花林薬茶房合同会社 代表 小林由実氏
福岡を拠点に中医学薬膳教室を主宰する小林氏。その活動は教室運営にとどまらず、物販、カフェ、さらには熊本での民泊事業構想にまで広がっています。薬膳を単なる料理ではなく「健康のための智慧」として社会に広めたい。その想いと挑戦について伺いました。
食を通じて人の健康を支える
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
中医学薬膳教室を中心に、物販やカフェも展開しています。特徴は「実践重視」です。理論を学ぶだけでなく、自分で献立を組み立て、日常に薬膳を取り入れられるようになるまで徹底して指導します。
さらに熊本では、薬膳を核にしたリトリート体験ができる民泊事業を構想中です。薬膳を学ぶだけでなく、自然の中で心身を整え、暮らしに取り入れられる場を作りたいと考えています。
――企業理念やビジョンを一言で表すと?
「食を通じて人々の健康をサポートする」です。薬膳には、体質や季節に応じて食材を選び、未病を防ぐ智慧があります。この価値を広く伝え、誰もが自然に薬膳を生活に取り入れる社会を目指しています。
異業種から薬膳へ ― キャリアの転換点
――薬膳の世界に入られたきっかけを教えてください。
以前は音楽業界でサウンドエンジニアをしていましたが、元々は調理師・栄養士の資格を持っていました。音楽業界の先行きに不安を感じ、「食」に戻ろうと決意したんです。
福岡で理想の先生に出会えたことが大きな転機でした。当初は東京で学ぶしかないと思っていましたが、最短で理想の先生に辿り着けた。その経験は「思いは必ず通じる」と実感させてくれました。
――仕事をする上で大切にしている価値観は?
「本質を見極め、実践に繋げること」です。知識を知っているだけでは意味がありません。生活の中で使えるようになって初めて本当の価値があると考えています。
小さな組織だからこその近さと信頼
――社員やボランティアの方との関わりで大切にしていることは何ですか。
現在は少人数体制ですが、その分密なコミュニケーションを心がけています。特に熊本の拠点では距離があるので、情報共有を丁寧に行っています。
社員に求める資質は「学び続ける意欲」と「実践力」。薬膳は奥深く、常に新しい発見があります。それを学びに終わらせず、行動に落とし込み、価値を届けることができる人に仲間になっていただきたいです。
――印象に残っている社員のエピソードは?
70代のパート社員の方々が本当に熱心に働いてくださっていて、経験からくる責任感と気配りにはいつも助けられています。世代を超えて一緒に学び合えることは、私にとっても刺激になっています。
薬膳を社会に根付かせる未来構想
――今後の展望を教えてください。
まずは熊本で薬膳リトリート施設を実現させたいと考えています。宿泊やカフェを組み合わせた小さなコミュニティのような場で、薬膳を体験しながら学べる場所を作りたいです。
さらに、将来的には薬膳カフェのフランチャイズ化も構想しています。生徒さんの中には「自分の店を持ちたい」という方も多いので、その挑戦を支援する仕組みを整えたいと思っています。
――今直面している課題は?
一番は人材不足ですね。特に熊本では若い人材の確保が難しいため、移住制度や資格助成制度を活用して人を呼び込みたいと考えています。ただ、それをどう発信するかが課題です。
中国文化と共に生きる
――経営以外で大切にしていることや趣味を教えてください。
中国文化全般が私の情熱の源です。書道、囲碁、二胡、太極拳、映像制作など多岐にわたる趣味もすべてそこに繋がっています。特に太極拳は心身を整える大切な習慣です。
尊敬する人物は、春秋戦国時代の范蠡(はんれい)。軍師から商人に転じ、時代を読みながら倫理を持って生き抜いた人物です。彼のしなやかさと本質を見極める力に強く影響を受けています。
――最後に一言お願いします。
薬膳の智慧をもっと身近に、誰もが生活に取り入れられるようにしていきたい。そのために学びと実践の場を広げ、食と健康の未来を築いていきます。