和田京子不動産株式会社 代表取締役 社長 和田洋子氏・代表取締役 和田昌俊氏
仲介手数料無料、24時間365日の対応、自宅を事務所に構え「逃げ場がない」からこそ誠実に向き合う。
創業15年を迎えた和田京子不動産は、不動産業界では珍しいスタイルを貫き続けています。
創業者である故・和田京子氏の「人に恨まれず、正直に商いをしたい」という理念を受け継ぎ、二人三脚で経営を続ける和田昌俊氏と洋子氏に、その思いや事業の特徴、そして未来への展望を伺いました。
仲介手数料無料と24時間営業に込めた理念
――事業内容について教えてください。
当社は不動産の「売買仲介」を専門にしています。自社で物件を仕入れて販売するのではなく、お客様同士の売買をサポートする形です。特徴は、仲介手数料を無料としている点、そして24時間365日の営業を行っている点です。
――なぜ仲介手数料を無料にしているのですか。
もともと祖母である創業者の和田京子が「人に恨まれず正直にやりたい」という思いから始めました。利益よりも誠実さを優先することで、長くお客様に信頼される会社でありたいと考えています。実際、無料とうたっていても後から費用を請求する会社も多いと聞きますが、私たちは一切そうしたことをしません。
24時間対応が生まれた背景とお客様への思い
――24時間営業を始めたきっかけは。
子育て世代のお客様が「子どもを寝かしつけた後にしか家の話ができない」という声を聞いたことが大きな理由です。夜中の2時や3時にご夫婦から相談の電話があることも珍しくありません。不安な気持ちを抱えたまま夜を過ごすより、その場で解決できる存在でありたいと思ったのです。
実際に深夜の時間帯に相談が寄せられることは少なくありません。契約を目前に控えたお客様が「これで本当に大丈夫だろうか」と不安になり、夜中に電話をくださるケースもあります。その場で一緒に確認し、不安を解消できるからこそ、翌朝には前向きな気持ちで手続きを進められるのです。
――ご苦労も多いのでは。
確かに大変ですが、むしろお客様の人生の節目に立ち会える喜びの方が大きいですね。ご夫婦が新居を決意される瞬間や、ご家族の笑顔に触れるたびに「やっていて良かった」と実感します。
「逃げ場のない不動産屋」として守る信頼
――経営を続ける中で大切にしていることは何でしょうか。
「逃げ場がない」ということです。自宅を事務所にしているため、万が一いい加減な仕事をすれば、すぐに信用を失ってしまいます。その分、誠実さを徹底せざるを得ない環境でもあります。
――お客様からどのような反応がありますか。
業界の方から選んでいただけることもあり、プロに認めてもらえるのは大きな励みです。また、半数以上が現金購入のお客様という点も特徴で、信頼してくださる方が多いことの表れだと思っています。
業界の常識を変えるために描く未来
――今後の展望についてお聞かせください。
まずは現状維持を大切にし、無理に規模拡大を目指さず「続けること」を重視しています。継続こそ最も難しい経営の課題ですが、健康に気を配りながら、このスタイルを守っていきたいですね。
――業界への思いはありますか。
日本の不動産業界はまだまだ遅れている部分が多いと感じています。仲介手数料無料やホームインスペクション(建物診断)が当たり前になることを願っています。当社の取り組みが業界健全化の一助になれば嬉しいです。
仲介手数料無料が浸透すれば、お客様は本来の住宅選びに集中できますし、業界も価格競争ではなく誠実なサービスで勝負するようになります。取引の透明性が高まれば、結果的に不動産会社の信頼性向上にもつながり、業界全体の健全化にも寄与できると考えています。
会話が生み出す活力と起業家へのエール
――仕事以外でのリフレッシュ方法はありますか。
特別な趣味はありませんが、人と会話することが一番のエネルギー源です。お客様とのやり取りや雑談から、新しい発見や気づきを得ることができます。単なる世間話であっても、自分では思いつかない視点に出会うことがあり、仕事の励みになることもしばしばです。会話によって相手が安心してくれたり、笑顔を見せてくれる瞬間が、自分にとって何よりのリフレッシュになります。
――最後に、これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。
「死ぬな、続けろ」です。経営を続けていると必ず苦しい時期が訪れますが、諦めず続けることで必ず道は開けます。死にたくなるほど辛い瞬間があっても、そこで踏みとどまることができれば必ず次の展開があります。細くても長く続けること、それが一番の強みになると思います。