教育entertainment株式会社 代表取締役 伊東 泰司氏
営業で培った実践力と脳科学の知見を融合させ、人材育成に新しいアプローチを切り拓いたのが教育entertainment株式会社 代表取締役の伊東泰司氏です。ソニー生命での経験を経て研修事業を開始し、20年近くにわたりリピート率90%超という成果を重ねてきました。今回は、伊東氏が歩んできた軌跡と育成に込める思い、そしてこれからの展望を伺いました。
科学的裏付けで「研修の当たり前」を変える
――御社の事業内容について教えてください。
もともとは保険代理店の教育部門からスタートしました。営業で成果を出している人とそうでない人の違いを科学的に解明し、再現性のある形で伝える仕組みを作りたいと考えたのがきっかけです。当時は脳科学が日本でまだ十分に認知されていなかったため、怪しいと見られることもありましたが、粘り強く提案を続ける中で理解が広がり、今では「こんな研修は初めてだ」「もっと早く受けたかった」と評価いただけるようになりました。
研修では、受講者が「楽しく学べる」ことを大切にしています。私は元芸人でもあるので、笑いの要素を交えながら場を和ませつつ、科学的エビデンスに基づいた実践的なメソッドを提供しています。結果としてリピート率は90%を超え、多くの企業様に長年選んでいただいています。
トラック運転手から経営者へ
――経営者を志された経緯を教えてください。
子どもの頃は芸能界を目指していましたが、その夢は途中で断念しました。その後は長距離トラックの運転手を経験し、「このままで終わりたくない」と強く思うようになったんです。営業職に転じてからは成果が出るようになり、ソニー生命にスカウトされました。そこで培った経験をもとに独立を決意し、経営者としての道を歩み始めました。
最初は不純な動機もありましたが、今振り返ればそれも含めて必要なプロセスでした。大切なのは「自由であること」。自由を手に入れるには相応の責任や努力が伴うことを学びましたし、その気づきが今の経営スタイルの根幹になっています。
人を育てるには「断捨離」が必要
――社員や講師との関わりで大切にしていることは何でしょうか。
人材育成において一番大切なのは「相手を理解しようとする姿勢」です。脳科学的にも、理解されていると感じると人は前向きに動き、逆に理解されないと距離を置こうとします。
また、講師には「自分のこだわりを手放すこと」を求めています。器の大きさではなく、不要なこだわりを捨てて新しい学びを受け入れるスペースをつくることが重要です。私自身も常に新しい知識を吸収し、変化し続ける姿勢を示すことで説得力を持って伝えるようにしています。
未来に残すべき研修の形
――今後の展望について教えてください。
私は現在58歳で、あと7年ほどをかけて自分のプログラムを次世代へ引き継ぎたいと考えています。これまでリピート率90%以上を維持してきた研修を、体系化し、誰が実践しても成果が出せる形に整えたいのです。
AIの進化も見据えつつ、科学的根拠に基づいた育成手法をさらに発展させたい。そして、私の手を離れても「進化し続ける研修」として社会に残すことが理想です。事業を畳むというよりも、未来へとバトンを渡すイメージで取り組んでいます。
特にこれからは、AIが人の代わりに知識を提供できる時代になります。しかし、最後に人の心を動かすのは「共感力」や「理解する姿勢」といった人間ならではの力です。私はAIと人の強みを組み合わせることで、学びの質をさらに高め、時代に適応した人材育成を実現できると信じています。
車とともにリフレッシュする時間
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
車の運転が何よりの楽しみです。キャンピングカー仕様の車を持っていて、用途や気分に合わせて乗り換えています。運転中は頭が整理され、新しいアイデアが浮かぶことも多いですね。
仕事での移動は公共交通機関を利用しますが、ドライブは純粋に趣味です。リフレッシュというより、人生そのものが仕事と趣味でつながっていて、誰かが喜んでくれる瞬間があればそれが最高の癒やしになります。
今後もハンドルを握りながら、新しい景色と発想に出会い、未来に向けて挑戦を続けていきたいと思います。