北海道・十勝から世界へ。地域と共生するチーズ作りの哲学

株式会社広内エゾリスの谷チーズ社 代表取締役社長 寺尾智也氏

北海道十勝・新得町を拠点に、放牧牛のミルクからナチュラルチーズを生み出す株式会社広内エゾリスの谷チーズ社。フランスでの修行を起点に、日本の風土と地域の営みを重ね合わせた“日本らしいチーズ”を探究しています。放牧酪農の価値を伝え、地域と産業をともに育てる——その思想と実践を、寺尾社長に伺いました。

放牧ミルクで育む日本らしいチーズで見る事業の現在地と理念

――現在の事業内容と特徴を教えてください。

新得町と清水町の酪農家さんが育てた放牧牛のミルクを原料に、ナチュラルチーズを製造・販売しています。素材の個性を最大限に活かしつつ、子どもにも安心して食べてもらえる、やさしい味わいを大切にしています。

――大切にしている理念は何ですか。

「チーズを通して地域をデザインする」です。食だけでなく、景色や文化、余暇まで含めて地域に根づく価値を育てたいと考えています。効率一辺倒ではなく、人の暮らしに寄り添う哲学をものづくりに宿らせます。

――ビジョンについて教えてください。

放牧酪農の価値を日本で当たり前の選択肢にすることです。隣の工房や牧場と手を取り合い、地元に支持される味を十年、百年単位で育てることで、「この土地の味」を確立していきます。

原体験とフランス修行で形づくられた仕事観と経営者として大切にする価値

――経営者として歩みを始められたきっかけについて教えてください。

前職の共同学舎で新工房立ち上げに携わったことが契機です。製造主任として建築設計から関わる中で、「必要とされることに応え、形にする」自分の資質に気づき、自然と経営の道が開けました。

――お仕事に対する価値観や姿勢を形づけた原体験には、どのような出来事がありましたか。

小学生の頃、牛乳が廃棄されるニュースを見て強い衝撃を受けました。命を奪わず栄養を生む酪農の尊さを守りたい——その思いが今も原動力です。

――経営やものづくりにおいて、大切にされている価値観や信条をお聞かせください。

「ぬくもりと共感」です。木板で熟成させると表情が変わるように、人に心地よいものはチーズにも良い影響を与えます。科学の外側にある感覚も尊び、味わいに映すことを心がけています。

見守りと裁量で主体性を引き出す風通しの良い組織づくり

――社員の主体性をどう引き出しますか。

子育てのように「見守る」姿勢です。裁量を渡し、要所で支える。チーズの微細な変化に自分で気づき、考える過程が深い学びになります。

――社内コミュニケーションで意識することは。

一人ひとりの状態を察することです。軽く問いを投げ、反応から体調や気分を掴みます。作業はできるだけシンプルにし、問題は個人を責めずチームで改善します。

――社員の方に求める資質について、どのようにお考えでしょうか。

高度なスキルより「真摯さ」と「愛情」です。熟成は長い時間の仕事。地元出身の若手がパートから正社員になり、着実に育っていることが何よりの希望です。

新得をチーズの産地に育てるための連携拡大と高付加価値化と販路戦略

――今後の展開を教えてください。

清水町・宮地牧場さんとの連携強化や、新得町の大規模牧場の放牧シフトと併走し、「新得=チーズの産地」という認知を高めます。乳製品を軸に、パン製造・販売など周辺領域も視野に入れます。

――現在直面している課題や、それに対してどのように取り組まれているのかをお聞かせください。

人件費・原材料の高騰に対し、安易な値上げに頼らず、高付加価値商品の開発と収益性の最適化を進めます。販路は観光土産だけでなく、日配・ホテルなどへ拡張。楽天市場出店や広報強化、人事評価の整備にも取り組みます。

――業界全体の将来像について、どのような展望をお持ちですか。

AOPやIGPのように地域性が価値になる時代です。日本でも地理的表示の動きが進みます。模倣ではなく「日本らしいチーズ」を隣の工房・牧場とともに育て、輸出に耐える産地力を磨きます。

家族のぬくもりが感性を整えるリフレッシュともう一つの情熱

――リフレッシュの時間はどう過ごしますか。

いまは子育てが一番の楽しみです。以前はランニングや登山もしていましたが、休日は娘たちと近くの山に出かけ、同じ景色を一緒に味わいます。家族の時間が、仕事の感性を整えてくれます。

――経営以外で情熱を注いでいることや、大切にしている時間について教えてください。

やはり家族です。フランスからの帰国後、支えてくれた存在がいまの私をつくりました。家庭の「ぬくもり」を大切にする姿勢は、会社づくりにも通じています。これからも地域と家族の輪を大切にしながら、十勝から世界へ広がるチーズの未来を育んでいきたいと考えています。

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