株式会社Make Food Tech 代表取締役 田端 一雅氏
青ネギ栽培を軸に、障害のある方々と共に生産から販売までを担う「農福連携」に挑む株式会社Make Food Tech。
課題の多い一次産業に福祉の収益構造を組み合わせ、「農業を儲かる職業にする」というビジョンを現実へと近づけています。
国内でのモデル確立から海外展開まで見据える同社に、現在地とこれからを伺いました。
農業と福祉を結ぶ新しいビジネスモデル
――現在の事業内容や特徴について教えていただけますか。
約1,500坪の畑で無農薬の青ネギを栽培し、生産から販売までを一貫して行っています。工程には障害のある方々が参画し、農業と福祉を組み合わせた「農福連携」を事業の核にしています。飲食事業を経営していた経験を経て、一次産業の収益課題に正面から向き合うために立ち上げました。
――理念やビジョンについてはいかがでしょうか。
掲げているのは「農業を儲かる職業にする」ことです。農業は年間のキャッシュポイントが少なく、離農の原因になりがちです。そこで福祉事業の収益を組み込み、持続可能なモデルを確立。将来的には新規就農者が活用できるパッケージとして展開し、業界全体の底上げを目指しています。
――業界内での強みについてお聞かせください。
提携で運用することで小回りが利く点です。利用者の方が「社会復帰」をゴールに据えられるため、モチベーションが続きやすく、高い継続率を維持しています。販路はオーガニックショップなど高付加価値のチャネルを選び、収益性を高めています。今後はマレーシアを起点に海外販路の開拓にも挑戦します。
飲食業から農業・福祉へ転身した理由と原点
――経営者として歩み始めたきっかけを教えてください。
25歳から約10年間、飲食業を経営していました。コロナ禍で事業を売却したことを転機に、食の根源である農業に関心を深め、福祉と掛け合わせる事業を始めました。農業が抱える「収益性の課題」を解決し、持続可能なモデルを作りたいという思いが原点です。
――仕事をする上で大切にしている目標は何でしょうか。
新しく農業を始める人が収益の壁で挫折せずに続けられるよう、福祉と組み合わせたスキームを整えたいと考えています。このモデルを活用することで、地域の一次産業全体を元気にできると信じています。
――これまでで印象に残った出来事はありますか。
創業から1年ほど経った頃、資金が底をつき精神的にも追い詰められました。そこで内面を立て直すことに集中し、価値の訴求と販路開拓を徹底。状況を乗り越えた経験から、経営は外部環境だけでなく経営者自身の心の在り方が大きく影響することを痛感しました。
社員の主体性を育む組織づくり
――社員が主体的に動けるよう、どのような取り組みをされていますか。
利用者の社会復帰という明確な目標を共有し、現場で一緒に汗をかくことを大切にしています。自分の仕事が社会に直結するという実感が、主体性を引き出す原動力になります。
――社内コミュニケーションで意識していることはありますか。
少人数の組織のため、日々の業務で状況を密に共有しています。困ったことがあればすぐに相談できる雰囲気を作り、定期的なミーティングで課題をオープンにしながら解決しています。
――今後求める人材像について教えてください。
変化のスピードについてこられる柔軟性と、利用者に寄り添う傾聴力を重視しています。福祉事業では相手の可能性を信じ、共に成長できる人間性が不可欠です。
海外展開と農業の未来を見据えて
――今後の展望や挑戦についてお聞かせください。
3年で年商を4倍、従業員を10名程度に増やす計画です。農福連携モデルをパッケージ化し、行政との連携を強化して安定的に紹介が得られる仕組みを整えます。海外ではマレーシアでのフード事業を皮切りに、輸出ルートを確保。将来的には国内農家の販路拡大を支えるプラットフォームを構築したいと考えています。
――直面する課題と対策は何でしょうか。
人材育成が最大の課題です。権限委譲やスキルアップ支援で自律的に動ける組織を目指します。営業面では福祉事業の成果を積み重ね、行政からの信頼をさらに厚くすることに注力します。
経営者としての価値観と読者へのメッセージ
――経営において大切にしている信条や、リフレッシュ方法を教えてください。
「三方良し」を描くことです。生産者・消費者・社会の三者が笑顔になる構造こそ持続可能です。リフレッシュはゴルフ。自然の中で体を動かすことで思考が整理され、仕事にも良い影響があります。
――最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いします。
農業は変えられる産業です。収益構造を設計し、志ある人が安心して続けられる仕組みを共に築いていきましょう。農業や福祉に関心のある方、販路連携を望む方はぜひ仲間になってください。社会に新しい可能性を拓く挑戦を一緒に進めていきましょう。