株式会社レジリエンスラボ 代表取締役 沖山 雅彦氏
BCP(事業継続計画)という言葉をご存じでしょうか。大規模災害や予期せぬ事態が発生した際にも、企業活動を継続できるようにするための計画のことです。
日本ではまだ半数以上の企業が策定していないのが現状ですが、「災害でなくなる人ゼロ、倒産する会社ゼロ」を掲げ、独自の視点でBCP普及に取り組むのが株式会社レジリエンスラボです。
今回は、代表の沖山氏に、事業の現状、起業の経緯、組織づくり、そして未来への展望について伺いました。
目次
大規模災害に備える「事業継続計画」のプロフェッショナル集団
――現在の事業内容とその特徴について教えてください。
当社は大きく二つの事業を展開しています。一つはBCP(事業継続計画)のコンサルティングと教育支援です。企業が災害や不測の事態に直面しても事業を止めないよう、計画の策定から実行、訓練まで一貫して伴走しています。BCPは作成して終わりではなく、実際の訓練を通して「本当に現場で機能するか」を確かめることが何より重要です。
もう一つは「BCPチャージ」という備蓄シェアリング事業です。複数の企業が協力して非常用発電機を動かすための燃料を共同備蓄し、必要時に分け合う仕組みです。単独の企業負担を軽減しつつ、社会全体で災害に備えることを目的としています。こうした取り組みの根底には「災害でなくなる人ゼロ、倒産する会社ゼロ」という揺るぎないビジョンがあります。
周囲の後押しで始まった挑戦と「ゼロ」を目指す信念
――経営者になられた経緯について教えてください。
前職で防災やBCPに携わる中、日本企業の半数以上がBCPを策定していない現実に強い危機感を持ちました。自分が培った知識が世の中で活かせるならと考え、自分が培った知見、ノウハウを外部に出していこうと感じたのが独立の原点です。当初は大企業に在籍し、二足のワラジでした。企業に所属し、企業の仕事をしながら、経済産業省の制度も活用し、半年かけて法人設立の準備を整えるなど、決して平坦な道ではありませんでした。それでも「自分の経験をオープンにして社会に役立てたい」という思いが勝り、起業に踏み出しました。
私にとっての夢や目標は、ビジョンそのものです。「災害で人が亡くならない社会」「災害で会社が倒産しない社会」を実現すること。このシンプルですが強い願いを、これからも行動で示し続けていきます。
主体性を育み、考えて動ける組織をつくる
――組織運営や社員との関係で大切にしていることは何ですか。
日頃から社員が自分で考えて判断することを重視しています。災害時には上からの指示を待つのではなく、自分の頭で考えて動ける力が問われます。だからこそ普段から小さな判断を積み重ね、「自分で考えて行動する習慣」を身につけてもらうようにしています。
また、少数精鋭だからこそコミュニケーションを密に取り、現場で得た知見をメンバーと共有しています。社員に求める資質は、専門知識よりもまず「自律して動ける力」です。防災やBCPはまだ人材が少ない分野ですが、意欲を持って成長しようとする姿勢を大切にしています。
全国展開を視野に、強靭な社会インフラを築く
――今後の展望について教えてください。
今後はコンサルティング対象を大企業だけでなく中堅・中小企業へと広げ、より多くの企業にBCPを普及させていきたいと考えています。同時に電気も備蓄しようと考える「BCPチャージ」を全国に広げ、地域ごとに備蓄をシェアする仕組みを構築する計画です。すでに実証実験を開始しており、今後は燃料以外の物資にも対象を拡大し、社会全体で使える「保険」のような仕組みに発展させたいと思っています。
日本列島はどこにいても災害リスクがある一方で、全国が同時に同規模で被災することはありません。この特性を活かし、地域間で支え合える備蓄ネットワークを築くことが、未来の日本に必要だと考えています。
面白さを原動力に、自分の軸でキャリアを切り拓く
――経営で大切にしている価値観や個人的な想いを教えてください。
私が大切にしているのは「面白さ」です。新しい課題に挑み、自分のキャリアを自分の軸で形成していくことを常に意識しています。受け身でいるのではなく、自ら道を切り拓く姿勢が私の信条です。
読者の皆さまにお伝えしたいのは、キャリアは誰かが用意してくれるものではないということです。小さくてもいいので「自分で選び取る一歩」を積み重ねてほしい。その積み重ねが大きな力となり、社会を変える原動力になると信じています。