株式会社vivaphoto 代表取締役 橘田龍馬氏
「遺影写真で困る人をなくしたい」。そう語るのは、株式会社vivaphoto代表の橘田氏です。従来の遺影写真のネガティブなイメージを払拭し、シニア世代のための新しい撮影文化を育てる取り組みを進めています。撮影現場での想い、事業の特徴、そして未来の展望について伺いました。
シニア撮影に特化した「イェイ!写真アカデミー」
――現在の事業内容を教えてください。
今最も力を入れているのが「イェイ!写真アカデミー」です。これはシニア撮影に特化した学校で、元々は遺影写真を専門にしていました。しかし「死の準備」と受け取られることが多く、敬遠される声も少なくありませんでした。そこでハードルを下げ、気軽に撮影を楽しめる仕組みとしてシニア撮影を切り口に活動を続けています。
――アカデミーでは具体的にどのような取り組みをされていますか。
プロ養成講座を通じて、シニアを専門に撮影できるカメラマンを育成しています。日本人の9割が「自分は写真写りが悪い」と感じているといわれますが、それはカメラマンが笑顔を引き出せていないからです。私はモデル育成の経験を活かし、立ち方や表情、身体の向きまで徹底的に指導しています。お客様を犠牲にしないために「写真を撮られる技術」を普及させることが、自分の使命だと思っています。
プレイヤーから指導者へ――転機となった経験
――経営者になられた経緯を教えてください。
広告写真を撮るカメラマンとしてキャリアを積んでいましたが、満たされない思いを抱えていました。そんな中で「カメラマンを育てる人がいない」と気づきました。正しく導く人がいなければ、お客様の不満は繰り返される。この課題を解決できるのは自分だと感じ、指導に軸足を移したことが経営者としての転機でした。
――印象に残っている出来事はありますか。
遺影写真を撮らせていただいた方が撮影後に亡くなり、ご家族から「この写真のおかげで前を向けた」と感謝の言葉をいただいたことです。その瞬間、ファッション写真では得られなかった“人の人生に寄り添う重み”を実感しました。写真には人生を支える力がある。その気づきが今の事業の原動力です。こうした体験を積み重ねるうちに、自分の仕事が社会に必要とされているという確信が強くなりました
外注型の組織運営と人材への想い
――現在の組織体制について教えてください。
正社員を抱えず、案件に応じて外部の人材とチームを組んでいます。全国にいる認定カメラマンと連携し、それぞれの地域で活動していただくスタイルです。フリーランスや副業の方が多いので、柔軟な働き方を尊重できるのも特徴です。
――一緒に働く人に求める資質は何でしょうか。
技術よりもコミュニケーション能力を重視しています。クレームの多くは「自分を大切に扱ってくれなかった」という感情から生まれます。だからこそ思いやりを持って接し、相手を笑顔にできる人でなければなりません。技術は後から磨けても、人に信頼される姿勢は簡単に教えられないのです。また、自分の意見やアイデアを恐れず発信できる積極性も大切だと思います。
自然と向き合いリフレッシュする時間
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
自然に触れることです。山や川、海にふらっと出かけ、普段は撮らない風景をカメラに収めます。仕事から少し離れて自然の光や風景を感じると、新しいアイデアが浮かぶこともあります。写真と自然は自分にとってかけがえのない存在であり、人生のバランスを整えてくれる大切な時間です。また、最近はダンスや音楽イベントに参加して身体を動かし、心身ともにリフレッシュすることにも力を入れています。
認知度向上と大手企業との連携
――今後の展望を教えてください。
最大の課題は認知度をさらに高めることです。昨年NHKで「遺影写真革命」として紹介されたことで社会的な関心が一気に広がりました。そこから大手企業や自治体との連携が生まれ、地域イベントでの撮影会や企業の福利厚生プランに取り入れられる事例も出てきました。
現在は卒業生の認定カメラマンが各地で活動を始めており、地域密着型で家族写真を提供できる体制が少しずつ整ってきています。今後は「写真館に行くのは敷居が高い」と感じる人々にとっても、気軽に参加できる出張撮影や地域イベントを拡充し、家族や地域コミュニティの笑顔を残す活動を加速させたいと考えています。さらに、SNSやショート動画を活用して若い世代へもアプローチし、写真文化を世代を超えて広げていくことを目指しています。

