合同会社YOCTO 代表 松村 友和 氏
様々なシステムの保守・開発から子ども向けプログラミング教育まで。幅広い領域で「小回りの利く開発」と「人材の育成」を手掛けるのが合同会社YOCTOです。北九州を拠点に活動する松村友和氏は、20年のサラリーマン経験やカフェ経営を経て40歳で起業。自身の経験を土台に、AI時代に対応する教育と開発のあり方を模索しています。今回はこれまでの歩みや組織観、今後の展望について伺いました。
受託開発と教育事業の二本柱
――事業の内容について教えてください。
現在はシステムの受託開発が事業の半分を占めています。特に医療分野に強みを持ち、電子カルテや予約管理、薬局向けシステムの構築・保守を行っています。加えて、子ども向けのプログラミング教室も展開しており、北九州を中心に5教室を運営。延べ数百名の子どもたちにプログラミングを教えてきました。
小規模だからこそ、小回りの利く対応や直接経営者とやり取りできる体制を強みとしています。最近はAIやローコード開発の普及に伴い、顧客企業の内製化ニーズにも応える形で新しい提案を進めています。さらに、地域の学校や学童との連携も進め、教育を通じたコミュニティづくりにも力を入れています。受託開発と教育事業を両輪に据え、システム技術を次世代につなぐ循環を目指しています。
サラリーマンから起業家へ キャリアの転機
――起業に至る経緯を教えてください。
私は約20年間、クレジットカード会社で社内SEを務めてきました。その後、組織の統合により東京への転勤を打診されたことをきっかけに、地元・北九州での独立を決意しました。最初に手掛けたのは意外にもカフェ経営です。雇用契約というシステムの限界を感じ、コワーキングといった新しい働き方を模索したいと思い、地元の人が集まり交流、仕事ができる場所をつくりたいと思ったのが始まりでした。
ただ飲食経営を通じお客様と触れ合うことで、いわゆる実業といわれる事業に対し、「システムは黒子として事業を支えている」ということを改めて実感しました。ユーザーとしての経験を踏まえ、システム開発を提供する側に戻ったことで、自分が果たせる役割をより明確に理解できたのです。
――経営を始めて印象に残っていることはありますか。
地域の小さな商店や事業者が街の活気を創り出し、その地域を支えている姿を間近で見たことです。システムはそうした事業者を陰で支える存在であり、その意義を改めて強く感じました。
組織は小さく柔軟に
――組織運営に対する考え方を教えてください。
現在は基本的に私一人が中心で、プロジェクトごとに外部人材とチームを組むスタイルをとっています。雇用契約ではなく業務委託を活用し、リモートでの協働を進めています。
雇用関係に依存しない組織をどう形成するかは大きな課題です。帰属意識や信頼をどう築くかを模索しながら、コミュニティ的な活動も並行して展開しています。社員を抱えずとも強いチームを維持できる形を追求していきたいと考えています。
AI時代を見据えた新しい挑戦
――今後の展望について教えてください。
システム開発の現場ではAIやローコード化が進み、従来の人手に依存した開発は大きく変わろうとしています。その変化を踏まえ、私は「AIを活用したシステム開発教育」に力を入れたいと考えています。
企業の内製化を後押しする教育や、フリーランスとして活動する人材がAIを使いこなせるようにする取り組みです。子ども向けプログラミング教室もその流れの延長線上にあり、次世代を担う人材が自由に開発できる環境を整えていきたいと思います。
3年後には売上を現在の5倍に伸ばすことを目標に掲げています。その実現には営業力やリソース確保の課題を乗り越える必要がありますが、人を雇わずとも持続的に拡大できる仕組みをつくることに挑戦したいです。
経営者の素顔とリフレッシュ
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
バイクが趣味で、1200ccの大型バイクでツーリングを楽しんでいます。特にキャンプ道具を積んで出かけるソロキャンプは格別の時間です。自然の中で過ごすことで気持ちがリセットされ、新しい発想や活力につながっています。家族との時間も大切にしており、3人の子どもと過ごす日常が、仕事への大きな原動力になっています。
地方からでも新しい挑戦を続けられることを示し、未来を担う子どもたちや地域の人々に勇気を与えられる存在でありたいと考えています。

