状況を伝え合い、課題に一緒に向き合うことを意識しています。無駄な悩みを抱え込むのではなく、オープンに相談しながら成果を上げていく。そうしたコミュニケーションの積み重ねが、組織を健全に保ち、前進させる力になると考えています。
未来を見据えた挑戦―「中流階級を支える社会」をつくるために
今後の事業展開や目指す未来について教えてください。
現在の社会は物価上昇が続き、中小企業の経営環境は厳しさを増しています。最低賃金の引き上げは従業員にとっては良い一方で、収益性の低いビジネスでは継続が難しくなります。だからこそ私は「従業員が頑張った分だけ報われる仕組み」をつくることが経営者の責任だと考えています。収益性の高いビジネスモデルを築き、会社の業績と社員の安定を両立させなければなりません。今後はそうした仕組みを持つ企業を増やすことが、中小企業全体の成長につながると信じています。
社員や社会に対して、どのような仕組みをつくりたいと考えていますか。
私が目指すのは「特別なスキルがなくても真面目に努力すれば安定した生活を得られる社会」です。織田信長が「長槍」や「鉄砲三段撃ち」で農民上がりの兵を戦力に変えたように、多くの人が仕組みの中で力を発揮できる環境を整えることが重要です。超一流でなくても努力すれば報われる仕組みを整えることで、中流階級を支え、社会の健全さを守れると考えています。
そのために、経営者としてどのように歩んでいきたいですか。
私はまだ実績を積み重ねている途中ですが、国の政策や支援制度も活用しながら会社を成長させたいと思っています。現在は個人事業として活動していますが、2025年12月には法人化を予定しており、組織としての基盤づくりを本格的に進めていく段階です。経営者自身が収益性ある事業を構築し、その成果を社員に還元することで、一人ひとりが安心して家庭を築き、未来に希望を持てるようにする。「努力すれば報われる」社会を支えることが、私のこれからの使命です。
人とのつながりと読書がもたらすリフレッシュ
経営以外で没頭していることや、リフレッシュ方法について教えてください。
最近は、さまざまなコミュニティに顔を出すことを楽しみにしています。経営者仲間に限らず、自分と相性の合う人が集まる場に参加し、そこで自然体でコミュニケーションを取る。これがとても心地よく、私にとって大切な時間になっています。
以前は「人付き合いを我慢してでも広げなければならない」と思っていましたが、独立してからは考え方が変わりました。会社員時代と違い、今は「合わない人と無理に付き合う必要はない」と割り切れるようになったのです。独立の目的の一つは、そうした人間関係のストレスを減らすことでもありました。だからこそ今は、自分と相性の良い人と楽しく過ごす時間を大切にしています。
また、昔から好きだった読書も、再び取り入れたいと思っています。忙しさから一時的に遠ざかっていましたが、妻から「最近読んでいないね」と声をかけられることもあり、改めて本を手に取る時間をつくろうとしています。お茶を飲みながら本の世界に没頭する――そんなひとときが、私にとって心を落ち着かせる最高のリフレッシュ方法です。
これからは人との交流や読書を通じて得た気づきを、経営にも活かしながら新しい挑戦へとつなげていきたいと思います。

