株式会社Paws&Prep 代表取締役 都谷 享 氏
ペットと暮らす家庭が増える一方で、災害時の備えはまだ十分に浸透していません。大切な家族の一員である犬や猫を守るために何ができるのか——その問いに真正面から向き合ったのが、株式会社Paws&Prep代表の都谷氏です。今回は、事業内容や創業の経緯、組織運営のこだわり、そして未来に描くビジョンまで、都谷氏の言葉を通じてじっくりとお届けします。
ペット用の防災グッズを中心に販売
——御社の事業内容と特徴についてお聞かせください。
Paws&Prepという会社で、ペット用の防災グッズを販売しています。今年1月に法人を設立し、3月にネットショップをオープンしたばかりのスタートアップです。まだ始まったばかりですが、世の中にあまりない商品ということもあって、ありがたいことに反響はいただいています。「ペット防災」で検索すると弊社のページが出てくるようになってきましたので、今後はいかに普及させていくかが大きな課題です。
防災グッズとしての機能を果たせるように
——商品の特徴や理念について詳しく教えていただけますか。
弊社の一番の特徴は、防災バッグにペットの写真をプリントしてお届けしている点です。防災グッズというのは買っただけで安心してしまい、押し入れにしまい込まれることが多いんです。
そうなると、いざというときに存在を忘れてしまう。そこで、「愛着が湧くデザインであれば、玄関やリビングに置いても違和感がなく、常に目に入るだろう」と考えました。かわいいわが子の写真が入った防災バッグなら、日常の中で自然に備えができる。これが私たちの理念であり、すべてのペットに防災の備えを浸透させたいという思いにつながっています。
防災とわかる、でも新しいデザインを
——業界内での御社の強みはどのような点にありますか。
既存の商品もありますが、従来のものは銀色の素材に赤十字が描かれたような「いかにも防災」といったデザインが多いんです。正直、それでは購買意欲が湧きにくい。ですが、うちの子がデザインされたグッズなら手に取りたくなるし、そのきっかけから防災意識が芽生えた、というお声もいただきます。そこが弊社の大きな強みだと思います。
つらい経験で感じた想いが起業のきっかけに
——起業に至ったご経緯を教えていただけますか。
私は香川県出身で、もともとはギター職人を目指して大阪の専門学校に通っていました。そこで木材の減少や環境問題を知り、21歳の頃から環境活動に興味を持つようになりました。その後、仲間とNPOを立ち上げ、音楽イベントを通じてブラジルの植林活動を支援しました。29歳まで続け、現地農家とつながったことで大阪でカフェを経営するようになったのですが、コロナ禍で打撃を受け、さらに愛猫の看病も重なり、地元に戻ることにしました。
看病生活の中で「ペットと過ごす時間の尊さ」を改めて知りました。同時に、これまでの経験から「人や動物の役に立つことを事業にしたい」と思うようになり、ペット関連の事業に取り組むことを決めました。2023年に愛猫を見送りましたが、その思いは途切れることなく、2025年1月に会社を設立するに至りました。
全国規模の展開を目指して
——今後の事業展開についてお聞かせください。
まずは現在のバッグに加え、ハーネスやケージといったアイテムにも広げていきたいです。SNSの活用やイラストレーターとのコラボレーションも構想していますし、展示会にも積極的に出展したいと考えています。BtoCだけでなくBtoBでも営業会社と連携し、全国規模で展開できるように準備を進めています。
防災は日常の延長にあるもの
——それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。
防災は「特別なこと」ではなく、日常の延長にあるものです。かわいいペットのためにできることを、日常の中に自然に取り入れていただけたらと思います。その小さな一歩が、大切な命を守ることにつながります。

