うみらぼ株式会社 代表取締役 川野晃太氏
伊勢志摩という海と共に生きる地域で、「次の100年をつくる」ことを掲げるうみらぼ株式会社。宿泊施設の運営や企業研修の受け入れを通じて、地域と外部人材を結びつけ、海洋分野の課題解決に取り組んでいます。代表の川野晃太さんに、事業の現状や理念、そして未来に向けた挑戦について伺いました。
地域に根ざしながら外とつながる
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
使われなくなった真珠養殖場をリノベーションし、宿泊施設を運営しています。企業や教育機関からの研修も受け入れ、滞在を通じて地域と人との接点を生み出すことを目指しています。また、海の技術研究を進める「マリンテックインキュベーションラボ」として、スマート養殖やAIロボティクス、環境保全といった分野にも力を入れています。
利用企業の中には、地方での合宿を通してチームの結束を高めたいと考えるベンチャーや大手企業もあり、合宿研修は「自然に囲まれた集中環境」と「地域との交流」という二つの価値を提供しています。こうした場づくりが、単なる宿泊事業を超えて、未来志向の人材育成にもつながっています。
「地域の次の100年をつくる」を目指し、今必要な取り組みを一つひとつ積み上げています。伊勢志摩は世界で初めて真珠養殖を成功させた地であり、海のイノベーションが根付いた場所です。そうした土壌を背景に、地域と外の企業や人材を結ぶハブとしての役割を担っています。
後継として歩み始めた背景
――事業承継された経緯をお聞かせください。
もともと祖父の代から真珠養殖を営んでいました。自分なりに形を変えて地域が求める機能を考えた結果、今の「うみらぼ」の形に行き着きました。最初から後を継ぐことを考えていたわけではありませんが、多くの方と一緒に動く中でコミュニティができていきました。
仕事をする上で大切にしているのは、人や場所の可能性を引き出すことです。研究者やデザイナー、教育関係者など、さまざまな人が関わることで価値観が交わり、新しいアイデアが生まれます。その多様性を活かす仕掛けづくりを意識しています。
小さな組織だからこそできる柔軟性
――組織運営やメンバーとの関わり方で意識している点はありますか。
常時いる従業員は3名と小規模ですが、プロボノや業務委託などで10名ほどが関わっています。それぞれの強みや関心を尊重し、やらされ仕事ではなく「自分にとって意味のある関わり方」を見出せるようにしています。
細かい指示を出すよりも、自ら考え、動ける自由度を大切にしています。背景には、海や地域の課題はあまりに大きく、多様な知恵を掛け合わせる必要があるという思いがあります。
次の100年に向けて描く未来
――今後の展望について教えてください。
地域の課題や海洋のテーマは、自分たちだけでは解決できません。だからこそ、国や自治体、大学、スタートアップなど多様なステークホルダーと連携し、プロジェクトを進めることが欠かせないと考えています。
課題は「自分たちがやるべきこと」と「外部と組むべきこと」を見極めること。そのうえで、うみらぼがハブとなって人や技術をつなぎ、海から社会全体に価値を広げていきたいです。企業研修や合宿事業もその延長線上にあり、参加者が地域や海の持つ新たな可能性に気づく場を提供することで、未来の人材育成にも貢献していきます。伊勢志摩から生まれる小さな実践が、やがて大きな社会変革につながることを信じています。
人との出会いが最大のリフレッシュ
――プライベートのリフレッシュ方法を教えてください。
一番のリフレッシュは「人に会うこと」です。全く知らない世界を知ったり、新しい価値観に触れたりすることで気持ちや頭が切り替わります。単なる休息というよりも、自分を新しくする時間になっていると感じています。そんな偶然の出会いから、今の組織づくりや経営に生きているとも思います。

