わしょクック株式会社 代表取締役 富永紀子氏
2014年に外国人向け料理教室を立ち上げ、2016年に法人化しました。東京・大崎のスタジオを拠点に、英語で日本の家庭料理を教えるクラスや講師育成、企業研修、海外シェフ向けレッスンまで幅広く展開しています。さらに2023年からはニュージーランドのオークランドに拠点を構え、レストランや物販も手掛けています。家庭料理を軸に「世界中の人を笑顔にしたい」と語る富永代表に、歩みと挑戦を伺いました。
目次
卵焼きとおにぎりから始まるグローバル教室
――現在の事業について教えてください。
日本の家庭料理を英語で教える教室を運営しています。卵焼きやおにぎり、寿司などを通して外国人に和食を体験してもらう取り組みです。並行して、英語で教えられる講師を育成し、全国や海外で教室を開講してもらっています。現在は約70名の講師が活動しています。
――海外展開についてはいかがですか。
ニュージーランドのオークランドに拠点を持ち、料理教室や家庭料理レストラン、調理道具や食器の販売を行っています。現地にもフランチャイズが増え、在住日本人が地元の方に和食を教える仕組みが育ってきました。
マーケティングから料理教室へ キャリアの転換点
――創業のきっかけとご自身のキャリアについて教えてください。
大学では薬学を学びましたが、就職後はカネボウやロレアル、ネスレなどでマーケティングを担当しました。約20年前のニュージーランド旅行で家庭料理の温かさに触れ、日本の家庭料理を世界に広げたいと思ったことが原点です。
――これまでで最も印象に残る出来事は何でしょうか。
やはりコロナです。訪日観光客がゼロになり、講師希望者も減りました。そこでオンライン化に踏み切ったところ、世界中から受講者が集まりました。企業研修もオンラインで実施でき、講師育成も遠隔で進められるようになったのは大きな転機でした。
仲間とつくるチーム運営のリアル
――現在の組織体制を教えてください。
日本では経営陣2名、ニュージーランドでは経営陣3名と正社員3名で運営しています。日本では講師ネットワークが運営を支えてくれているので、私は教材開発や営業、海外拠点の立ち上げを中心に取り組んでいます。
――運営のなかでの課題はありますか。
営業人材が不足していることです。ホテル向けの体験プログラムや自社商品「とみ出汁」の販路拡大などを進めたいのですが、営業活動を担う人材がいないため、まだ十分に広げられていません。信頼できる営業パートナーを見つけることが今後の課題です。
ホテル・海外・AI 広がり続ける挑戦のフィールド
――今後挑戦したいことを教えてください。
3年後には売上を現在の3〜5倍にしたいと考えています。海外のフランチャイズ展開を加速し、特にホテル向け体験プログラムを全国で広げたいです。動画教材を活用し、ホテルスタッフ自身が外国人に和食体験を提供できる仕組みを作ります。これが実現すれば、地方ホテルでも宿泊者にユニークな体験を提供でき、地域雇用や観光の活性化にもつながります。
――注力するテーマはどのようなものですか。
AI活用や海外展開の拡大に加え、「世界の子どもの食育」に取り組みたいです。偏食が広がる海外の子どもたちに、日本の家庭料理を通じて健やかな食生活を届けたいと考えています。和食をきっかけに「食べることの楽しさ」を学び、親子の時間がより豊かになる未来を目指しています。
森と星に癒やされるニュージーランドの日々
――仕事以外のリフレッシュ方法を教えてください。
趣味らしい趣味はありませんが、本当は海外旅行やゴルフが好きです。ニュージーランドはゴルフ天国なので、近いうちに再開したいですね。今は森に囲まれた自宅で、野鳥の声や満天の星を眺める時間が心の癒やしです。朝や夜に自然と向き合うわずかな時間でリフレッシュしています。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
夢や思いは声に出すことが大切だと思います。語ることで縁が広がり、行動につながります。日本の家庭料理は単なる食事ではなく、人をつなぎ笑顔を生み出す力があります。その魅力を世界に届け、日本人自身が海外で新しい挑戦をするきっかけにもしてほしいです。私自身も、和食の魅力を世界に広げながら、日本人が世界で誇りを持って活躍できる未来を築いていきたいと考えています。