人の尊厳を守るケアを追求して──医療の隙間を埋めるリンパケアの挑戦

一般社団法人バラカメディカル 代表理事 今村さあら氏

がん治療後のリンパ浮腫ケアという、医療の隙間を埋める分野に取り組む一般社団法人バラカメディカル。代表の今村さあら氏は、患者一人ひとりの「尊厳ある生活」を支えるために、医療者と患者をつなぐ新しいケアの形を模索しています。その歩みには、現場で見てきた苦しみと希望、そして“命に寄り添う”という強い使命感がありました。詳しくお話を伺いました。

医療の隙間を埋める「尊厳を支えるケア」

――現在の事業内容について教えてください。

当法人は、がん治療後のリンパ浮腫ケアを中心に、福祉用具事業や教育・講座などを展開しています。割合としてはリンパ浮腫ケアと教育事業がおよそ半々で、患者さまの生活の質を守るため、医療とリハビリの間をつなぐサポートを行っています。

――独立に至るきっかけは何だったのでしょうか。

リハビリ専門職として勤務していた病院で、末期がんの患者さんに出会ったことが原点です。当時は「がんを治すこと」だけが目的で、治療後の後遺症ケアに目が向けられることはほとんどありませんでした。

その方が腕を動かせず、食事も着替えもままならない姿を見て、「このままでいいのか」と強く感じたのです。調べるうちに、ヨーロッパではすでにリンパ浮腫専門のセラピストが治療を担っていると知り、自分もその道を志しました。

保険診療では入院中しか対応できない現状を変えるため、2018年に独立。医療と自費治療の両面から、生活に寄り添う支援を続けています。

患者の声に導かれて──現場で見つけた使命

――経営者として印象的だった出来事はありますか。

独立当初は採算が取れず、訪問看護ステーションでパート勤務をしながら続けていました。それでも「困っている声を放っておけない」という気持ちだけで踏ん張ってきました。

あるとき、中国から来日した男性患者さんを担当したのですが、言葉の壁を越えて信頼関係を築けた経験は忘れられません。末期の状態でも「もう一度自分の足で歩きたい」と強く望まれ、医療連携を通じて支援しました。最後まで前を向いて生き抜く姿から、人間の尊厳とは何かを改めて学びました。

――患者さんとの関わりの中で、心に残っている言葉はありますか。

あるご高齢の女性が「桜の色に気づいた」と話してくれたことです。病気や孤独の中で心が白黒になっていたけれど、治療を通して世界に再び色が戻った──その言葉に胸を打たれました。
私たちのケアは、身体だけでなく心の回復でもあるのだと実感した瞬間でした。

医療者と患者をつなぐ「間の支援者」として

――仕事の中で大切にしていることは何でしょうか。

医療従事者との連携を何より重視しています。リラクゼーションの側面もありますが、あくまで病気を抱える方に関わる以上、医師や看護師との情報共有が欠かせません。

報告書を通じて回復の経過を伝えると、紹介してくださった先生方も「早くケアにつなげよう」と考えてくださるようになります。患者さん・医療者・セラピストが互いを尊重し合える関係づくりこそ、私の役割だと感じています。

――組織運営についてもお聞かせください。

スタッフと協力して事業を進めた時期もありましたが、「思いを共有する難しさ」を痛感しました。患者さんにとっては1時間のケアが1週間の希望になる。その重みを忘れずに取り組める仲間を育てることが、今後の大きな課題です。

別府から全国へ。持続可能なケア体制を築く

――今後の展望について教えてください。

現在は福岡と別府の2拠点で活動しています。別府市では専門医の退職により、県内の治療施設が一時的にゼロになりました。その現状を見て、いてもたってもいられず新たに拠点を立ち上げました。

今後は人材育成と病院内の治療体制づくりに注力し、持続可能なケアモデルを確立したいと考えています。秋からはスクール事業を始動し、次世代セラピストの育成にも取り組みます。1対1の治療にとどまらず、支援の輪を全国に広げていきたいです。

癒しと向き合う時間

――リフレッシュの時間はありますか。

ほとんど仕事一色の生活ですが、今年から保護犬を迎えたことで生活が少し変わりました。仕事以外の写真がスマートフォンに増えたのは初めてです(笑)。ただ触れているだけで心が穏やかになり、患者さんたちにも「先生にも癒しができてよかったですね」と言われます。

仕事も人生も、人とのつながりが支えてくれるもの。これからも一人でも多くの方が“自分らしく生きる力”を取り戻せるよう、現場から挑戦を続けていきたいと思っています。

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