株式会社YAOHACHI 代表取締役 浅井慎哉氏
株式会社YAOHACHIは、全国へ青果を届けるオンライン販売を軸に、フードロス削減や野菜や果物などの飲食料品の物価高騰問題に挑戦する企業です。広告代理店から青果業界へ転身した浅井慎哉氏は、友人との挑戦をきっかけにネット通販に活路を見出しました。コロナ禍で需要が急増するなか、品質保持や顧客対応といった課題にも向き合いながら事業を拡大しています。今回は、これまでの歩みや大切にしている価値観、そして未来の展望について伺いました。
目次
SNS上で拡がる食料品の物価高による生活苦問題解決とフードロス削減に挑む
――現在の事業について教えてください。
当社は全国に向けて野菜や果物を販売しています。楽天市場やAmazonにも出店しており、9周年を迎えた本年より野菜、果物のオンラインガチャ事業、個人のお客様から飲食店向けの販売まで幅広く対応しています。元々は野菜の詰め合わせから始めましたが、需要の拡大に合わせて業態を広げてきました。
特徴的なのは「普通の八百屋で終わりたくない」です。大手では時間がかかることも多いですが、当社は当日仕入れ・当日出荷を徹底し、翌日には届く体制を整えています。無在庫販売ではなく、売れた分だけを仕入れる仕組みでフードロスの削減にもつなげています。
品質管理には特に力を入れています。夏場にはトラック内の温度が80度近くまで上がることもあり、保管や配送方法には大きな工夫が必要です。厚生労働省が推奨する「HACCP」方式に準拠しつつ、現場で培ったノウハウを取り入れながら改善を重ねています。
広告代理店から八百屋へ。転身の原点
――青果業界に入られた経緯を教えてください。
元々は東京で広告代理店に勤めていましたが、30歳のときに青果店に転職しました。その後、友人の勧めでネット通販に挑戦し、思いがけず売上が伸びたことがきっかけで独立しました。地元が農業地帯で、友人や知人の紹介で農家とつながれたのも大きかったです。修行期間も含め、基盤づくりに恵まれていたと思います。
――経営で印象的だった出来事はありますか。
やはりコロナ禍です。外食産業が打撃を受ける一方で、自宅で野菜を買う需要が急増しました。全国的に需要が動いたことで売上が一気に伸び、チャンスをつかむことができました。ただ、その分、品質維持や物流の難しさ、顧客対応の負担も増えました。
ネット販売では「思っていた味と違うので返金してほしい」という声も多く、顧客対応は常に課題です。店頭販売とは違い顔が見えない分、注文後の対応や返品処理に神経を使います。同業他社も共通で悩んでいる部分だと思います。
組織とコミュニケーションのあり方
――社員や関係者とのコミュニケーションで意識していることは何でしょうか。
現在は少数精鋭で運営しています。中学時代からの友人と一緒に事業を続けていますが、公私混同しないように業務を明確に分担しています。私は顧客対応や受注を中心に、友人は仕入れや卸先を担当しています。
生産者との関係づくりも大切です。以前は地方の農家を訪問して契約を交わしていましたが、今はSNSやDMでのやりとりが中心になりました。長年続く契約農家に支えられているからこそ、安定的に品質の良い商品を提供できています。
経営者としての価値観とリフレッシュ
――経営において大切にしている価値観は何ですか。
「調子に乗らないこと」です。売上が多くても少なくても、感情的にならず現状に満足しない姿勢を大事にしています。従業員を抱えていた時期もありますが、どんな状況でも冷静さを保つことが経営者として重要だと感じています。
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
今は仕事中心の生活ですが、犬の散歩が唯一のリフレッシュです。また、株式投資も趣味で、上場企業の事業内容や経営戦略を学ぶことが刺激になっています。経営者として常に学び続ける姿勢を忘れないようにしています。
悪い時こそ真価が問われる。未来への展望
――今後の展望について教えてください。
今は「次の若い世代がどこまで続けられるか」が大きな関心です。農業や青果の世界は自然との戦いであり、台風や盗難など一度の被害で大きく揺らぎます。経験をしていない若い人ほど、困難に直面したときにやめてしまう可能性が高い。だからこそ、悪いときにこそ踏ん張れる力を持ってほしいと思います。
新たな挑戦としては、メタバース空間での商店街構想を検討しています。仮想空間で青果を購入できる仕組みをつくれば、新しい顧客体験を提供できると考えています。莫大な資金が必要ですが、夢の一つとして取り組みたいと思っています。

