一般社団法人日本レセプト学会 代表理事 大友 達也氏
一般社団法人日本レセプト学会は、診療報酬や介護報酬といった日本の医療・福祉制度を多角的に研究し、未来の社会保障のあり方を探る学術団体です。制度の分析にとどまらず、人材育成やDX推進、国際連携など幅広い活動を展開しています。今回は、学会を率いる大友達也代表に、設立の背景や研究の特徴、そして日本の医療が向かう未来について伺いました。
目次
医療・介護の「過去・現在・未来」をつなぐ学術団体として
――まず、学会の概要や活動内容について教えてください。
当学会は、日本の医療・介護分野における診療報酬や介護報酬、医療費制度などを研究する学術団体です。研究といっても単なる制度分析にとどまらず、医療現場の運営課題やDX化、人材育成までを含めた総合的な視点で取り組んでいます。会員の約3割は医師・歯科医師で、残りは医療事務や介護職員、企業関係者といった幅広い層が参加しています。
特徴的なのは、「過去から未来までを見据えた研究」を行っている点です。たとえば、学会では明治時代の診療明細書を発見し、医療費の歴史的変遷を研究してきました。さらに、海外での国際学術大会を通じて、AIやICTなど先進的な医療DXの動向を収集。日本の未来を見通すには、海外の現状を見ることが重要だと考え、北欧・スウェーデンにも研究所Sweden Medicare Institute (SMCI)を設立し、社会保障制度の比較研究を進めています。AIによって、未来の疾病予測などの研究が始まっていますが、そうなればカルテやレセプトも未来の予測情報が反映される可能性もあるため、過去、現在、未来の横断的な視点で業務が生まれる可能性があると考えており、現在情報収集をしています。
「日本の医療制度を守るために」――設立の原点
――学会設立のきっかけを教えてください。
2017年、医療制度の行く末に危機感を抱いた研究者たちが集まり、立ち上げたのが始まりです。当時、「レセプト(診療報酬明細書)」を中心とした研究機関が日本には存在せず、この分野を放置すれば日本の医療制度が崩壊しかねないという危機意識がありました。
営利目的ではなく、純粋に「日本の医療・福祉をどう持続させるか」という思いが出発点です。研究と同時に、人材育成にも力を入れており、「レセプト管理士」「医療管理士」などの資格を認定。医療政策や福祉政策を体系的に学び、現場で生かす力を育てています。最近ではAIを活用した「AIレセプト管理研修」も開始し、全国から医療関係者が参加しています。こうした研修を通じて、制度研究を“現場で活かす”人材を育てていくことが、学会のもう一つの使命です。
学会運営の基盤は「協働」――企業との連携で広がる活動
――組織運営や広報活動で意識していることを教えてください。
研究活動や資格認定を進めるうえで、企業や他団体との連携を重視しています。たとえば、株式会社Medical AI LAB社とは業務提携し、AIを用いたレセプト管理システムの開発を共同で推進。また、医療系企業と協業し、資格取得者に特典を設けるなど、互いの強みを活かした形で広報・営業を行っています。また、株式会社ケアネット社と業務提携し、「しろぼんねっと」という診療報酬の情報サイトからも広報を行っております。
従来のようにチラシや郵送で周知する方法ではなく、他学会や医療系メディアとのコラボレーション、講演活動などを通じて認知を広げています。私自身も積極的に講演に登壇し、学会の理念を直接伝える機会を増やしています。こうした“協働”によって、学術団体としての社会的信頼を築くことができると考えています。
目指すのは「誰もが知る学会」へ
――今後の展望やビジョンをお聞かせください。
収益を目標にするのではなく、「社会にとって必要なことをする」ことを第一に掲げています。AIレセプト管理研修のような新しい取り組みを通じて、医療現場に実際の変化を生み出すこと。その結果として会員数が増え、認知が広がっていけば理想的だと考えています。
3年後には、全国の医療機関や福祉施設が「日本レセプト学会を知っている」「自分たちも入会している」と言えるような存在になることを目標としています。1万人規模の会員組織を目指し、研究の質と発信力をさらに高めていきます。
車を通じて“頭を切り替える”――研究者としてのリフレッシュ法
――多忙な毎日の中で、どのようにリフレッシュされていますか。
趣味は車です。ポルシェなど複数の車を所有しており、用途や気分に合わせて乗り分けています。(日常はエコカーです)単なる趣味というより、ビジネスツールとしても活用しています。たとえば、交渉や打ち合わせに行く際、信頼感を演出する手段にもなりますし、移動時間が頭を整理する貴重な時間にもなっています。健康を維持するために、ストレスの解消のひとつにもなっていますが、多忙な日が多く、残念ながらドライブに行く機会は非常に少ないです。
研究者として、そして経営者として多忙な日々の中でも、「リフレッシュして気分を引き上げること」を忘れずにいること。それが、新しい発想を生む原動力になっています。これからも、過去と未来をつなぐ研究を通じて、日本の医療と福祉に新しい光を灯していきたいと思います。

