株式会社unlock.ly 取締役副社長 武田颯太氏
人手不足と事業承継――現代日本が直面する二大課題に、正面から挑む企業があります。
株式会社unlock.lyは、HRとM&A・投資を両輪とした事業モデルで社会課題に向き合い、創業からわずか数年でグループ連結売上約60億円、従業員数約550名規模にまで成長しました。
今回は取締役副社長の武田氏に、事業の現状から経営哲学、組織文化、未来ビジョン、さらにはプライベートの一面まで伺いました。
社会課題を解き放つ二本の矢 ― HRとM&A事業
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
弊社は「HR事業」と「M&A・投資事業」の二軸で展開しています。HR分野では、採用を内側から支援・改善する「アンロックリーリクルーティング(RPO)」と、ハイクラス人材紹介に特化した「アンロックリーエージェント」を運営。人材獲得競争が激化する中で、企業の採用力を底上げしています。
M&A・投資事業では、とりわけ事業承継に悩む中小企業への投資と経営支援を重視しています。後継者不足で廃業せざるを得ない企業は多く、弊社は永続保有を前提として株式を100%取得し、雇用を守りつつ、事業強化を図る役割を担っています。現在は静岡県発祥のお弁当チェーン「どんどん」や京都のエンジンオイル卸企業「FUKUDA」をグループに迎え、経営支援・改革を実施しています。
――御社ならではの強みはどこにありますか。
短期・中期・長期の収益モデルを組み合わせ、リスクを分散している点です。RPOは短期的な安定収益、人材紹介は短期から中期、M&A仲介は半年から1年、事業承継投資は長期といった時間軸で収益を構築しています。そして何より「人手不足」と「事業承継」という二大社会課題に同時に挑める点こそが、弊社の存在意義だと考えています。
逆境から拓いた「個」の信頼
――経営者になられた経緯を教えてください。
共同創業者の三島と出会ったのは2021年。彼は金融、私は人材という異なるバックグラウンドでしたが、意気投合しました。スポーツや教育を通じて社会に貢献したいという共通の夢を持ち、その実現には資本力が必要だと考えました。そこでまず、自分たちの専門分野で基盤を築こうと決意し、数か月後には創業に至りました。
――ご自身のキャリアで印象的な経験はありますか。
私は大学を中退し、派遣社員からキャリアをスタートしました。前職のエンワールド・ジャパンでは、正社員登用後、人一倍努力を重ねた結果、最年少マネージャー昇進や全社トップセールス賞を受賞しました。退職時、多くのお客様から「独立しても武田さんと仕事がしたい」と声をいただけたことは大きな財産です。そのようなお客様には、創業当時より大変お世話になっており、「信頼されること」の重要性を改めて実感しました。
社員の主体性を引き出すフラットな文化
――社員との関わりで大切にしていることは何ですか。
unlock.ly本体では、ベンチャーならではの「個人の影響力」を感じてもらえる環境づくりを意識しています。多くの優秀なメンバーにも恵まれ、組織が成り立っていると痛感しております。一方、M&A・投資で迎え入れた企業は歴史ある組織が多いため、まずは「これまで大事にしてきた文化や理念」を尊重しつつ、社員一人ひとりに「これからどうしていきたいか」を問いかけ、対話を重ねています。
――コミュニケーションで心がけていることはありますか。
役職に関わらずフラットに接することです。役職や肩書で仕事をするのではなく、役割や目的を意識し、自由に意見を言える環境を整えることで、社員が主体的に動ける組織を目指しています。先日、創業期からの社員が「unlock.lyで成長できた」と言って次の舞台に旅立ちました。社員がここで可能性を広げ、新たな挑戦を掴みにいくことを誇りに思っています。
総合商社のような存在を目指して
――今後の展望について教えてください。
既存のHRとM&A・投資をさらに強化しながら、非連続的な成長も見据え、将来的にはスポーツや教育ビジネスなどにも挑戦していきたいと考えています。ゆくゆくはグループ企業群を形成し、PL型とBS型の事業を組み合わせた「総合商社」のような存在を目指しています。
――直面している課題や業界の展望は?
HRもM&A・投資も需要がなくなることはありませんが、勝ち残るにはAI活用が不可欠です。弊社でもすでに導入を進めており、投資先企業にも展開しています。今後はHRとM&Aのシナジーをどう生み出すかが鍵となります。加えて、組織拡大に伴うガバナンス強化や価値観の共有も重要な課題だと認識しています。
挑戦を支える日常と未来へのエール
――リフレッシュ方法についても教えてください。
ゴルフや車、バイク、お酒など、仕事を忘れて没頭できる時間を大切にしています。趣味を通じて知り合う異業種の仲間から、新しい知識や視点を得られることも多く、それが仕事の刺激にもつながっています。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
私は決してエリート街道を歩んできたわけではありません。挑戦と努力を積み重ねてきた結果、今があります。皆さんにもぜひ、自分の強みや可能性を信じて一歩を踏み出してほしい。人生には確率では図れない可能性が多く眠っていると信じています。