株式会社プライムコム 代表取締役 網野麻理氏
株式会社プライムコムは、「ホスピタリティを科学する」を掲げ、人材育成・研修事業とBPO(業務アウトソーシング)の2軸で事業を展開しています。カード会社で培ったVIP顧客対応の経験をもとに、接客・営業の品質向上を支援する同社。代表の網野麻理氏は、「おもてなしの心を世界に伝えたい」という思いで、企業研修やコーチングの現場に立ち続けています。今回は、同社の理念や事業の特徴、そして未来への展望について伺いました。
目次
ホスピタリティを軸に、企業の“真の課題”を解決する
――まずは、現在の事業内容と特徴について教えてください。
メインは企業研修と人材育成支援です。管理職向けのコーチング研修や、店舗・営業部門に対する接客品質向上の研修などを行っています。特徴的なのは、研修に入る前に必ず「現場診断」を行う点です。覆面調査や電話応対の実態を確認したうえで、本当の課題を見つけ出し、最適なプログラムを組み立てていきます。
もう一つの事業が、在宅ワーカーと企業をつなぐBPO支援です。コロナ禍で働けなくなった方々や、ホスピタリティマインドを持つ女性たちが、顧客対応の仕事を通して再び社会と関わる機会をつくっています。単なる業務委託ではなく、クライアントに寄り添いながら課題解決を行う“伴走型BPO”を大切にしています。
東日本大震災が独立の転機に
――経営者としての原点を教えてください。
もともと20年近くカード会社に勤め、プラチナカードやゴールドカードの会員向けコンシェルジュ業務に携わっていました。お客様一人ひとりの背景を理解し、細やかに寄り添う経験は、今の仕事の土台になっています。
独立を決意したきっかけは、2011年の東日本大震災です。子育て中ということもあり、「いつか時間ができたら」と思いながら過ごしていましたが、あの日を境に“いつか”は来ないかもしれないと痛感しました。自分の強みを生かして社会に貢献したいという想いから、2013年に株式会社プライムコムを設立しました。最初は一人でのスタートでしたが、信頼できる仲間たちに支えられながら、少しずつ事業を広げてきました。
離れていても「心でつながる」チームをつくる
――社員やスタッフとの関係づくりで大切にしていることは何ですか。
現在は全国各地の在宅ワーカーがチームを組んでおり、常勤の社員は私一人です。そのため、テキスト上でのコミュニケーションが中心になります。文字だけのやり取りは冷たくなりがちですが、そこに温度を加える工夫を意識しています。
社内では「グラウンドルール」を設け、どんな言葉づかいでやり取りをするか、どんなタイミングで声をかけるかを明確にしています。また、私自身が定期的に現地を訪れ、直接顔を合わせて話す時間をつくることも大切にしています。オンラインでも信頼と絆が生まれる組織でありたいですね。
「日本らしさ」を未来へ――世界に通じるおもてなし教育を
――今後の展望について教えてください。
これから挑戦したいのは、日本の“おもてなし”を世界に伝える仕組みづくりです。外国人労働者が増える中で、日本の文化やホスピタリティをきちんと理解して働ける環境を整えたいと考えています。
たとえば、日本で働く海外の方々に向けた接客・営業の研修や資格制度を設け、日本人と同じ基準で「お客様に寄り添う力」を身につけてもらう。そうすることで、国籍を超えた信頼関係が生まれ、結果として企業全体の価値も高まっていくと思います。
BPO事業においても、“伴走型支援”をさらに拡大していきたいです。お客様の課題を一緒に考え、企業の成長に寄与できる存在を目指しています。ホスピタリティを軸に、人と企業、そして国と国をつなぐ――そんな未来を形にしていきたいですね。
表現力を磨き、心を伝える
――プライベートでのリフレッシュ方法や趣味はありますか。
表現することが好きで、今は演技やボイストレーニングを学んでいます。昨年はシニア部門のモデルコンテストでグランプリをいただき、舞台や歌のレッスンにも挑戦中です。
表現力を磨くことは、研修や講演にも大きく生かされています。声の出し方や立ち居振る舞い、感情の伝え方のすべてが「相手にどう伝わるか」に通じるからです。仕事も趣味も、“心で伝える”という軸は共通しています。
これからも、ホスピタリティの力を信じながら、人と人とのつながりを広げ、誰もが自分らしく輝ける社会を築いていきたいと思います。

