株式会社フェアリンク 代表取締役 吉川裕昭氏
不動産業界は高い離職率や人材定着の難しさに直面しています。そうした課題に真正面から挑むのが、株式会社フェアリンクの吉川代表です。長年にわたる現場経験と上場企業を育て上げた実績を背景に、新人教育や管理職研修を通じて企業文化の定着と人材の早期戦力化を支援しています。今回は、その歩みと経営哲学、組織づくりの視点、そして今後の展望について伺いました。
新人を原石から輝かせる仕組みづくり
――現在の事業内容と理念について教えてください。
当社は不動産会社向けに新人教育と管理職研修を中心とした教育支援を行っています。理念は「新人という原石を磨き、輝かせ、企業の成長を加速させる」ことです。多くの会社では経営者が課題を認識しながらも「どこから手を付ければよいか分からない」という状況が少なくありません。そうした中で、第三者の立場から課題を整理し、短期間で戦力化を実現するのが私の役割です。
特に重視しているのは企業文化の浸透です。私は「行動規範=5カ条」を作成することを推奨しています。これは誰でも実行可能な内容でありながら、守るか否かで社員の意識や帰属心が明確になります。守れない人を管理職にすべきではない、というのが私の強い考えです。実際、5カ条を定めた企業では離職率の改善だけでなく、社員同士の信頼関係も深まり、組織全体の雰囲気が変わっていきました。
失敗から学んだ経営者としての歩み
――これまでのキャリアや独立の経緯について伺えますか。
大学卒業後、最初に入社したのはアパレルメーカーでした。その後、28歳の時に不動産業界へ転職し、さらに5年後には上司と共に数名でゼロから不動産会社を立ち上げました。創業初期から新卒採用を手がけ、採用・育成に力を注ぎながら組織を基盤から築き上げ、設立12年後にはJASDAQ上場という大きな節目を迎えることができました。
50歳で役員を退任した後は独立し、不動産仲介業を営む傍ら、センチュリー21の講師として人材育成にも携わってきました。こうした経験をより多くの企業の成長に役立てたいとの思いから、教育コンサルティング事業を立ち上げました。特に、小規模不動産会社が成長の過程で直面する課題に対しては、実践に裏打ちされた具体的な解決策を提示できることが、私の最大の強みです。
失敗から学んだ経験も多くあります。かつては新卒採用で誇張した説明をして多くの離職を招きましたが、正直に現実を伝える方針に切り替えてから定着率が改善しました。成功より失敗から得た学びこそが、今の事業の土台になっています。
信頼と実践に基づく組織づくり
――組織運営や社員育成において大切にしていることは何でしょうか。
新人の育成において最も重要なのは「最初の3ヶ月」です。この期間で文化や行動規範を徹底的に共有することで、その後の成長が大きく変わります。私は合宿形式で教育を行う場合もあり、知識だけでなく価値観を体に染み込ませるようにしています。実際に朝から晩まで生活を共にすることで、仲間意識や責任感が芽生えやすくなり、短期間で大きな成長を見せる新人も少なくありません。
また、管理職には「結果で部下を叱る」のではなく「結果を出せるように導く」姿勢が求められます。部下は上司の言葉ではなく行動を真似るものです。上司が挨拶を怠れば部下も挨拶をしなくなる。このように職場環境そのものが新人教育に直結するため、管理職の在り方を徹底的に見直す必要があります。
70歳まで届けたい成長支援の使命
――今後の事業展開や目標を教えてください。
私は現在60代で、活動の目安は70歳までと考えています。事業領域を無理に広げるつもりはなく、「響き合える経営者との出会い」を大切にしながら、外部の右腕的な存在として企業を支援し続けたいと思います。社員を雇わず一人で活動しているのも、自分に合ったスタイルだからです。
将来的にはM&Aや事業承継も視野に入れていますが、まずはこれまでの経験を必要とする経営者にしっかりと届けたい。管理職を機能させて新人を早期戦力化する、そのノウハウをより多くの企業に伝えることが使命だと考えています。地方の中小企業にもまだまだ伸びしろがあり、教育を通じて地域全体の成長に貢献できると信じています。
ゴルフとランニングで心身を整える
――プライベートでの趣味やリフレッシュ方法はありますか。
趣味はゴルフとランニングです。ゴルフは交流の場として、ランニングは20年以上続く習慣で、週1回程度夏は6キロ、冬は8キロを走ります。体を動かした後にお酒を楽しむのが日々のリフレッシュです。
――最後に、読者の経営者や次世代リーダーへメッセージをお願いします。
これまでの経験から確信しているのは「人財がすべて」ということです。文化を共有できる仲間と本気で向き合えば、会社は必ず成長します。経営者の皆さんには、管理職を機能させ、新人を早期に戦力化する仕組みづくりに挑戦してほしい。私も70歳まで現場に立ち続け、その挑戦を応援します。