“食”と“土”の再生を目指して――REBIRTH食育研究所が伝える循環の価値

合同会社REBIRTH食育研究所 代表 村井康人氏

合同会社REBIRTH食育研究所は、「健康な身体は健康な食事から。健康な食事は健康な作物から。健康な作物は健康な土から」という理念で食育に関する講演活動と、独自の発酵液肥「MOO&PLANT」の販売を軸に事業を展開しています。講演活動を通じて食の大切さを伝える一方で、3年以上熟成発酵させた天然液肥の開発・販売にも取り組んでいます。

医療現場から予防医学へと歩んできた経験は、農業や土壌環境へと広がり、現在では「地球環境を次世代へ残すための取り組み」として事業を続けています。本記事では、代表の村井康人氏に、事業の成り立ちや活動に込めた想い、今後の展望について伺いました。

食育と天然液肥――二つの柱で取り組む事業

――現在の事業内容について教えてください。

現在は二つの柱で活動しています。一つは食育に関する講演やセミナー活動です。学校や幼稚園、保護者の方々、一般の方向けに、食育に関する啓発活動を行っています。もう一つは、有機液肥「MOO&PLANT」の販売です。3年以上熟成発酵させて無臭化した液肥で、販売開始から15年目になります。教育啓発と商品の販売、この二つを軸に事業を展開しています。

――事業を始めた背景や経緯について教えてください。

もともとは環境問題に強い関心があり、その分野の大学へ進学しました。その後、医療機関の生化学検査に関わる業務に携わりましたが、生活習慣病を患う患者さんの血液と向き合う中で、医療だけでは根本的な解決にならないという限界を感じるようになりました。

予防医学や食事療法を学ぶ中で、「食」が健康に深く関わっていることに気づきました。当時はまだ“食育”という言葉も一般的ではありませんでしたが、生活習慣全体を見直す必要性を感じ、「REBIRTH」という名前で出版活動をスタートしました。“再生”という意味を込め、「食で壊れた身体は食で整える」という考え方を発信していきました。

その後、農業の現場を取材する中で、農薬や化学肥料に疑問を抱く生産者と出会い、土壌環境にも関心を広げていきました。そんな中、北海道で酪農による環境問題の改善に取り組んでいた妻の叔父が、乳牛の糞尿を活用した液肥の開発を進めており、その評価や研究に私も携わることになりました。

新潟大学や圃場での共同実験では、お米の品質向上など高い評価も得て、確かな手応えを感じていました。しかし、その矢先に東日本大震災が発生し、事業の継続が困難になりました。そこで、叔父から事業を引き継ぐ形で、この液肥事業に本格的に取り組むようになりました。

“昔ながらの肥料”を現代技術で再生する

――商品化までには苦労も多かったそうですね。

当時は化学肥料が主流で、有機液肥そのものがなかなか理解されず、販路も見つからない状況でした。

そこで、液肥をさらに3年以上熟成発酵させることで無臭化し、都市部で園芸を楽しむ方向けの商品として展開したのが「MOO&PLANT」です。

そんな中で最初に価値を認めてくださったのが、イタリアの食文化と伝統を世界へ伝える「EATALY」でした。循環型の考え方に共感いただき、「MOO&PLANT」という商品名も付けていただきました。その後、「大地を守る会(現・オイシックス・ラ・大地)」にも採用いただきました。

ただ、当時はまだこうした商品の価値が十分に理解されず、2015年頃までは苦しい時期が続きました。

大きな転機になったのはコロナ禍です。園芸需要が高まる中で、化学肥料を使いたくないというニーズが増え、「MOO&PLANT」にも注目が集まり、匂いがなく一切化学物質を添加していない点にも関心を持っていただけるようになりました。

――「MOO&PLANT」の強みについて教えてください。

最大の特徴は、化学肥料ではないことです。人類が長い年月をかけて使ってきた自然由来の肥料を、現代技術で復刻したものだと捉えています。

3年間の熟成発酵にも添加物は一切使っていません。微生物の力だけで無臭化した天然液肥で、同じような商品は他にはないと思います。土壌を汚染せず、微生物を殺さないため、植物が非常に元気に育つのも特徴です。

“すべてはつながっている”という考え方

――この事業を通して実現したいことを教えてください。

私はこれまで食育に携わってきた中で、このままでは地球環境や土壌環境が確実に悪化していくという危機感をずっと持っています。環境問題は今に始まったことではなく、何十年も前から言われてきたことです。

その解決策の一つとして、「MOO&PLANT」を多くの人に知ってもらいたいと思っています。この事業は、単なる商品販売ではなく、人と自然との関わり方を見直していくための活動だと思っています。

子どもたちの未来に残していける一つのブレイクスルーとして、この商品や考え方が広がってくれたら嬉しいですね。

――活動を続ける上で大切にしていることを教えてください。

「健康な身体は健康な食事から。健康な食事は健康な作物から。健康な作物は健康な土から」という理念は、医療の分野に携わってきた経験から生まれたものです。

これまで、農業、食、医療は、それぞれ別々のものとして発展してきました。でも、本当はすべてつながっているんですよね。土があって、作物が育ち、それを人が食べて健康になる。私は、その分断されたものに横串を通したいと思っているんです。

だからこそ、この取り組みを単なるビジネスの話にはしたくありません。昔の人たちは、作物を育て、それを食べ、動物と共に耕しながら暮らし、最後は土へ還していくという循環の中で生きてきました。土の微生物も含めて、自然の循環の中で人は暮らしてきたんです。

もちろん科学技術を否定したいわけではありません。ただ、これまで培ってきた技術を基に、“人の営み”や自然の命がめぐる大きな輪の中へ戻していくという考え方があってもいいんじゃないかと思っています。

食育と植育で循環型農業の未来へ

――今後の展望について教えてください。

今後は、微生物の研究分野をさらに深めていきたいと考えています。土壌の微生物と植物、人との関係というのは、これまでまだ分からないことが多かった分野なんですが、近年になって少しずつ新しい発見が増えてきています。

ですから、「MOO&PLANT」も含めて、土壌微生物や植物との関係性について、もっと研究開発を進めていきたいですね。

そのためにはこの考え方に共感してくださる企業さんとのコラボレーションです。こうした循環型の液肥をもっと広げていきたいという想いを持つ方々と、一緒に取り組める機会が増えたら嬉しいです。

もう一つは、地域の大人や子どもたちに農や環境への理解を深めてもらう食育活動です。健康で豊かな生涯は、日々の食生活からつくられます。その食を育む農や自然環境も体験できる機会をもっと広げていきたいと思っています。

自然の中を歩く時間が、自分を整えてくれる

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

私は新潟に住んでいるので、自然の中を歩く時間がすごくリフレッシュになります。
土の匂いや植物の息吹、季節の移ろいを肌で感じることで、自分自身の心と身体が整っていく感覚があります。自然の中を歩く時間は、自分にとってすごく大切ですね。

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