アビコ工業株式会社 代表取締役 安彦 健二氏
アビコ工業株式会社は、関東を中心にシャッターやドアなど建物の内外をつなぐ建具の設計・施工・修理・保守点検を一気通貫で提供する企業です。2019年の千葉県台風を契機に体制強化を進め、2025年に法人化。メーカー横断の対応力と、現場に即した迅速・誠実な提案を武器に、夜間工事や全国出張にも対応しています。本記事では、代表の安彦 健二氏に現在の取り組み、強み、今後の展望について伺いました。
目次
建具を通じて、暮らしの安全と安心を支える
――御社の事業領域と特徴を教えてください。
関東を主軸に、シャッターやドアといった建具の設計・施工・修理・保守点検までをワンストップで担っています。現地調査→見積→部材手配→施工→点検という一連の流れを自社で管理し、夜間しか作業できない大型施設、営業を止められない店舗、急なトラブルにも対応できる待機体制を整えています。可動不良や異音などの軽微な不具合から、部材破損、電動化の相談まで幅広く受けています。
――同業他社と比べた強みはどこにありますか。
複数メーカーを横断して対応できる点です。「このメーカーなので不可」とせず、機種や年代を問わず構造を読み解き、最適な修繕方法を選びます。全交換を前提にせず、まずは部品交換で直せるかを丁寧に見極めることで、費用・工期・リスクのバランスを最適化します。初動の早さと、現場での説明の分かりやすさも意識しており、作業前に「できること/できないこと」「将来的なリスク」まで共有したうえで判断いただくようにしています。
長く信頼される仕事を目指して
――エンドユーザー案件と元請経由の割合はどのくらいですか。
概ね半々です。メーカーやハウスメーカー、公務店などからの依頼が約5割、自社への直接依頼が約5割というバランスで推移しています。
――元請経由と直請けのバランスは今後どう考えていますか。
直請けを中長期で増やしたい一方、メーカー案件は技術研鑽の場であり、長くお付き合いしてきた関係性の基盤でもあります。双方を活かし、品質と安定性を高めたいと考えています。紹介経由のご相談が増えているのも追い風です。
災害対応を経て気づいた組織の必要性
――法人化の経緯を教えてください。
2019年の台風対応で、一人親方ではどうしても回せない現場があると痛感しました。応急処置で動線を確保しつつ、後日安全に仕上げるには、複数の“隊”が同じ水準で動ける体制が必要です。そこで組織化に舵を切り、2025年4月に法人化しました。以降は、緊急対応と計画工事を両立できる工程設計、予備部材の標準化、車両・工具の共通仕様化など、体制面の整備を進めています。
地域密着の丁寧さと、全国対応の段取り力
――対応エリアや印象的な案件はありますか。
関東を基盤にしつつ、依頼に応じて全国に出張します。硫黄島の施設での施工など、特殊条件下の案件も経験しました。出先では搬入経路や騒音規制、作業時間の制約などが厳格なため、現地側のオペレーションと自社の工程を細かく擦り合わせます。地域密着で築いてきた信頼関係と、遠隔・大型案件で培う段取り力が互いを高め合っていると感じます。
採用の核は“人のつながり”と教育体制
――現在の体制と採用の方針を教えてください。
社員を段階的に増やし、入社直後から必要資格の取得を計画的に進めています。専務は元高校教員で情報処理に精通しており、サイト内製や書類のデジタル化を推進。採用は“人の紹介”が中心で、高校・地域のネットワークから志望者が集まります。入社後は倉庫での反復練習と現場OJTを往復し、工具の扱い方、養生・清掃、説明の仕方といった“所作”まで含めて身につけてもらいます。
――直面している課題は何ですか。
先々まで案件が詰まる中で、品質を落とさずにこなす工程設計と育成スピードの同期が課題です。人を一度に増やせばよいわけではなく、仕上がりの丁寧さや安全への配慮、見えない箇所の処理といった“信用の作法”を共有し、任せられる仕事を着実に増やす必要があります。夜間工事と日中工事のシフト組み、急な修理の割り込みに耐える余力の確保など、現場に即した運営体制を整えています。
3年後の目標は“部隊の拡充”と“信頼の共有”
――3年後の展望について教えてください。
災害時にも即応できる施工部隊を段階的に増やしていきたいです。売上は3年で5倍を目標に据えますが、前提は育成の質と紹介受注の連鎖です。数を追うだけでなく、十年後に点検口を開けても恥じない仕上がりを組織で徹底し、誰が行っても同じ水準で任せられる“共通言語”を整えていきます。
――これから歩みを進める方々へ一言お願いします。
若いうちに恥をかき、頭を下げてでも学んだ知識は、いずれ次の世代に手渡せます。最適解を誠実に示し続ける日々の判断が信用を生み、紹介の輪を広げていく。仕事そのものが生きがいだと思える現場は、丁寧さの積み重ねの先に生まれると考えています。

