株式会社イッツアイ・クリエイト 代表取締役 伍井 康浩氏
防犯カメラの設置は一般的になりつつありますが、その映像が有効に活用される機会はまだ限られています。株式会社イッツアイ・クリエイトは、防犯カメラ映像を警察などが効率的に閲覧できる「Share-Ju」を提供し、社会全体の安全を高める新たな仕組みをつくっています。今回は伍井代表に、サービス開発の背景や会社のビジョン、今後の展望について伺いました。
目次
――御社の事業内容と特徴について教えてください。
当社は「Share-Ju」という防犯カメラ共有サービスを展開しています。一般の方や事業者の方が設置された防犯カメラを登録していただき、警察が必要なときに開示できる仕組みです。これまでカメラ所有者が直接対応していた煩雑なやり取りを代行することで、スムーズな協力を可能にしています。
防犯カメラは自分や施設を守るために設置されることが多いですが、社会全体の安全にもつながります。たとえば災害時には、公開設定されたカメラの映像が地域の状況把握に役立ちます。窃盗や不審者の対応など治安維持にも活用され、社会貢献度の高いサービスだと考えています。
料金も広く普及するよう抑えており、公開カメラは無料、開示カメラについても年会費3300円と低価格で提供しています。社会に必要なインフラの一部として、多くの方に参加していただけるよう取り組んでいます。
起業の原点 ― 誰もやらないなら自分がやる
――この事業を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
高校在学中に国家試験である第一種情報処理技術者試験に合格し、IT分野に強い関心を持っていました。その後は不動産会社に勤務しましたが、防犯カメラに触れる機会があり、リモートで映像を確認できる技術に可能性を感じました。しかし、通信インフラが発展しても行方不明となった子供等の早期発見や犯罪抑止につながる仕組みがなかなか整わないことに疑問を持っていたのです。
決定的だったのは、母の介護が必要となり進退に悩んでいた時期に、業務において改めて調べると「警察に開示できるだけのサービス」が存在していないと分かりました。それなら自分がやるしかない、と退職して起業することを決意しました。
目指しているのは、重大犯罪だけでなく自転車窃盗や万引きといった日常の小さな事件にも対応できる仕組みをつくることです。小さな犯罪を見逃さず、社会全体の治安を底上げしたいという思いで取り組んでいます。
小さな組織だからこそできる社会貢献型の運営
――会社としての運営方針や雰囲気についてはいかがですか。
まだ小規模な組織ですが、社会貢献を軸に共感してくれるメンバーと一緒に進めています。新しいサービスなので、資金面や浸透に向けた課題は多いですが、共通の目的意識があるからこそ前向きに取り組めています。
社員とのコミュニケーションでは、「社会に必要とされる事業をしている」という意識を共有することを重視しています。自分たちの活動が社会の安全につながると実感できることが、日々のモチベーションにもなっています。
経営者の素顔 ― リフレッシュが新たな挑戦を生む
――プライベートでのリフレッシュ方法はありますか。
以前はスキーによく出かけていましたが、今は事業に集中しており、趣味よりも「Share-Ju」を根付かせることが最大の関心事です。事業そのものが自分のライフワークになっている感覚です。
それでも、息抜きの時間を完全に失っているわけではありません。家族と過ごすひとときや自然の中を歩く時間が、次のアイデアを考えるきっかけになっています。経営者にとってリフレッシュは単なる休養ではなく、新しい発想や挑戦を生み出すための大切な時間だと感じています。
防犯を超えた活用へ ― 全国展開と未来の構想
――今後挑戦したいことを教えてください。
まずは「Share-Ju」を全国に広げていくことが第一です。警察や自治体、防犯カメラメーカー、警備会社はいずれもプライバシーや契約上の制約があり、この仕組みを提供できる立場にはありません。だからこそ、民間の専門会社として普及を進めていく必要があります。
さらに将来的には、災害時の遠隔支援や地域の見守り活動との連携など、多面的な活用を視野に入れています。例えば高齢者の安全確認や子どもの登下校時の見守りといった分野でも、Share-Juが社会インフラとして機能する可能性があります。単なる防犯だけでなく、暮らし全体を支える仕組みへと発展させていきたいと考えています。