株式会社NIJIN 代表取締役 星野 達郎 氏
「教育の仕組みそのものを変えていきたいと思っています」と語る株式会社NIJINの星野氏。現在の教育業界は不登校者数の増加など、問題が山積状態に。次世代の子どもの未来を守るため日々奮闘する星野氏に事業内容や今後の展望を伺いました。
仕組みから教育を変える
——御社の事業内容について教えてください。
私たちは「仕組みから教育を変えて、教育から世界を照らす」という理念を掲げて活動しています。現在、学校教育の現場では不登校の増加や学力低下など深刻な課題が山積しています。私たちは子どもや保護者、先生のせいにするのではなく、仕組みそのものを変えることで、教育の希望を取り戻そうとしています。
私たちの強みは「教育を持ち運び可能にしたこと」です。従来、学校に行かなければ身につけられなかった社会性や学びを、パソコン1台あればどこからでも受けられるようにしました。
こういった状況を支えているのは、日本最大級の教師団体の運営、質の高い教育を可能にするメタバースの活用、そして全国25ヶ所のリアルキャンパスです。こうした掛け算によって、子どもたちに新しい学びの場を提供しています。
きっかけは、一人の子どもとの出会いから
——起業のきっかけは何だったのでしょうか?
学校で「自分を出せない子ども」と出会ったことが大きな転機でした。「優等生」と呼ばれる子や「問題児」とされる子も、実は豊かな感性や才能を持っています。しかし、学校という枠組みの中ではそれを表現できないケースが多くあります。
個人や保護者のせいにするのではなく、環境や仕組みを変えれば子どもは大きく伸びると気づきました。教育の仕組み自体を変える必要があり、その挑戦の方法が「起業」だったのです。
先生が多様な役割を担う
——社員や組織づくりで意識していることはありますか?
私たちの事業は「先生の在り方を変える挑戦」でもあります。たとえば、先生をしながら営業や広報をする、企業とつながる、マーケティングを行うなど、多様な役割を兼務します。先生という職業に固定的なイメージを持たず、組織全体で学びと社会をつなげていくことを意識しています。
教育から世界を照らす
——今後の展望についてお聞かせください。
私たちが目指しているのは、教育の選択肢を一部の子どもたちだけに届けるのではなく、すべての子どもたちが「自分に合った学び」を選べる社会をつくることです。国内では、まず1年以内に100キャンパスを整備し、将来的には2000キャンパスにまで広げたいと考えています。
その規模感が実現すれば、どの地域に住んでいても近くに学びの拠点があり、安心してアクセスできる環境が整います。近所に「任人の仲間」がいることが当たり前になり、学校以外の選択肢を持つことが自然な社会になるはずです。
同時に、海外展開も大きな柱です。とくにアフリカやインドなど、人口増加とともに教育課題が深刻化している地域に、日本発の教育モデルを届けたい。そこでは、教育があるかないかがそのまま社会の安定や未来の可能性を左右します。
生徒からの学びは、私たちの学び
——印象に残っている出来事はありますか?
学校に行けなかった子どもたちが、ここでは自分を伸び伸びと表現し、サークルをつくったり企業と連携したりしています。中学生で起業する子もいますし、小学生で英検準一級を取る子もいます。
私は教育者として、子どもたちから毎日学ばせてもらっています。自分が「ナンバーワン」になるのではなく、彼らが「オンリーワン」になって世界を幸せにしていくこと。それが私の喜びです。
教育は社会全体でつくるもの
——最後に、読者・ビジネスパーソンへメッセージをお願いします。
私たちは「教育は学校に閉ざされるものではなく、社会全体でつくるもの」だと考えています。すでに100を超えるステークホルダーと共創し、学びを社会に開いてきました。
皆さまのリソースや力を子どもたちとつなぎ、共に教育を変えていければと思います。共に教育から世界を照らしましょう。

