株式会社福報メディアエージェンシー 代表取締役 西本 英雄 氏
東京で培った30年のメディア経験を武器に、九州へ拠点を移し地域創生に挑む西本氏。
地方に足りないのは「情報」と「文化の発信力」だと語り、メディアやイベント、スポーツを通じて人と人を結びつけ、新しい経済や交流の土台を築いています。今回は地域の未来を照らす、その実践と想いを伺いました。
地域に必要なのは「情報量」と「文化の力」
――まず、御社の事業内容について教えてください。
福岡を拠点に、地方創生とメディア事業を組み合わせた取り組みを行っています。東京で長年メディアやプロモーションの仕事をしていましたが、11年前に福岡に移住しました。当時は安倍政権が地方創生を掲げ始めた時期で、九州出身の自分として「都市ではできないことが田舎ではできるのでは」と考え、挑戦を決意しました。
最初に直面したのは「情報不足」です。都市圏と比べて地域には情報や機会が圧倒的に少ない。だからこそ、まずは地元に特化した情報を増やし、テレビや新聞、出版社と連携しながら地域の盛り上げを目指しました。文化やスポーツは人々の共通の関心事であり、地域の団体を応援することや交流イベントを情報として届けることが、人と人を結びつけ、経済やコミュニティを動かす原動力になると考えています。
東京から九州へ キャリアを賭けた決断
――東京でのご経験から福岡に移られた経緯をお聞かせください。
東京では制作会社の代表や大手企業のブランディングやプロジェクト、マネジメントなどに携わりました。ただ、大企業の中には「変えたい」と言いつつ、実は変わりたくない組織も多く、結果を出しても受け入れられないという場面も多々ありました。新しいものを生み出そうとしても受け皿がなく、限界を感じたのです。
そこで「第二の人生は九州で」と決意しました。100人中100人に反対されましたが、地域にこそ可能性があると信じ、裸一貫で福岡に移住しました。すると文化やスポーツを軸にしたプロジェクトの需要は確かにあり、媒体や番組制作、地域に根ざした情報発信を形にできました。今では「地方創生の専門家」として、事業開発やメディア運営を続けています。
小さな組織でつくる大きなインパクト
――組織運営について教えてください。
社内メンバーは5名程度で、クリエイターやディレクターは長年付き合いのある外部パートナーと委託契約で動いています。特徴的なのは、プロジェクト単位でチームをつくり課題解決に取り組むことです。
地域の課題は身近で生活に密着したものばかりです。情報、教育、少子高齢化、環境といったテーマを「寺子屋教育」のように小さな単位から解決する。大切なのは関わる人一人ひとりの自律心で、ラグビーや舞台づくりと同じように、全員が主役となって責任と主体性を持つことを重視しています。
文化と自然に癒される時間
――最後に、プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
車やバイクが好きで、週末は九州各地を走りながら自然や文化に触れることが一番の癒やしです。1日で1000キロ近く走ることもありますし、温泉や地元の食に出会う旅は心を豊かにしてくれます。音楽や映画、演劇といったカルチャーにも積極的に触れ、自ら地域映画を撮ることもあります。
特に福岡・久留米や筑後川流域は歴史や文化の宝庫で、館船ツアーや地域映画の舞台としても魅力的です。ラグビーW杯等で来日した海外の観光客も「田舎の文化体験」に強く惹かれることを実感しており、日本の地域が持つ本当の価値を改めて感じています。
地域再生の未来図
――今後のビジョンについてお聞かせください。
長期的には「人口5万人以下の自治体をどう再生させるか」がテーマです。短期的には情報発信を強化し、地産地消の商流を循環させる仕組みをつくること。企業や自治体を巻き込みながら、文化や観光を切り口にしたコミュニティ経済圏を形成していきたいと考えています。
行政の施策だけでは限界があります。
だからこそ民間企業が主体となり、生活者が望む答えを示す必要がある。地域に根ざした人材や企業が有機的に手を取り合い、有志仲間で立ち上げた新しい地方創生モデル「九州創生Kプロジェクト」で、官民に明るい未来を動かしていきたいです。

