YYファミリーキッチン株式会社 代表取締役 籔本由美氏
横浜市を拠点に、保育園や幼稚園のお迎え時間に合わせてミールキットを提供するユニークな事業を展開するYYファミリーキッチン株式会社。代表の籔本由美氏は、長年の保育士・園長経験を経て、子育て家庭の「食」の課題に取り組んでいます。家族の笑顔を支える思いや未来へのビジョンについて伺いました。
保育園から生まれた新しい食支援の形
――現在の事業内容や理念について教えてください。
当社はまだ設立から1年ほどの若い会社です。横浜市内の保育園や幼稚園を中心に、お迎えの時間に合わせて家事負担を軽減できるミールキットを提供しています。野菜は小分けで子どもや高齢者でも扱いやすく、家庭で一緒に料理をするきっかけにもなっています。
理念として掲げているのは「家族みんなが笑顔になる」「家族の絆を深める」「家族みんなで健康になれる」という三つの思いです。今の家庭では孤食や会話の少ない食卓も増えています。毎日でなくても、週に一度でも家族が揃って食卓を囲めるようにしたい。そのきっかけを提供できるのがミールキットだと考えています。
園長経験から起業へ ― 食と子育て支援に込めた想い
――起業に至った経緯をお聞かせください。
私はもともと保育士として働き、その後は園長として複数の保育園の立ち上げを経験しました。専業主婦を経て現場に戻る中で、保護者の方々の「料理が苦手」「レシピがわかりづらい」といった悩みを数多く耳にしました。そこで、食事の負担を減らす仕組みを作りたいと考えたことが起業のきっかけです。
経営者になるつもりは正直ありませんでしたが、新しいものをつくることに挑戦しているうちに自然とこの道に進んでいきました。もし最初から大変さを理解していたら踏み出せなかったかもしれません。今は一つひとつ課題を乗り越えながら、「食を通じて家族を支える」という使命感を持って取り組んでいます。
小さな組織だからこそ大切にする関係性
――社員やスタッフとの関わりで意識していることはありますか。
現在は私のほかにアルバイトスタッフ数名で運営しています。元保育士の方も多く、それぞれ育児や介護など事情を抱えているので、働ける時間やスタイルを尊重しています。保育園時代から「できるときに、できる範囲で」という働き方を大切にしており、今の会社でもその考えを引き継いでいます。
コミュニケーションにおいては、Zoomや対面での会話を重視しています。業務連絡だけでなく雑談や近況を共有することで信頼関係が深まります。社員には「人の役に立ちたい」という気持ちを持つ方が多く、その思いを大切にしながら互いに支え合える環境をつくるよう心がけています。
茶道に学ぶ心の整え方
――プライベートでの趣味やリフレッシュ方法を教えてください。
母の影響で茶道を長年続けています。お茶を点てるだけでなく、掛け軸や季節の花を飾るなど総合的な日本文化に触れられるのが魅力です。心を落ち着かせ、頭を整理する時間にもなっています。
今後は、保育園での茶道体験を広げてほしいという依頼もあり、冬から取り組みを始める予定です。茶道を通して日本文化の大切さを次世代に伝えることは、食と同じように私のライフワークの一つだと感じています。
保育園の人気メニューを家庭へ広げたい
――今後の展望について教えてください。
直近の目標は、より多くの園でサービスを展開していくことです。これまではつながりや紹介から広がってきましたが、今後は新規園への営業を積極的に進めていく必要があります。保育園の先生方は忙しく、販売導入へのハードルは高いですが、園にとっても「保護者支援」や「特色づくり」につながると考えています。
将来的には「保育園の人気給食を家庭に届ける」仕組みをつくりたいです。横浜市には優秀な栄養士や管理栄養士が数多くおり、その知見を家庭にも広げられれば、家族がより健康に、笑顔で過ごせるようになります。さらに、地域の特色あるメニューや旬の食材を活かした商品開発にも挑戦し、家庭に“横浜らしさ”を届けられるようにしていきたいです

