CRAFH合同会社 代表 鈴木 啓晃氏
山形を拠点に、デジタルマーケティングと地方創生事業を展開するCRAFH合同会社。代表の鈴木啓晃さんは、東京で10年以上ネット広告業界に携わった経験をもとに、地元・山形へUターンして起業しました。「デジタルコミュニケーションの力で、企業や人の想いを適切に届けたい」という信念のもと、地域の未来を見据えた挑戦を続けています。今回は、その歩みと展望について伺いました。
目次
デジタルマーケティングを軸に、地方から活気を生み出す
――現在の事業内容と特徴を教えてください。
弊社では「デジタルコミュニケーションの力で、企業や人の思いを適切に届ける」ことをミッションに掲げています。主な事業は二つで、デジタルマーケティング支援と地方創生事業です。
マーケティング支援では、WEBコンサルティングを中心に、広告運用・SNS戦略・データ分析・インハウス支援などを総合的に行っています。東京で培った知見を活かしながら、地方企業や個人事業主のデジタル活用を支援しています。
もう一つの柱である地方創生事業では、かつて山形にグランピング施設を開業しました。地元の自然を活かし、県外から人を呼び込む試みです。地域経済の循環を生む“きっかけ”を作りたいという思いから始めました。現在は休業中ですが、今後も地方と都市をつなぐ新たな形を模索しています。
「人との信頼関係」がキャリアを支える原動力
――経営をするうえで大切にしている価値観を教えてください。
最も大切にしているのは、「自分を信じて相談してくれた人を裏切らないこと」です。自分の利益よりも、相手の事業をどう成功に導くかを常に考えています。成果に責任を持ち、逃げずにやり切る姿勢を貫く――それが私の信条です。
社会人になってから約20年、努力と人間関係の両輪でここまで来ました。独立直後も東京時代の仲間から仕事をいただけたのは、若い頃から信頼を大事にしてきたから。今も「人に恵まれている」と感じる瞬間が多いですね。
小さなチームだからこそ、信頼と想像力がカギ
――チーム運営で意識していることはありますか。
現在、正社員はおらず、業務委託とアルバイトを合わせて約35名のチームで動いています。プロジェクト単位で連携するメンバーが多く、10名ほどが常時稼働しています。
主体性を引き出すために心がけているのは、「役割と期待を明確に伝えること」。また、コミュニケーションの温度差を放置しないよう、違和感を覚えたらすぐに声をかけるようにしています。
以前、noteに「チームの成果を最大化するのはKPI設計よりも想像力と信頼関係の掛け算」と書きましたが、まさにその通りだと思っています。小さな組織ほど、メンバー同士がポジティブで前向きな空気を保てるかが重要。明るく支え合えるチームが、最強の成果を生み出します。
朝のジョギングと料理が、心を整える時間
――仕事の合間のリフレッシュ方法を教えてください。
最近は毎朝6時半頃に起きて、30分ほどジョギングをしています。10月には地元のハーフマラソンにも出場しました。朝の静かな時間に自然の中を走ると、頭が整理されて一日がすっきり始められます。
もう一つのリフレッシュは「料理」です。AIに冷蔵庫の写真を見せてレシピを考えてもらうこともあります(笑)。子どもが「これおいしい!」と言ってくれる瞬間が最高の癒しですね。仕事から完全に頭を離して、家族と向き合う時間を大切にしています。
AI時代だからこそ「人の温度」を届けたい
――今後の挑戦や展望についてお聞かせください。
AIの進化によって、指示ひとつで高精度なアウトプットが出せる時代になりました。だからこそ「人が介在する意味」を明確にしなければならないと思っています。AIでは代替できない“体温のある仕事”――たとえば、クライアントごとに最適な言葉を選び、心に届くコミュニケーションを設計する。そこに私たちの価値があると感じています。
今後はAI活用とファンマーケティングの融合にも注力したいです。単なる効率化ではなく、企業やサービスの“ファンを増やす”マーケティングへ。認知から獲得までの流れを再構築し、温かみあるブランドづくりを支援していきます。
さらに、「地方にいるからこそできる価値提供」にも挑戦したいと考えています。
山形をはじめとする地域には、全国や世界にまだ知られていない魅力的なブランドや人がたくさんあります。私たちはその想いや物語を丁寧に翻訳し、ローカルブランドを日本全国、そして世界へ届ける支援をしていきたい。
特に、自然・食・人の営みといった“ウェルネスの文脈”で、地域の魅力を世界に伝えていくことに強い可能性を感じています。地方に根ざしながらも、グローバルな視野で価値を発信する――それがCRAFHが描く、次のマーケティングの形です。