株式会社エスホープス 代表取締役 内田直希氏
株式会社エスホープスは、愛知県豊田市を拠点にパーソナルジムを展開し、ストレッチを軸とした独自のアプローチで地域の健康を支えています。短期間の成果ではなく「一生通える場所」を目指すことで、利用者の体づくりだけでなく、生活そのものを豊かにすることを大切にしています。本記事では、創業の経緯や組織運営の工夫、未来へのビジョンについて内田直希氏に伺いました。
健康を文化にするジム運営
――まず、事業の概要や特徴について教えてください。
当社の柱はジム運営です。直営3店舗とフランチャイズ2店舗、計5店舗を展開しています。従来のパーソナルジムは短期集中で高額な料金を支払うモデルが多いですが、私たちは「一生通えるパーソナルジム」を掲げています。ストレッチを中心に、必要に応じて筋力トレーニングや施術を組み合わせ、強くしなやかな体づくりをサポートします。
料金は地域相場より抑えつつ、週1回継続的に通っていただく仕組みです。病院や他の専門機関とも連携し、地域の「かかりつけトレーナー」として長期的に健康を支えることを特徴としています。
創業に至った想いと経営者としての覚悟
――創業のきっかけを教えてください。
私は学生時代にスポーツで怪我をしたことからリハビリや体づくりに関心を持ち、専門的に学びました。その後は接骨院とジムが併設された施設で勤務しましたが、業界の給与水準や労働環境に課題を感じていました。
31歳のとき、家族の健康をきっかけに「もっと安定した生活を築きたい」という強い思いが芽生えました。大切な仕事なのに社会的に認められにくい現状を変えたい。そう決意して2019年に独立し、現在7年目を迎えています。経営は責任の連続ですが、自らの理念を形にできる喜びがあります。
従業員の夢を起点にする組織づくり
――社員の主体性を引き出すために工夫していることはありますか。
私たちは、会社のビジョンよりも先に「社員個人のビジョン」を大切にしています。面談を通じて「どんな生活を送りたいか」「どんな家に住みたいか」「将来どんな自分になりたいか」を言語化してもらいます。その上で、会社をどう活用すれば実現できるかを一緒に考えるのです。
「会社を利用して夢を叶えろ」と伝えることで、主体的な行動が生まれます。こうして社員の個人の夢を集合させ、最終的に会社のビジョンへとつなげていく。トップダウンではなく、ボトムアップ型の経営スタイルが当社の特徴です。
新規事業と未来への展望
――今後の展望について教えてください。
ミッションの一つに「ストレッチを地域の文化にする」ことがあります。その実現のため、新たに食品事業を立ち上げました。地域の自然食品スーパーのグループのレストランと共同で、栄養バランスの取れた冷凍ダイエット弁当を開発しました。調理の負担を軽減しながら、美味しく健康を支えられる商品として販売をしています。
また、ジムの拡大も進めています。豊田市内で大型店舗を開設したほか、今後は近隣都市へのフランチャイズ展開を目指しています。3年後には売上を2倍以上に伸ばす計画です。そのためには、トレーナーごとの技量差を埋める業務の体系化や人材育成が課題となっています。
経営を続ける上での価値観と信念
――経営において大切にしていることを教えてください。
一貫性を持って発信することです。私たちは「地域で最も質の高いパーソナルをお手頃な価格で提供する」と掲げています。なぜ可能かと問われたとき、広告費や固定費を抑え、利益をメソッド開発に投じているという根拠を明確に示せます。イメージだけでなく、説明できる裏付けがあるブランドをつくることを意識しています。
――最後に、これから起業を目指す方へメッセージをお願いします。
まず自分がどうなりたいかを明確にし、人前で語れる勇気を持つことが大切です。社会のために尽くすことももちろん重要ですが、まず自分が満たされていなければ他人を支えることはできません。勇気を持って語り続け、諦めない限り夢は「終わり」ではなく「途中」なのだと考えています。
自分を幸せにする道を歩みながら、その先にある他者や社会への貢献につなげていく。そうした循環を築ける人が、これからの時代に強く生き抜いていけるのではないでしょうか。