株式会社Pie Systems Japan CEO 水野 博商氏
訪日旅行者と日本の事業者をつなぐプラットフォームを提供するPie Systems Japan。モバイルアプリによる免税電子化サービスを軸に、観光体験の新たな価値を創出している。同社が目指すのは、観光業そのものをデジタルの力で“スーパーチャージ(再活性化)”すること。今回は、水野博商代表に、事業のビジョンや組織づくりへの思いを伺いました。
観光を再構築する、デジタルの力
――現在の事業内容と特徴を教えてください。
当社は、訪日旅行者と日本の事業者をつなぐプラットフォームを構築しています。主軸となるのは、モバイルアプリを活用した免税電子化サービスです。外国人旅行者がアプリ上で簡単に免税手続きを完了できる仕組みを業界に先駆けて導入し、観光客と店舗をスムーズに結びつけています。
この仕組みを通じて、これまで大都市や大型商業施設に集中していた購買を、地方や中小規模の店舗へと広げることができる点も特徴です。観光地に埋もれている“地域の魅力”を再発見し、データの力で地域経済を底上げしていくことを目指しています。
観光業は、サービス業であると同時に「文化産業」でもあります。だからこそ、テクノロジーだけでなく、人の温度を感じる仕組みづくりを大切にしています。
「外の力」で変化を起こす
――経営者としてのキャリアや思いを教えてください。
私は創業者ではありませんが、外資系企業の日本立ち上げを数多く経験してきました。海外の文化や価値観を日本に持ち込むことで、国内の産業に新たな“外圧”が生まれ、そこから大きな進化が起こると実感してきたからです。
PayPalの日本立ち上げ期にも携わりましたが、当時オンライン送金は「怖い」と言われていた時代。しかし、その挑戦がのちにフィンテック産業の発展につながりました。
異なる文化が交わることで価値観が揺さぶられ、結果として業界全体が変わっていく。Pie Systems Japanでも、そうした“異文化の化学反応”を促す存在でありたいと思っています。
祭りのように動く組織をつくる
――組織運営で意識していることを教えてください。
官僚的な組織にはしたくありません。社員一人ひとりが「自分ごと」として動き、考え、決断することが大切だと考えています。
それぞれの分野で優秀なメンバーが集まっているからこそ、私は指示ではなく“信頼”で組織を動かす。横の連携は、まるで「祭りの神輿を担ぐ」ような関係性でいたい。誰が上でも下でもなく、その瞬間に必要な役割を見つけて動ける -そんな有機的なチームづくりを目指しています。
また、個々のスキルを掛け算できる環境づくりにも力を入れています。エンジニアがマーケティングを学び、営業がデザインを理解する。そうした越境的な発想が、事業を柔軟に進化させる原動力になります。
グローバル視点で、日本の価値を高める
――今後の展望を教えてください。
観光を「モノ消費」から「コト体験」へと広げ、日本の魅力を世界に届けたいと思っています。地方の文化や食、体験こそが、訪日旅行者の心を動かすコンテンツになるはずです。
また、海外の企業や自治体とも連携し、観光DXを共創する流れも生まれています。データをもとに観光動向を可視化し、地域が自ら戦略を描ける未来をサポートしていきたいです。
今後もスピード感を持ちながら、海外と日本の架け橋として、ツーリズム産業の進化に挑戦していきます。
視野を広げる旅が、自分を整える
――リフレッシュ方法を教えてください。
海外旅行です。異なる文化や価値観に触れることで、自分の思考が固まっていたことに気づかされます。スペインやタイ、フィリピンなど、アジア圏を中心に訪れていますが、どの国にも若者のエネルギーがあり、学ぶことが多い。
旅は自分を見つめ直す時間でもあります。新しい環境に身を置くことで、発想が広がり、仕事のヒントも自然と浮かんでくる。環境を変えることが、最も良いリフレッシュになると感じています。
“水のように柔軟に流れながら変化していく”――その姿勢を大切に、これからも挑戦を続けていきます。

