株式会社モーベルファーム 代表取締役 森 優氏
食の安全や安定供給への関心が高まる現代社会において、未来の農業を切り拓こうとする企業があります。兵庫県を拠点とする株式会社モーベルファームは、人工光型植物工場を運営し、高品質なレタスを無農薬で安定供給。日本の食文化と人々の健康に貢献しています。今回は代表取締役の森氏に、事業内容から経営哲学、そして今後の展望までを伺いました。
食の未来を支える安定供給への取り組み
――現在の事業内容と特徴を教えてください。
弊社は閉鎖型人工光植物工場を運営し、そこで生産した野菜を販売しています。天候や気候に左右されない栽培方法のため、安定した生産が可能です。また、完全に閉鎖された環境なので病害虫の心配がなく、無農薬で安全な野菜を提供できます。現在は兵庫県丹波篠山市と養父市に工場を構え、レタス3種類をフル稼働で生産しています。
――企業理念やビジョンについてお聞かせください。
理念は「野菜を通じて、日本の人々の健康と食の文化に貢献する」ことです。中長期的には工場を首都圏にも増設し、生産能力を拡大していきたいと考えています。人工光型植物工場は立地の制約が少ないため、消費地に近い場所に設置できる点が大きな強みです。
――業界内でのポジションはどのように捉えていますか。
昨年度の売上高は約8億円で、国内第3位の規模に相当します。今期はさらに拡大を目指し、関東近郊への工場展開を検討しています。無農薬・安定供給という強みを活かし、業界を牽引していきたいと考えています。
挑戦を恐れず未来を切り拓く経営者としての歩み
――経営者になられた経緯を教えてください。
大学卒業後は総合電機メーカーで営業を経験し、その後、父が営む設備開発設計会社に転職しました。2019年に植物工場を運営するプロジェクトが立ち上がり、その責任者を務めたことがきっかけで、植物工場部門を分社化。代表に就任し、モーベルファームを設立しました。
――印象的だった出来事を教えてください。
2019年に工場が完成した直後、新型コロナの感染拡大で主要顧客である外食・コンビニ業界の需要が激減しました。フル生産体制を整えていた矢先に受注がほぼゼロとなり、大きな危機に直面しました。
――どのように乗り越えられたのですか。
スーパーの惣菜需要が急増していたことに注目し、ターゲットを切り替えました。食品メーカー向けの商品開発や営業を強化したことで、新たな顧客層を獲得。結果的にコロナ後は既存顧客と新規顧客の両方を持つ体制となり、リスク分散につながりました。
社員と共に変化を楽しみ成長する組織
――従業員数や組織の特徴を教えてください。
現在は2工場合わせて約80名が在籍しています。単にレタスを作り続けるのではなく、常に新商品や改良に挑戦する意識を大切にしています。
――社員の主体性を引き出す工夫はありますか。
「失敗を恐れずにチャレンジすること」を常に伝えています。新しいことに取り組む姿勢を重視し、社員たちもその考えを共有してくれています。
――社内コミュニケーションで意識している点は。
全社員を対象に定期的な1対1の面談を行っています。会社からの目標確認だけでなく、社員自身の挑戦や課題についても共有し、フォローアップしています。
持続可能な農業と新たな価値創造へ
――今後の展望についてお聞かせください。
最優先は国内での工場数と生産能力の拡大です。食料自給率の低さが課題とされる中、安定供給に貢献することが使命だと考えています。次のステップとしては、レタス以外の作物や果物など新たなカテゴリーに挑戦し、事業の幅を広げたいです。
――直面している課題と対策は何ですか。
製造管理者となる若手人材の採用と育成が課題です。年間2名ほどの採用を計画し、体制を強化していきます。また、営業は私一人で担っているため、効率的な戦略づくりが今後の課題です。
変化を恐れず挑戦し続ける姿勢
――経営において大切にしている価値観を教えてください。
「変化を恐れず挑戦すること」です。時代の変化に柔軟に対応し、常に新しい挑戦を続けていくことが、会社を成長させる原動力になると考えています。
――趣味やリフレッシュ方法を教えてください。
子どもの頃から野球や空手に親しみ、今でも週5日ほどジムでトレーニングを続けています。体を動かすことがリフレッシュにつながり、経営を続ける体力や集中力にも役立っています。
――最後に、人生観や大切にしている思いをお聞かせください。
私は「どんな困難も前向きに捉えれば成長の糧になる」と考えています。コロナ禍での経験もそうでしたが、逆境をきっかけに新しい可能性が拓けることがあります。だからこそ挑戦をやめず、一歩一歩積み重ねていくことが大切です。これからも変化を楽しみながら、未来を創る仲間と共に歩んでいきたいと思います。