株式会社Enuncia 代表取締役 ハミルトン葉奈氏
多様な文化が交錯する現代において、社会課題の解決にビジネスで挑む経営者がいます。外国人向けの日本語教育事業とドッグフード事業という一見異なる2つを両輪に展開する株式会社Enunciaの代表、ハミルトン葉奈氏です。事業の根底にあるのは「怒り」を行動へと変える強い意志。今回はその哲学と挑戦に迫りました。
外国人就労支援とドッグフード事業の両輪
――現在の事業内容と特徴を教えてください。
現在は大きく2つの事業を展開しています。1つは外国人向けの日本語教育で、個人レッスンや法人向け研修を提供しています。特徴は「就労支援」に特化している点です。履歴書の作成から応募、模擬面接、入社までを一貫してサポートし、日本語を「働くための力」に変える取り組みをしています。
もう1つはドッグフードの製造販売です。母がレシピを手掛け、製造は専門工場に委託。ECと小売卸の両面で展開しており、事業比率も拡大しています。
企業理念は「私が見たい変化に私自身がなる」。日本社会の不条理や矛盾に対し、文句を言うのではなく自ら行動を起こす姿勢が原動力になっています。
日本語教師から法人経営へと至った道
――経営者になられたきっかけは?
もともと個人で日本語教師をしていましたが、一人でできる数や単価に限界を感じ、外部講師を迎えてプラットフォームを立ち上げました。その後、ドッグフード事業を始めたことで法人化を決断。ふるさと納税の返礼品に採択されたことも後押しになりました。会社設立から2年が経ちます。
――経営で大切にしている価値観は?
「コツコツは勝つコツ」です。派手なイベントや賞のためではなく、地道な努力の積み重ねが最も大切だと考えています。日本語教育では生徒さんの合格や就職が、ドッグフードではお客様の「ありがとう」の声が一番の励みです。
少人数組織だからこそできる柔軟な運営
――組織運営で意識していることは?
社員は私一人で、協力してくれる業務委託メンバーを含め10名ほどで活動しています。大規模組織を目指すのではなく、AIや外部人材を柔軟に取り入れる方針です。外国人材の採用も視野に入れ、日本人と分け隔てなく最適な形で事業を進めたいと考えています。
――社内文化を表す言葉は?
やはり「コツコツは勝つコツ」ですね。私自身も製造ラインに入ったり、講師の代役を務めたり、泥臭い仕事を率先して行います。そうした姿勢が文化をつくっていると思います。
日本語教育の進化とジビエ活用ブランドの挑戦
――今後の展望を教えてください。
日本語教育では就労支援を一層強化します。日本語を教えるだけでなく就労支援ができる教師を育成する養成講座を始めました。また、外国人だけでなく受け入れ企業側への研修も強化し、双方がより良い関係を築ける環境を整えたいです。
ドッグフード事業では「鹿肉ブランド」としての確立を目指します。京都・京丹後市では年間3500頭近くの鹿が捕獲されていますが、有効活用されていません。地域資源をジビエとして循環させ、社会的意義のある事業として育てていきます。
海と犬とともに過ごす京丹後での暮らし
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法は?
現在住んでいる京丹後市は海が近いので、犬を連れて散歩することが一番の気分転換です。特に特別なアクティビティをしなくても、海を眺めるだけで心が軽くなります。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
起業を考えている方へ伝えたいのは、「コツコツは勝つコツ」という言葉です。代表取締役になっても劇的に何かが変わるわけではありません。むしろ、誰よりも泥臭い作業を率先して行うことが大切です。お客様に満足していただくための努力を惜しまないことが、唯一の成功への道だと思います。