株式会社つむと 代表取締役 其田一真氏
株式会社つむとは、広告やイベントの企画・制作を軸に、日本企業の海外展開を支援するセールスプロモーション会社です。代表の其田一真氏は、アメリカでの12年間の経験をもとに、異文化をつなぐ“翻訳者”として活動。「日本の魅力をリアルな体験として世界に届ける」を理念に、企業やアーティスト、行政など幅広いクライアントの北米進出をサポートしています。
目次
日本と世界をつなぐ、広告・イベント制作の新たなかたち
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
弊社は、イベントや広告の企画・制作を通じて、日本企業の海外展開を支援しています。アメリカを中心に、展示会出展、企業イベント、営業代行、オンラインマーケティングなどを総合的にサポートしています。特に現地市場の文化的背景や商習慣を理解した上で、企業の「伝えたい価値」を現地目線で“体験化”することを大切にしています。
私自身、ロサンゼルスを拠点に12年間、数多くのプロモーションやイベントを手掛けてきました。
日本企業が海外に挑戦する際、言語の壁以上に“文化の違い”が障壁となることが多い。だからこそ、その橋渡し役として、広告やイベントの枠を超えたトータルプロデュースを目指しています。
――法人化の経緯についても教えてください。
個人事業主として活動を始めたのは約10年前です。当初は日本の広告代理店やイベント制作会社から依頼を受け、現地対応を担っていました。法人化は約1年前で、より大規模なプロジェクトをチームで動かせる体制を整えるためです。現在は2名体制で、案件ごとに専門スタッフをアサインし柔軟にチームを組んでいます。
アメリカで学んだ「柔軟に楽しむ」現場力
――経営者として大切にしている考え方を教えてください。
イベント制作は「生き物」のような仕事です。どれだけ準備しても現場では必ず想定外のことが起こります。アメリカで働く中で学んだのは、トラブルを悲観せず「どう乗り越えるか」を楽しむ姿勢です。日本では「失敗を避ける文化」が根強いですが、現地では「起きてしまった事象を解決するために今どう動くか」が評価されます。「その時に置かれた状況で最適解を見つける」姿勢と意識、柔軟さこそ国や文化を越えてプロジェクトを成功に導くための鍵だと感じています。
――印象に残っている出来事はありますか。
日本のカルチャーが今ほど注目されていなかった頃、「Kawaii」や「Anime」というキーワードがまだ一部のオタクファン層の支持しか得られていなかった時代に、とある日本人アーティストをアメリカに招いてライブイベントを企画しました。現地の方々から「日本の音楽や文化は素晴らしい」と感動の声をいただき、「自分が持つスキル(イベントやライブ制作)で、文化と国をつなげる仕事がしたい」と確信しました。お名前は出せませんが、、、現在では世界中にファンを抱えるミュージシャンなど、以後、多くの著名アーティストの海外イベントをサポートしています。
チームで“能動的に動ける空気”をつくる
――組織運営において心がけていることを教えてください。
小規模な組織だからこそ、一人ひとりの意見が形になる“能動的な組織”でありたいと考えています。「こうしたら面白い」といったアイデアを自由に出し合える空気が、良い企画を生み出す原動力になります。将来的に社員が増えても、上下関係にとらわれず、創造力を活かせる環境をつくっていきたいです。
――求める人材像についてはいかがでしょうか。
経験と現場感覚を兼ね備えたイベントディレクターが理想です。イベントは“見えないものを形にする仕事”なので、先を読んで動ける判断力や管理力が重要です。イベントの企画からクライアントと並走し施策を実現、イベント本番の進行を任せられる方が加われば、より大きなプロジェクトにも挑戦できます。
日本のカルチャーを世界へ――アート支援プロジェクトも始動
――今後の展望を教えてください。
これまで通りの日本企業支援と並行して、各ジャンルの日本人アーティストの海外進出を支援する新プロジェクトも進めています。これまで音楽やエンタメ分野を中心に携わってきましたが、今後は美術や工芸など、より幅広いジャンルへ展開予定です。アメリカ各地で展示会やアートイベントが開催されているので、日本の繊細な表現をリアルな空間で体験してもらうタッチポイントの創造するとともに、つむとが主導する形でイベントも開催していきたいです。これは、つむとが掲げる「文化を通じて人と人をつなぐ」という理念を、より直接的な形で実現する取り組みです。
――今後の目標をお聞かせください。
3年後には売上を10倍に伸ばし、将来的には自社で展示会ホールを借り切り、日本企業が自由に出展できる「日本文化の発信拠点」をつくるのが夢です。クライアントやアーティストと“並走するパートナー”として、共に海外市場へ挑戦の第一歩を支え続けたいと思います。
文化の力を信じ、世界を舞台に
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中小企業や個人のアーティストでも、世界に発信できる可能性は必ずあります。日本のものづくりや感性は世界から見ても唯一無二の価値を持っていますし、今の時代だからこそより強い共感を呼ぶと感じています。私たちは、その魅力を世界に届ける架け橋になりたい。文化を通じて人と人、国と国がつながる未来を、これからも形にしていきたいです。

