株式会社scale一級建築士事務所 代表取締役 関 康彦 氏
顧客との信頼関係を何よりも大切に
――御社の事業内容と、現在の特徴について教えてください。
当社は、法人向けの建築設計を中心とした一級建築士事務所です。福祉施設や病院の設計からスタートし、現在では事務所ビルや食品工場、研究施設など、用途の異なる建物を幅広く手掛けています。
ありがたいことに、創業以来の仕事のほとんどがご紹介によるものです。営業をしていなくても依頼をいただけるのは、お客様との信頼関係があってこそだと思っています。
建築の現場では、時に専門性の高い要件やイレギュラーな課題も出てきますが、他分野で得た知識を組み合わせることで柔軟に対応しています。
例えば、海洋生物研究所の設計では、特殊な排水設備が必要とされ、医療施設で培った衛生配管の知識や、飲食店での排水処理設計の経験が役立ちました。
独立を見据えて積み重ねた経験
――これまでのキャリアと、独立までの道のりについて教えてください。
建築を志した時から、いつかは独立したいという想いを持っていました。
5年ごとに事務所を移りながら、さまざまな設計に携わり、意識的に経験を積んできました。2社目からは「5年で辞めます」と伝えて入社していたほど、独立への思いは強かったです。
印象に残っているのは、創業当初、まったく仕事がなかった時期のことです。
前職の所長が仕事を回してくれたり、青年会議所のつながりからご縁をいただいたりと、人との関係性に救われました。
今でも「人との信頼関係が仕事の基盤」だという思いは変わっていません。
少数精鋭で育てるプロフェッショナル意識
――社員との関わり方や、組織づくりの考え方について教えてください。
現在は3名体制ですが、私は図面を描かず、主に打ち合わせやチェックに回っています。社員には責任を持って業務に取り組んでもらうことを大切にしています。
その一方で、私が図面を描かなくなったことで、意図の伝達にズレが生じることもあります。図面に対するヒアリング能力や理解力は、これからの課題です。
とはいえ、まだこの体制にして1年ほどなので、これから経験を積んでいけば、自然と解消されていくと考えています。
「色々な分野を経験することで、知識はつながっていく」という私の考えのもと、社員にも多様な案件に触れてもらい、幅広いスキルを育んでもらいたいと思っています。
技術革新を見据えた新たな挑戦
――今後の展望についてお聞かせください。
まずは、現在の3名体制から10名体制への拡大を目指しています。隣の土地もすでに確保しており、事務所の拡張も視野に入れています。
新たな事業領域としては、建物の調査・コンサルティングに加えて、3Dプリンターを活用した建築にも挑戦したいと考えています。職人不足が深刻化する中、3Dプリンターは大きな可能性を秘めており、個人住宅を中心に近い将来導入されていくと見込んでいます。
実際に愛知県の3Dプリンター建築の工場見学も予定しており、技術面やコスト面での現実的な導入可否を見極めているところです。建設コストの高騰や人手不足といった業界課題の中で、こうした技術革新が将来的に新しい建築の選択肢となり得ると確信しています。
もちろん、設計という軸から外れることなく、「設計管理」「調査」「教育」の3本柱は堅持したいと考えています。今後も、建築のプロフェッショナルとして社会に貢献していきたいですね。
誠実であることが、最も大切な経営資源
――お仕事に対する価値観や、日々のリフレッシュ方法について教えてください。
経営で大切にしているのは、「正直であること」です。
分からないことを無理にごまかすのではなく、正直に伝えることで信頼関係は生まれると信じています。
プライベートについては多くは語りませんが、仕事そのものにやりがいを感じており、常に学び続けていくことが自分のリフレッシュにもなっています。
また、非常勤で建築を教える仕事にも携わっており、次世代育成にも力を入れています。
今後も、技術力だけでなく「人間力」を大切にしながら、誰に対しても誠実に向き合っていきたいと思っています。