株式会社バズクロウ 代表取締役 宮川 博至氏
広島を拠点に映像制作を手がける株式会社バズクロウ。2007年に仲間3人で立ち上げた同社は、広告映像から映画的手法を取り入れたコンテンツまで幅広く展開し、数々の受賞歴を誇ります。代表の宮川博至氏に、会社設立の経緯や大切にしている価値観、そして未来の展望について伺いました。
広島から発信する映像制作の力
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は広島を拠点に映像制作を行っており、コマーシャル映像やショートドラマなどを手がけています。これまでは広告代理店経由の案件が多かったのですが、最近では企業から直接依頼をいただくケースも増えてきました。
強みの一つは、私自身が映画監督として活動してきた経験を活かした表現力です。映像の質や受賞歴においても、中国地方では確かな評価をいただいており、他社にはない差別化ポイントになっていると思います。加えて、限られた予算の中でも最大限に効果を出せるよう撮影体制を柔軟に最適化しているのも特徴です。企画段階からクライアントに寄り添い、ニーズに応じたチーム編成をすることで「高品質かつ現実的な映像制作」を実現しています。
根拠のない自信から始まった挑戦
――経営者になられたきっかけを教えてください。
26歳のときに、同級生や仲間と一緒に立ち上げました。当時は社会の仕組みもよく分からないまま「自分には才能がある」と思い込んで始めたのが正直なところです。最初は仕事も少なく苦労しましたが、コツコツ続けていくうちに依頼が増え、今に至ります。
――印象的な経験についても教えてください。
数年間まったく賞を取れなかった時期がありました。そのときに、受賞している方々に直接話を聞いて学び、研究を重ねたことで結果が出るようになりました。あの時期の努力が会社の大きな転機になったと思います。さらに、業界の変化や時代のニーズを柔軟に捉え、表現の幅を広げることで会社としても安定的に成長できるようになりました。
任せることで成長を促す組織運営
――社員との関係や組織運営で意識していることは何ですか。
若手社員が多い会社なので、とにかく「任せる」ことを大切にしています。クライアント案件では失敗が許されないため、自主制作を通じてたくさん失敗してもらい、その経験を次に活かせる場をつくっています。
また、日常的に全員と会話することも心がけています。映像制作はチームワークが不可欠なので、日頃から一体感を持てる環境を整えることが大事です。社員に求める資質は映像的なセンス以上に「謙虚さ」と「学ぶ意欲」。これがあれば自然と成長できると考えています。社員自身が「自分たちが会社を引っ張っている」と感じられることも意識しており、挑戦の中で自信を育んでほしいと思っています。
エンタメ性を取り入れた新しい挑戦
――今後の展望について教えてください。
これからはもっとエンタメ要素を取り入れた映像制作に力を入れていきたいです。VFXや3Dといった技術を融合させ、ショートムービーや映画的な映像表現を広げていきたいと考えています。
映像制作の世界は、誰もが手軽に撮影・編集できる時代になり、プロとアマチュアの差が曖昧になりつつあります。その中で私たちが大切にしているのは「映像に意味を持たせること」。ただ美しいだけでなく、企画や意図を込め、誰にも真似できない映像を生み出していきたいと思います。
さらに、地域の魅力を発信するコンテンツにも積極的に取り組みたいと考えています。広島をはじめとした地方には、まだ映像化されていないストーリーが数多く眠っています。それを掘り起こすことが、地域と社会をつなぐ新しい価値になると信じています。
趣味と創作で広がる視点
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
ここ2、3年で狩猟を始めました。きっかけは俳優の東出昌大さんで、彼が楽しそうに取り組んでいるのを聞いて、自分も挑戦してみようと思ったんです。冬のシーズンしかできませんが、鹿などを狙いに山へ入ると、自然の中にいるだけで気持ちが整います。銃を持って山に入る緊張感と、自然と向き合う時間そのものがリフレッシュになっています。
ただ、狩猟は冬限定なので、それ以外の季節はバイクに乗ることが多いです。晴れた日にはツーリングに出かけ、走る風や景色を楽しむことが大きな息抜きになっています。
また、映画監督として脚本を書き続けているのも自分にとって大切な時間です。経営と並行して作品づくりに取り組むことで、映像表現の幅がさらに広がると感じています。
経営者としての視点とクリエイターとしての情熱、その両方を大切にしながら、これからも「人に届く映像」を生み出していきたいです。