みさきのPOP株式会社 代表取締役 遠藤みさき氏
効率化やDXが進む一方で、人の温もりを感じられる「手書き」の価値が再び注目されています。
みさきのPOP株式会社は、紙とペンによる手書きPOPを通じて、企業や地域の課題解決に取り組むユニークな存在です。
デザイン制作だけでなく講師業としても全国を飛び回る代表・遠藤氏に、事業の現状から経営哲学、そして今後の展望について伺いました。
目次
手書きPOPで人の心を動かす ― 事業の現状と方針
――現在の事業内容とその特徴についてお聞かせください。
当社は「手書きPOPの制作」と「講師事業」の二本柱で成り立っています。制作では企業様の商品やサービスの魅力を引き出すデザインを提供し、講師事業では個人向けの教室から、企業研修、商店街や道の駅、農家の方々を対象とした研修まで幅広く行っています。現在は制作と講師が半々の割合ですが、今後は講師業をさらに強化していきたいと考えています。
――業界内での御社の強みはどのような点でしょうか。
私たちは「完全な手書き」にこだわっています。PCで作れる「手書き風」とは異なり、紙とペンで書いたからこそ伝わる温かみがあるんです。企業様と一緒にPOPを制作している経験から、読みやすく・親しみやすく・きちんとした文字を書けることも強みです。お客様からは「社員が書いたように自然で温かい」とよく言っていただきます。
偶然の出会いが導いたキャリア ― 経営者としての歩み
――経営者になられた経緯を教えてください。
もともとはCDショップの店員で、店内販促の一環としてPOPを書き始めました。その後、販促部に異動し専門的に担当しましたが、退職時にはもう手書きPOPには関わらないと思っていたんです。ところが、アルバイト先のデザイン会社に「POPを書ける人はいませんか」と依頼が来て、仕事として成り立つと知ったのが最初の転機でした。
次の転機はフリーランス期。商工会議所から突然「POP研修をしてほしい」と依頼をいただき、講師業を始めました。教える経験はゼロでしたが、熱心に背中を押していただき挑戦を決意しました。結果的に、この二つの予期せぬ依頼が私のキャリアを大きく方向付けました。
――仕事をする上で大切にされている価値観は何でしょうか。
目指すのは「地域の人に愛される会社」です。拠点の所沢をPOPで元気にしたいと考えています。規模の拡大にはこだわらず、信頼できる仲間とチームを組み、お客様一人ひとりに寄り添う会社を理想としています。
少数精鋭で築く温かなチーム
――組織づくりに関してはどのように考えていらっしゃいますか。
現在は一人で運営しつつ、案件に応じてフリーランスの仲間に協力してもらっています。以前は「プロ集団を作りたい」と考えましたが、この仕事は極めて属人的で、「誰が書くか」が重要です。そのため単純に人数を増やすのではなく、事務やアシスタントの方と支え合える少数精鋭のチームを作ることを目指しています。
アナログの力を未来へ ― 今後の展望
――今後の事業展開や課題について教えてください。
今後は講師業に注力していきます。コロナ禍を経てオンライン研修が普及し、全国どこでも対応できるようになりました。3年後には売上を2倍にしたいと考えていますが、現在は広告費削減の影響で受注が落ち込み、経理や営業など本来外注すべき業務まで自分で対応せざるを得ないのが課題です。
――業界の将来性についてはどう見ていますか。
DXやAI化が進むほど、手書きの価値は際立つと確信しています。通販で商品に手書きのカードが添えられていると嬉しいですよね。その一枚がブランドへの愛着を生みます。デジタルが当たり前になるほど、アナログは心を動かす存在として必要とされるはずです。
人との繋がりを大切に ― 経営哲学と個人の時間
――経営で大切にしていることを教えてください。
「人との繋がり」です。お客様や地域社会と顔の見える温かい関係を築くことを何より重視しています。
――プライベートの過ごし方についても教えてください。
音楽ライブやフェスに行くのが好きで、良いリフレッシュになっています。エンターテインメントに触れることは仕事にも刺激を与えてくれますね。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
今は「一人でも何でもできる時代」です。法人設立やオフィス環境も手軽になり、仲間集めもオンラインで可能です。もしやりたいことがあるなら、深く悩まずにまず一歩を踏み出してみてください。その一歩が新しい未来を拓くはずです。